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2022年1月の記事一覧

【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

【怖い話】崩れ神輿【「禍話」リライト73】

 妖怪や民俗学に造詣が深く、そのような類の怖い話を集めているYさんという人がいる。
「祭り覗き」や「ぬりかべ」などの収集品もあるそのYさんが聞いてきた、お神輿が倒れて壊れる話である。
 

 この話の体験者Aさんは若い頃、某地方を旅行していたそうだ。
 ひとりきりの静かな旅行であったが、立ち寄った町が何やら騒がしい。町の人に聞いてみると「お祭りをやっている」という。
 屋台がぞろぞろ並ぶような華や

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禍話リライト 怪談手帖『天狗のこと』

『……天狗と申すは人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗にもあらず、足手は人、かしらは狗、左右に羽生えて飛び歩くるものなり』

『平家物語 巻十』より

「……俺、天狗を見たことがあるんだよ」

薄く紫煙を立ち上らせる煙草を指の間に挟みながら、ふざけている様子もなくAさんは淡々とそう言った。

「……そのせいで死生観、というか。

『幽霊観』

……っていうの? 変わっちゃってさあ……」

何と

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禍話リライト 怪談手帖『白い布』

『怪談手帖』の話を採集、提供している余寒さんが年嵩の人たちに話を聞いて回っていた頃。

山歩きをしていたという何人かから『飛ぶ布』の話を聞いたことがあった。

その目撃談はだいたい共通している。

山間を歩いている時、ふと見ると緑の山肌の上を布が飛んでいる。

(干した布か何かが飛ばされたのかなぁ?)

最初はそう思うわけだが、飛ばされているのではなく、明らかに風の向きに関係なく、あるいはそれに逆

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禍話リライト 怪談手帖『自然仏』(じねんぼとけ)

昭和の半ば頃のことだというから、昔話というほどではない。

Aさんのおじいさんが住んでいた集落のすぐ近く、山の麓で起きた奇妙な話だという。

ある昼過ぎ。山菜取りに行っていた老人たちが、興奮しながら駆け戻ってきた。

山道に入ってすぐの古い大きな樹の根元に、

『仏像』

がある、というのだ。

何人かでその様子を見に行くことになり、まだ少年だったおじいさんもついていった。

件の樹のところにやっ

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