副交感神経とセルフコントロールの関係
副交感神経の役割と測定
今回は、このnoteで提唱する「クリエイティブ・メンタルマネジメント」を実践する上で重要な、セルフコントロールと副交感神経の関係について書きたいと思います。
副交感神経とは自律神経の1つですが、自律神経は、内臓や代謝、体温といった私たちの体の機能を24時間休むことなくコントロールする神経で、人間の脳や身体のはたらきをつかさどる役割を担っています。自律神経には、交感神経と副交感神経の2つの神経系があり、この2つは相反する作用を示します。
交感神経は、緊張やストレスを感じたときに活性化する、自動車のアクセルのような役割を担っています。一方、副交感神経は、リラックスした状態のとき活性化する、自動車のブレーキのような役割を担っています。
この自律神経の活動は、比較的簡単に測定することが可能です。具体的には、心電図波形のピーク(頂点)をウェアラブルデバイスなどで検知し、そのピーク間隔のバラツキ(これを心拍変動、英語ではHeart Rate Variability(HRV)といいます)を解析することによって、自律神経活動を推定することができます。
心拍変動(HRV)が小さい場合は、交感神経が優位な状態、つまり、ストレスを感じている状態です。一方、心拍変動(HRV)が大きい場合は、副交感神経が優位な状態、つまり、リラックスしている状態です。
そして、この副交感神経が優位な(心拍変動(HRV)が大きい)状態は単にリラックスしているだけではなく、セルフコントロールにも関係していることが研究で明らかになってきました。
アルコール依存と副交感神経
心拍変動(HRV)の大きさ、つまり、副交感神経の働きは、情動と感情の調節、衝動制御の増加に関連していることが様々な研究で明らかになってきていますが、ノルウェー・ベルゲン大学臨床心理学部のジョン・T・イングヤルドソン博士らは、セルフコントロールに問題を抱えているアルコール依存症患者の心拍変動(HRV)を調べる実験を行いました。
実験では、94人の参加者(49人のアルコール依存症患者と45人の健常者)が、アルコールへの衝動を喚起する架空のストーリー(約1分半の音声)を聴き、飲酒の誘惑に駆られるシーン(たとえば、パーティー、バー、酒屋の前を通りかかるとき、憂鬱な気分のとき)を鮮明に想像するように指示されました。そして、その間、全参加者の心拍変動(HRV)が測定されました。また、全参加者は、強迫飲酒尺度(OCDS)などの質問紙に回答しました。
分析の結果、以下の3つのことがわかりました。
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