「ワーケーション」の効果的な活用法
ワーケーションとは?
在宅ワークがすっかり浸透し、働き方が大きく変わりましたが、その中で注目されているのが、「ワーケーション」です。国土交通省の外局である観光庁のホームページによると、ワーケーションとは、「Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすことです。余暇主体と仕事主体の2つのパターンがあります。」*とあります。
ワーケーションによって、普段はなかなか行けないような遠い場所で休暇を組み合わせながら仕事ができたり、いつもと違う環境で仕事をすることで、創造性(クリエイティビティ)が高まったり、自然に触れる機会が増えることでストレスを緩和できたりといった複数のメリットが期待されています。
私の会社(WINフロンティア)は昨年、観光庁が実施した、日本全国40地域を対象に日本の大企業40社の社員600名にワーケーションを体験させるという一大プロジェクトにご協力させていただき、ワーケーション期間中の社員の方々の「集中度」や「ストレス度」を、リストバンド型センサーを使って常時測定しました。その結果、とても興味深いことがわかったので、ご紹介します。
ワーケーション初日にクリエイティブな仕事を!
ワーケーション中に全参加者に下図写真のようなリストバンド型センサを常時装着してもらい、心拍変動の値から当社の独自開発ロジックで「集中度」を測定しました。ちなみに、この「集中度」を生体情報から可視化するのは、私たちの誇る強みです!
その結果、ワーケーション初日は集中度が通常日(オフィスで普通に働いている時)よりも大きく低下することがわかりました。しかし、環境に慣れてくる2日目以降は、通常日よりも集中度が高まり、環境を変えたことによる良い効果が現れてきたのです。
このデータから、ワーケーション初日は集中度が低下するという状況を逆に利用して、新しいアイデアの発想や企画をまとめるなど、創造性(クリエイティビティ)が求められる仕事をするのが効果的と思われます。なぜなら、創造性(クリエイティビティ)を発揮するためには、1つのことに集中する思考パターンではなく、やや漫然と拡散的に思考することが大事で、集中していない方がアイデアの発想に役立つ場合があるからです。
また、以前にこのnoteで、4つの創造性コンピテンシー(行動特性)を鍛えることで、誰でもクリエイティビティを発揮できるようになるという研究をご紹介しましたが(詳しくは、「クリエイティビティは鍛えられる」をご覧ください)、その中の4つ目の行動特性である「環境」(を変えること)が、まさにこのワーケーションにぴったり当てはまります。新しい環境は刺激を生み、それが拡散的思考を後押ししてくれます。
非日常的体験とクリエイティビティの関係
オランダのナイメーヘン・ラドバウド大学のシモーヌ・M・リッター博士らは、61人の大学生を対象に、非日常的で予期せぬ体験をするとクリエイティビティが高まるかについて、VR(バーチャル・リアリティ)のヘッドセットを使って実験しました。
実験に使われたコンテンツは以下の内容です。
実験の参加者は、以下の3つのグループのいずれかに割り当てられました。
1番目のグループ:VR内で、非日常的現象を(疑似的に)体験するグループ
2番目のグループ:VR内で、日常的現象を(疑似的に)体験するグループ
3番目のグループ:ビデオで、非日常的現象を視聴するグループ
そして映像を視聴した後、参加者は全員、クリエイティビティを測定するテスト(ある日用品などの「別の使い道」を思いつく限り挙げていくという定番のテスト)を受けました。
その結果、1番目のグループ(VR内で、非日常的現象を擬似体験したグループ)が、他の2グループよりも、有意にクリエイティビティのスコアが高かったのです。ちなみに、2番目と3番目のグループには、有意な差がありませんでした。つまり、非日常的体験を単に見るだけでは効果がなく、疑似的であっても自ら体験することが、クリエイティビティを刺激することが明らかになったのです。
以上をまとめると、ワーケーションで環境を変え、非日常を経験することはクリエイティビティを高めるのに有効で、特に、普段よりも集中力が落ちる初日に少しクリエイティブな仕事を組み込むのがオススメです。そして、環境に慣れてくれば高い集中力を持って仕事をこなすことができるので、2日目以降は集中力を要する仕事も入れていきましょう。このようにワーケーションは新しい働き方のひとつのオプションとして、試してみる価値は大いにあると思われます。
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