見出し画像

相続の最低限の知識は持っておいたほうがいい理由

警備員の制服に手を通しながら今年で75歳になる後藤 英久(ごとう ひでひさ)は考えていた。

一日中、立ちっぱなしのこの警備員の仕事がキツくなってきた。

「もう、年かな・・・」

そんなことをこの10年近くつぶやいている。

医者からは、お酒の量を減らすように言われているけど、もう75歳だし、そこまで我慢して長生きはしたくない。

だけど、自分が死んだ後にいろいろと面倒をみてくれている妻の希和子(きわこ)には、ちゃんと残せる物を残して幸せに暮らしてほしい。

希和子とは、英久が55歳の時に再婚した。
希和子は英久の5歳下の50歳で初婚。
希和子との間には子供は居ない。

英久が45歳の時に前妻だった、真佐美(まさみ)が病気で逝去している。
前妻の真佐美との間には、今年45歳になる龍平(りゅうへい)という一人息子がいるが、もう15年以上会って居ないが電話で年に数回は連絡を取っている。

なお、龍平は英久が希和子と再婚したことは知っているが、龍平と希和子に面識は無い。

「俺が死んだら財産は希和子と龍平で分けることになるのか…」

英久には預貯金が5,000万円ほどあり、これは大学を卒業してから長年勤めてきた機械メーカーの技術職でコツコツ溜めてきたお金です。

そして、神奈川県川崎市に一戸建ての自宅を持っており、こちらは6,000万円の相続税評価額。
後妻の希和子は自宅近くにあるお弁当店でパートをしており、預貯金は300万円程度。

英久の望みとしては、自分の死後も希和子には今の川崎市の自宅に住み続けて欲しい。
そして、老後の資金として英久の預貯金の残りを使って欲しいと願っている。
しかし、それでは、一人息子の龍平は納得しないだろう。

この場合どうすれば、いいのか?をいつも考えている。

わたし達の多くが直面することになる相続という課題


日本がいま、直面している課題のひとつに、超少子高齢化があります。

この状況は、世界初で、そのため、わたし達は世界の歴史から学ぶことが出来ません。
つまり、『超少子高齢化社会の国はどうなるのか?』といった盛大な実験をいま、わたし達が暮らすこの国で行われようとしているわけです。

当然、政府はそんな状況をただ放置しているわけもなく、様々な手を打って来ます。

そして、その打ち手は法律の改正となってわたし達の暮らしを直撃してきます。

特に、この“相続”という分野は大きな影響が及びます。

いま、この日本で最もお金を持っているがご年配の方々だからです。

そんなご年配の方々の財産を、相続でそのまま次の世代に引き継がせるのではなく、税金として徴収して少しでも社会に還元させようというのが狙いでしょう。

超少子高齢化のまま進んでしまえば、国は衰退します。

それを阻止するべく、様々な施策が必要になりますがそれには予算がかかります。その予算の出処は税金というわけです。

でも、それをわたし達は「はい、そうですか」といって、何年も働いて働いて貯めてきた財産を差し出すわけにもいかないでしょう。

愛する妻や息子、娘に残してあげたいと思うのは当然です。

今回のお話に登場する後藤 英久さんもそんな一人です。

世話をかけた妻が老後も安心して暮らしていけるようにするべきこと

英久さんの望みを整理すると次のようになります。

・自身の死後に妻の希和子には、安心して老後を暮らしていけるように自宅と預貯金を残してあげたい
・今年45歳になる、前妻の真佐美との間の息子の龍平にも預貯金の一部を残してあげたい
・そして後何年か経って希和子が亡くなった後に自宅は息子の龍平に継いでもらいたい

そしてこれが、一番の願いであり絶対に回避したいことで、それは、希和子と龍平が遺産分割で揉めるようなことになってほしくないというものです。

では、英久さんの望み、願いを叶えるためにはどのようにするのが正解なのでしょうか?

増え続ける相続トラブル


相続争いはこの20年間で実に1.5倍になっています。普通に考えると財産が多い人ほど揉めると思いがちですが、実際は調停になる方の財産は5000万円以下が8割を超えています。

つまり、相続トラブルは身近な家庭の問題だということです。

そう考えると、英久さんが亡くなった後、妻の希和子さんと全く面識が無い前妻の子供である龍平さんの間で円滑に英久さんの思惑通りに遺産分割が進むでしょうか?

もちろん、そうなってみないと結果は誰にもわかりませんが、現段階で何も手を打たないというのは愚策過ぎます。

いま打てる手を打っておく


まず、英久さんが何も手を打たなければ、いまのままでは英久さんの望みはどれも叶わない確率が高いと考えられます。
そのために、打てる手として有効なのが『遺言書の作成』です。

というよりも、遺言書の作成は必須とも言えます。

血縁関係もない相続人の二人が遺産分割の話し合いをする時に指針となるのが遺言書です。

だからこそ、遺言書は欠かせません。

では、その遺言書の内容はどんな内容にすればいいのか?

遺言書に書くべきこと


最初に英久さんが亡くなった後も、

“希和子さんが自宅に住み続けられて、老後の資金(生活費)に困らない”

ようにして、それでいて、

“前妻の子供である龍平さんと希和子さんが揉めないようにする”

そして、

“何年か後に希和子さんが亡くなった後、川崎市の自宅は龍平さんに引き継いでもらうこと”

ために、2020年4月1日に施工された“配偶者居住権(はいぐうしゃきょじゅうけん)”というのを使います。

“配偶者居住権(はいぐうしゃきょじゅうけん)”といのは、このケースで言うと、希和子さんと英久さんが一緒に暮らしていた英久さんの川崎市の自宅に、英久さんの死後も住み続けることが出来る権利のことです。

この“配偶者居住権”を希和子さんが相続して、自宅の所有権を龍平さんが相続するという形を取れば、英久さんの望みに近い形の相続になり、遺産分割が出来ます。

この内容を遺言書に書いておくことで、英久さんの悩みの大部分は解消します。

相続に関する最低限の知識が欠かせなくなった

相続に関して、多くの人は知らないことばかりだと思います。
わたし自身、相続の課題に直面するまでは、全く知識がありませんでした。

ですが、前述の通り日本が超少子高齢化の社会に突入して、政府がその対策を取り、相続税の改正が行われました。

人口が減っていく社会では、大幅な経済発展が見込めません。

そんな状況で、後に残された大切な家族を守るために、相続に関する最低限の知識は持っておいた方が絶対いいでしょう。

ここでは、わたし自身が相続に直面して専門家の意見を聞きながら取り組んでいることを共有していきます。

■相続・不動産でお悩みの方の相談窓口

三茶萬相談:https://sanchay.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?