マガジンのカバー画像

相続と不動産の初歩の初歩

10
“相続”や“不動産”と聞くと、そういった仕事をしている人か実際に親から不動産や現金を相続された人やこれから相続対策をしようとしている年配の人以外はきっと、こんな風に思っているんじ…
運営しているクリエイター

記事一覧

相続の専門家、誰に何をどのように頼めば良いか?

母親の佳子(よしこ)と無事に今後のライフプランこと、つまり母親の佳子が死んだ後の事、相続のことや死ぬまでの時間の過ごし方、家族との関わり合い方について話を終えて、正しい手順で遺言書を書いてもらい法務局の“自筆証書遺言保管制度”を使って、遺言書を法務局に預けて来ました。 遺言書の内容に関しても、兄弟全員に無条件で財産を分割するというわけではなく、母親のライフプランに合わせて寄り添える兄弟には厚く、自分の生活を優先する兄弟には薄くといった公平さを財産の配分に反映してくれており、

遺言書を書いてくださいと頼む時に考えること

貴生(たかお)は母親の佳子(よしこ)が一人で住む実家に向かっていた。 7月の初旬の汗ばむ陽気の昼下がり、実家の最寄り駅に着いた。 途中まで妻と子供も一緒に来ていたがターミナル駅で降りた妻と子供は、予定していた水族館へ遊びに行った。 もともと、そのようにスケジュールを取って貴生は母親と二人で今後のことについて話をするつもりでいた。 父親の忠司(ただし)が亡くなってもう3年が経つ。 母親も元気だけどもう74歳だ。 いまは一人暮らしが出来ているが、そのうち病気になったり、

人生終盤のその悩みを遺言書を書くことで解決するかもしれない

夫の秋山 忠司の葬儀を終え、妻の佳子は弔問客を見送っていた。 心の準備はしていたつもりだったが、実際に夫を見送ると心にポッカリと穴が空いたように呆然としてしまった。 人が死ぬと様々な手続きがあることは知っていたが、大事な夫を失った直後だとそんな手続きも思うように進められない。 夫の忠司が病気で入院してから今日の葬儀を終えるまで幸いなことに、長男の貴生の嫁の奈央子(なおこ)が献身的に助けてくれたが、3人の子供たちは葬儀に関する幾つかの事柄は手伝ってくれたが、葬儀が終わるとそ

事前の相続対策では感情と勘定のバランスを取る

最近の大学病院の個室は、入院患者に配慮して設計されているのか、高級ワンルームマンションさながらの内装が施されている。 天井を眺めながら、秋山 忠司(あきやま ただし)は先日の今後のことを話し合った家族会議のことを思い返していた。 今年81歳になった忠司には、10歳年下の妻、佳子(よしこ)と3人の子供たちがいる。 今回の入院で、医者と妻の佳子のやり取りを始め、子供たちの振る舞いから、忠司は自分自身がそう長くはないことを悟っていた。 そのため、今後のこと、つまり相続のことを

何故?相続対策では不動産の相続対策が重要なのか?

大学病院の帰り道、秋山 忠司(あきやま ただし)の思考はいま住んでいる自宅と自らが最近始めたアパート経営のことで一杯になっていた。 今年、81歳になる忠司はこの数週間ほど体調が優れずに寝付きも悪かった。食欲も無く、頻繁に目眩や立ちくらみがする。 健康には気をつけていたのだが、81歳ともなれば、身体にガタが来ていてもおかしくはない。 近所のクリニックを受診した後、大学病院への紹介状を書いてもらい、大学病院で精密検査を受けて今日はその結果を聞いた帰り道だった。 妻の佳子(

相続対策をする前に知っておくべき相続の現状

12年間勤めたウェブシステム開発会社を1年前に円満退職した奥村 大樹(おくむら だいき)はフリーランスのウェブ制作者となり、忙しい日々を送っていた。 クライアントも多様な業種に渡り、中でも税理士や司法書士など士業の方のウェブサイト制作のご依頼を頂くことが多くなった。 そんな士業の方々のウェブサイトを制作していくうちに、大樹はある共通のことに気づく。 それが、税理士の先生も、司法書士の先生も、不動産鑑定士の先生も大樹とお取引のある全ての士業の方々が、“相続”に関する事柄を

一軒の実家を3人兄弟で相続する時に気をつけること

10時30分、スマホの画面で時間を確認した斉藤 健太(さいとう けんた)はそのまま、Gmailのアプリをタップして開いた。 受信トレイに届いていたメールは5通、そのうち3通は以前買ったネット通販のセールスメールで、残りの2通のうち1通を健太は開いた。 「この度はご縁が無かったということで…」 お決まりの不採用の通知だ。 この半年ほど健太は就職活動に励んでいた。 新型コロナウィルス感染症の影響でそれまで勤めていた居酒屋チェーンの人員整理で解雇されたのだ。 「45歳から

実家を相続することになりそうだけど、どうしたらいいかわからない時

4年ぶりの帰省。 海外での仕事が楽しすぎて日本に帰国することをずっと後回しにしてきたけど、そろそろ親に顔を見せないと・・・ そんな後ろめたさも手伝ってか、思い切って長期休暇を取った奈保は、父への高級ブランデーを片手に成田空港のラウンジのソファーに座り、スマートフォンの電源を入れて実家の母に電話を掛ける。 「もしもし、お母さん、今さっき成田についたのでこれから帰るね」 そんな一報を入れて、成田エクスプレスの時刻を検索した。 新宿で特急のあずさ2号に乗り換えて、実家のあ

相続は大きく7つのポイントに分けると理解が楽

その日は仕事が休みで自宅のソファーでスマホでゲームをしていた新井 友洋(あらい ともひろ)は、画面に表示された母親からの着信画面に少し面倒くさそうに対応した。 「何?どうしたの?」 スマートフォンから聞こえてくる母親の声は明るく、やっと順番待ちの施設から連絡が来て入れる事になったということだった。 要介護認定を受けたばかりの今年83歳になる母親の初代(はつよ)は、息子の友洋にこれから入る施設についていろいろと話し始めていた。 母親の事はこれまで、兄の貴彦(たかひこ)に

相続の最低限の知識は持っておいたほうがいい理由

警備員の制服に手を通しながら今年で75歳になる後藤 英久(ごとう ひでひさ)は考えていた。 一日中、立ちっぱなしのこの警備員の仕事がキツくなってきた。 「もう、年かな・・・」 そんなことをこの10年近くつぶやいている。 医者からは、お酒の量を減らすように言われているけど、もう75歳だし、そこまで我慢して長生きはしたくない。 だけど、自分が死んだ後にいろいろと面倒をみてくれている妻の希和子(きわこ)には、ちゃんと残せる物を残して幸せに暮らしてほしい。 希和子とは、英