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相続の専門家、誰に何をどのように頼めば良いか?

母親の佳子(よしこ)と無事に今後のライフプランこと、つまり母親の佳子が死んだ後の事、相続のことや死ぬまでの時間の過ごし方、家族との関わり合い方について話を終えて、正しい手順で遺言書を書いてもらい法務局の“自筆証書遺言保管制度”を使って、遺言書を法務局に預けて来ました。

遺言書の内容に関しても、兄弟全員に無条件で財産を分割するというわけではなく、母親のライフプランに合わせて寄り添える兄弟には厚く、自分の生活を優先する兄弟には薄くといった公平さを財産の配分に反映してくれており、更にひとつ下の弟に対して、生活を援助していた分を加味してくれています。

これで、貴生(たかお)は相続対策の大きな一歩を踏み出すことが出来た手応えを感じています。

次は今回書いてもらった自筆証書遺言を元に公正証書遺言を作成していくことを計画しています。

後は、母親の佳子が死ぬまでの時間をどれだけそばに寄り添って過ごしていけるかを自らの仕事とのバランスを取りながら、自分自身のライフプランを調整しつつ、住む場所の変更も視野に入れ始めました。

今回、自筆証書遺言をつくる時に一番、貴生が悩んだのは、不動産のことです。

母親の佳子には亡くなった父親から引き継いだ、実家と人に貸している住宅、アパートなど複数の不動産がある。

貴生に不動産の知識は無く、勉強家の貴生は事前に“不動産相続”に関する書籍を読み込んで知識を付けましたが、相続の中でも、不動産に関連する事柄は深く、貴生が出した結論は、“不動産”は実務経験が無いと、どれだけ知識を詰め込んでも、見聞は広げられないということを痛感していた。

貴生自身、会社を経営していて、税金対策のために不動産の購入を検討したことがあり、投資としての不動産に関する情報を収集してみて、今回の相続対策と同様に、不動産に関してはどれだけ知識を習得しても、実際の実務経験、つまり不動産売買の経験が無い状態で不動産投資を試みても、多くの場合が失敗、つまり思うような収益が出ずにむしろマイナスになる可能性が高い。

例えば、株式売買であれば、収益を出しているのはAIを使って取り引きが行われている売買で、そういったAIを使った売買は証券会社や投資会社などが多額の投資をして取り組んでいる。

そのため、個人投資家が自分自身の勘や経験則に従って、株式投資に挑んでも勝てることもあるかも知れないが、多くは負けてしまい、トータルではマイナスになることが多い。
だから、株式投資に関しては、自分の勘や経験則で行うのではなく、最先端のAIを使って取り組んでいる証券会社などの商品を見極めて購入するのが賢いやり方だといえる。

これは、株式投資というものがデジタルに置き換えられるところが大きい。

企業の価値やそれに対する価格、市場などその全てが数値で表現出来ることから、デジタルデータとして処理が出来るわけだ。

これに対して、不動産売買は土地・建物の価格や属性情報はデジタルに置き換えられるが、実際の土地・建物はバーチャル空間に存在するものでない限り、つまり遺産相続で相続する土地・建物は、全てがリアル空間に存在するものであることから、見て触れてみないことには、その価値は分からない。

そして、見て触れてその土地・建物の価値を図れるようになるには、相応の実務経験を積まないと見えてこない。

そのためか、証券業界に対して不動作業界、特に日本の不動産業界はIT化が進んでいないように思う。
そしてそこには、百戦錬磨の不動産のプロたちが居て、ポジションを握っている。

だから、貴生が相続する予定の不動産に関しては、本当の価値、使い道は今の貴生には測れない。

そう考えた時、この相続の不動産に関する分野は信頼できる専門家と繋がっておくことが必須と言える。
特に貴生の家庭のような多くの不動産を所有する家庭ではなおさらだ。




公平に分けられないのが不動産

この世に同じ不動産というのは存在しません。

そのため、現金化することが難しい資産と言えます。

立地の視点、入居率の視点など様々な視点で不動産というのは見られます。
そのため、不動産に関する評価というのは、様々な尺度があり更にその尺度というのは変化しているのです。

例えば、相続した土地の評価額が路線価で計算して1億円だった場合、その相続税は高額になります。
その相続した土地を使っていないのであれば、直ぐに売って現金化して相続税を支払えばいいのでは?ということになりますが、そう容易くはないのです。

