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履き心地の良いジーンズでクリエイティビティを上げる

履き心地の良いジーンズの効果


どんな服装で仕事をするかは業界や職種、あるいは曜日によっても異なると思いますが、服装が仕事のパフォーマンスに与える影響はあまり知られていないように思います。

私の会社(WINフロンティア)は、以前、履き心地の良いジーンズ(ユニクロのEZYジーンズ)を履いた時のストレスや疲労の軽減効果を測定する実験を、ユニクロ社と一緒に行いました。*

実験では、参加者を3グループに分け、それぞれ「履き心地の良いジーンズ(ユニクロのEZYジーンズ)」、「通常のジーンズ」、「スウェット」を履いて(下図参照)、東京-名古屋間をバスで往復してもらい、その間の生体情報(自律神経活動)をウェアラブル心拍センサで常時測定し、ストレスや疲労の状態を分析しました。

出典:株式会社ユニクロ プレスリリース*

その結果、自律神経の総活動量であるトータルパワーから推定する疲労度は、履き心地の良いジーンズ(ユニクロのEZYジーンズ)とスウェットは同等で、通常のジーンズよりもかなり低い(トータルパワーは約65%高い)こと(下図左)、そして、ストレス度は、スウェットよりは高いものの、通常のジーンズと比べると約22%も低いこと(下図右)がわかりました。

出典:株式会社ユニクロ プレスリリース*

この結果から、服装は私たちの日常行動におけるストレス度や疲労度にそれなりの影響を与えることが示唆されましたが、これは仕事にも当てはまると思います。自分の経験に照らしても、スーツで仕事をした日はカジュアルな服装で仕事をした日よりも、明らかに疲れるなという実感があります。

リラックスとクリエイティビティの関係


履き心地の良いジーンズはストレスや疲労を緩和してくれる可能性があることがわかりましたが、それは仕事でクリエイティビティを発揮するためにも良いと言えます。なぜなら、クリエイティビティを発揮するのに最適なのは、ポジティブで活性度の高い「興奮」や「熱中」の状態であることが、オランダのアムステルダム大学心理学部のマタイス・バース博士らの研究で明らかになっており(詳しくは、「クリエイティビティと気分の深い関係」をご覧ください)、履き心地の良いジーンズは、この条件に適しているからです。つまり、履き心地の良いジーンズは、不要なストレスを緩和し、リラックス気分を高めてくれるとともに、疲労の軽減を通じて活力を高めてくれると考えられるからです。

クリエイティビティを生み出すには、リラックスしているだけではダメで、活性度が高いことが大事ですので、履き心地の良いジーンズを履いて、アクティブに行動することで、活性度が高まると期待できます。米スタンフォード大学教育学部のマリリー・オペッツォ博士らの研究でも、ウォーキングしている時に拡散的思考、つまり、クリエイティビティが高まることがわかっています。

また、健康管理の観点でみると、日本人のオフィスワーカーの場合、勤務時間の約70%は座っているため、座っている時間を減らし、軽く体を動かす時間をいかに増やすかが大事ですので、この点からも履き心地の良いジーンズは望ましいと言えます。

柔らかさがクリエイティビティを生む!?


履き心地の良いジーンズがクリエイティビティを高める根拠として、興味深い仮説をもう一つご紹介します。簡単に言うと、履き心地の良いジーンズの「柔らかさ」は、発想の「柔軟性」につながる可能性があるということです。なぜなら、私たち人間は、言語の理解を含む認知処理を行う際に、単に脳内での処理にとどまらず、身体感覚からの情報も活用しているからです。この考え方を心理学では、身体化認知(Embodied cognition)と言います。

これに関して面白い実験があります。米マサチューセッツ工科大学スローン・ビジネススクールのジョシュア・M・アッカーマン博士らは、54人の通行人に、軽い(340g)または重い(2041g)クリップボードを持ってもらい、そこにはさまれた求職者の履歴書を見てもらい、その求職者の人物像を評価してもらいました。

結果は、重いクリップボードで評価したグループは,軽いクリップボードで評価したグループに比べ,求職者の能力を高く評価しました。これは、クリップボードを持ったときの「重い」という身体感覚が、本来全く無関係である人物の評価において、その人物が「重要」であるという判断に、無意識に影響を与えたと考えられます。

このように身体化認知の概念に照らすと、履き心地の良いジーンズの「柔らかさ」は、発想の「柔軟性」、つまり、クリエイティビティの向上につながる可能性があると考えられます。

以上をまとめると、履き心地の良いジーンズは、不要なストレスを緩和し、リラックス気分を高めてくれるとともに、疲労の軽減を通じて活力を高めてくれること、そして、その「柔らかさ」が発想の「柔軟性」を高める可能性があることから、クリエイティビティの向上に役立つと考えられますので、ぜひ試してみてください。

参考文献:
*株式会社ユニクロのプレスリリース https://www.atpress.ne.jp/news/168171
*WINフロンティア株式会社ホームページ https://www.winfrontier.com/news/case/「ezyジーンズ」の快適性に関する評価検討/
・Baas, M., De Dreu, C. K., & Nijstad, B. A. (2008). A meta-analysis of 25 years of mood-creativity research: Hedonic tone, activation, or regulatory focus?. Psychological bulletin, 134(6), 779.
・Oppezzo, M., & Schwartz, D. L. (2014). Give your ideas some legs: the positive effect of walking on creative thinking. Journal of experimental psychology: learning, memory, and cognition, 40(4), 1142.
・Bauman AE, Ainsworth B., Sallis J, et al. The descriptive epidemiology of sitting: A 20-countr y comparison using the International Physical Activity Questionnaire(IPAQ). Am J Prev Med 2011; 41: 228 – 235. 他
・Ackerman, J. M., Nocera, C. C., & Bargh, J. A. (2010). Incidental haptic sensations influence social judgments and decisions. Science, 328(5986), 1712-1715.

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