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クリエイティブな発想に最適な「土曜日」の有効活用法

自律神経の活動量が最も高まる「土曜日」


多くの人にとってウィークエンドの土曜日は最もリラックスできて、体が回復する日ではないでしょうか。私たちのコンディションは曜日毎に変動しますが、そのコンディションの鍵を握るのが「自律神経」です。(詳しくは、「最も疲れやすい「木曜日」をうまく乗り切る方法」をご覧ください。

私の会社(WINフロンティア)は、自律神経を計測するアプリ『COCOLOLO』(累計160万超ダウンロード)やウェアラブルセンサを使って、これまでに計3,000万件以上の自律神経に関するビッグデータを収集してきました。私自身もベンチャー経営の傍ら、順天堂大学医学部の大学院(博士課程)で、自律神経の第一人者といわれる小林弘幸教授のもと、自律神経と生理心理学の研究を行い、主にビジネスパーソンのストレスや様々な感情の測定に携わってきました。そこから働く人の曜日毎のコンディションについても色々なことがわかってきています。

以前に、日本人が最も疲れを感じる曜日は木曜日」で、自律神経の総活動量であるトータルパワーが低い状態であると書きましたが(詳しくは、「最も疲れやすい「木曜日」をうまく乗り切る方法」をご覧ください。)、逆に、最も活力が高まる曜日は、私たちのデータに基づくと、「土曜日」です。「土曜日」は、自律神経の総活動量であるトータルパワーが最も高い状態です。(もちろん個人差がありますので、あくまでビッグデータを統計解析した結果です。)

曜日別のトータルパワーの推移
出典:Komazawa, M., Itao, K., Kobayashi, H., & Luo, Z. (2016)

この自律神経のトータルパワーが高い状態というのは、疲れが抜けて活性度が高い状態です。クリエイティビティに最適なのは、ポジティブで活性度の高い状態であることが明らかになっていますので(詳しくは、「クリエイティビティと気分の深い関係」をご覧ください。)、「土曜日」は、嫌なことがあってネガティブな気分になっていない限りは、クリエイティビティを発揮するのに最適と言えます。


アイデアに大切な「あたため期」


上述のように、クリエイティビティに最適なのは「土曜日」ですが、土曜日になっていきなり「よし、今日はアイデアを出すぞ!」と思っても、うまく行くとは限りません。なぜなら、アイデアは突然、天から降ってくるものではなく、それまでの準備期間が大事だからです。

クリエイティビブなアイデアが生まれる過程については、長年にわたって研究が行われていますが、社会心理学者のグラハム・ワラスが提唱した「創造性が生まれる4段階説」が有名です。この説によると、創造性が生まれる4段階とは、①準備期、②あたため期、③ひらめき期、④検証期となります。

創造性が生まれる4段階(グラハム・ワラス, 1926年) 出典:筆者作成

まず、準備期(①)において、ある程度、論理的思考力を使いながら、自分の関心事や問題を明確にした上で、情報収集を行います。木曜日に疲労のピークが来ますので、できれば、月、火、水曜日のスキマ時間などを情報収集の時間に当てましょう。その過程で浮かんできた、ちょっとしたアイデアを簡単にメモしておきます。しかし、ここで、無理して良いアイデアを生み出す必要はありません。そして、木曜日と金曜日は、一度アイデアから離れましょう。つまり、この2日間を、あたため期(②)に充当するということですね。この時に、脳内で潜在的に思考が熟し、解決策が浮かぶのを無意識的に待つ状態となります。

そして、自律神経のトータルパワーが最も高まる土曜日を、ひらめき期(③)に活用しましょう。このひらめき期には、まるで「天の啓示」のように解決策が降ってくることが多くの事例で確認されており、この時に、脳の右半球のガンマ波が活発になることが研究で明らかになっています。そして、最後の検証期(④)で、ひらめいた解決策が、現実的で適切かどうかを注意深く検証します。


クリエイティブ・ウォーキング&メモでアイデアを量産する


ウォーキングはメンタルヘルス対策として有効で、クリエイティビティの向上も見込めると、このnoteでも何回か書いていますが、活性度の高い「土曜日」に、以前にご紹介した「クリエイティブ・ウォーキング」を行うことで、あたため期(②)を経て、ひらめき期(③)を迎えられる可能性が高くなります。

クリエイティブ・ウォーキング」とは、決められたルートを歩くのではなく、いつもと違うルートを、目的地を特に決めずに20~30分ほど歩くことです。(詳しくは、「メンタルヘルスを改善し、クリエイティビティを高めるウォーキング」をご覧ください。)できれば、注意資源が分散しないように、自然の中や人通りの比較的少ない夜道を歩くことをオススメします。(もちろん、安全には十分配慮してください。)

この「クリエイティブ・ウォーキング」を行うことで、あたため期(②)を経て熟成されたアイデアが、「ひらめき」となって表れる効果が期待できます。その時に、大事なことは、そのアイデアを必ずメモすることです。アイデアはすぐに忘れてしまいがちですので、必ず保存しておきましょう。その際、せっかくの「クリエイティブ・ウォーキング」をメモのために止めてしまうのはもったいないので、スマホのメモ帳などに簡単なキーワードだけ入力しておくか、音声メモにするのが良いでしょう。アイデアは1つ浮かぶと連鎖的に浮かんでくる可能性がありますので、詳しくメモしようとせず、最低限のキーワードだけメモし、ウォーキング後に書き足すのがオススメです。

このように、活性度の高まる「土曜日」に「クリエイティブ・ウォーキング」を行うことで、良いアイデアを効率的に量産できる可能性があります。そして、それは健全なメンタルヘルスの維持にも役立ちます。

参考文献:・Komazawa, M., Itao, K., Kobayashi, H., & Luo, Z. (2016). On human autonomic nervous activity related to behavior, daily and regional changes based on big data measurement via smartphone. Health, 8(09), 827.・Wallas, G. (1926). The art of thought (Vol. 10). Harcourt, Brace.・大黒達也(2020)『芸術的創造は脳のどこから産まれるか? 』(光文社新書)・Kuo, C. Y., & Yeh, Y. Y. (2016). Sensorimotor-conceptual integration in free walking enhances divergent thinking for young and older adults. Frontiers in psychology, 7, 1580.

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