例えば、その土地が傾斜角35度の崖地で宅地造成しようとすると1億数千万円の費用が発生するそんな土地で、北と南に大きな幹線道路があって、路線価が高く設定されている・・・そんな土地であれば、売りたくても売れない上、路線価だけは高くなっているわけです。

もちろん、不動産鑑定士に鑑定評価をしてもらって、過去の急傾斜地評価の事例を元に評価をし直すことで路線価を下げることも出来ます。

こういったケースは決して少なくなく、いまも日本全国で起きていることです。



40年ぶりに改正された相続税

2019年に39年ぶりの相続税改正が行われました。

1980年に改正されて、その後しばらく大きな改正がなく、高齢化や社会環境の変化に対応するために大きな見直しが行われたということです。

主な改正の内容としては、

配偶者居住権を新設
自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能になった
法務局で自筆証書による遺言書が保管可能になった
被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能になった

ということが挙げられます。

この改正で、これまでの相続対策を見直すことが求められています。

例えば、“遺留分減殺請求”が“遺留分侵害額請求”に変わり、法律で定められている遺留分を侵害された相続人が、自身の財産を請求する権利を行使して、請求を受けた相続人が、これまでであれば、共有も含めて不動産の権利を渡すことで解決してきたのですが、これが原則として物権ではなく、金銭で支払うことになりました。

これにより、不動産を相続したけど、遺留分侵害請求を受けた相続人は不動産を売って金銭に変えるか、それが出来なければ、自身の預金などから現金を調達しなければならなくなりました。

こういったポイントを見ても、“不動産の相続”は一層、慎重が求められるということが分かります。


その不動産は本当に売れるのか?

不用品を売買出来るメルカリというアプリがあります。

多くの人が利用していて、とても利便性に優れたアプリです。このアプリでは不用品を売りたい人と買いたい人を結びつけるのですが、売りたい人が不用品を出品する際にアプリの方で、“その不用品は●●円〜▼▼円が相場価格です。”といった案内が出てきます。

そして、その相場価格に沿って値付けをするのですが、それで売れるか?というと売れることもあれば、なかなか売れずに出品したまま何日も、時には何ヶ月も放置してしまうようなことが少なくありません。

この不用品を不動産に置き換えてみるとどうでしょうか。

不動産を保有している不動産オーナーは不動産の市場価格を敏感に察知していますが、その市場価格というのは、メルカリでいうところのアプリが教えてくれる市場価格と同じです。

メルカリは、出品されている不用品がメルカリ内で幾ら位で取り引きされているのか?を元にAIが売れるだろう価格を弾き出しているわけです。

不動産も同様です。

不動産の場合はメルカリではなく、レインズというポータルサイトがあります。
同じような条件の不動産の場合、過去の事例に基づいて価格が算出されるというわけです。

そこで、勘違いしてしまう人が居ます。例えば、相続する予定の実家を相場に当てはめてみたら、5000万円だった。
だから、わたしの資産は5000万円あるから、この不動産を5000万円で売って、他の不動産を買ったり、株式投資をしたりしようと考えたりするわけです。

しかし、相場で5000万円で売れる可能性がある不動産だとしても、それが実際に売れるのか?というとそれは分かりません。

メルカリ内でも例えば、パソコンなどはその価値で出品されていても、余りにも出品数が多すぎて何ヶ月も何年も売れないものが多く見受けられます。それは、不動産も同様です。

その不動産を提示されている価格を出してでも欲しいという人が現れない限り、その不動産は金銭という資産に変わることは無いのです。

つまりどれだけ、価値があると言われている不動産も“売って金銭に換えよう”とすることはそう容易くはないのです。


不動産のことは不動産の専門家に任せる理由

“お腹が痛い時”、あなたはどこに行くでしょうか?
歯医者さんに行くでしょうか?目医者さんに行くでしょうか?違いますよね、内科に行きますよね。

そして、内科を受診して自分が納得出来る診断結果が得られない場合はセカンドオピニオンをつけることも検討するでしょう。

同様に、税金のことは税理士、法律のことは弁護士に任せるでしょう。
当然、不動産のことは不動産会社に任せるはずです。

そんな当たり前のことですが、これが出来ていない人が少なくありません。

例えば、“固定資産税”というのは、不動産に係る税金です。
固定資産税は役所が決める税金だからといって税理士に任せっきりにしている人が少なくありませんが、果たしてその不動産の評価は正しいのでしょうか?

毎年多額の固定資産税を支払っている人は、その評価を不動産鑑定士に依頼して再評価してみると驚くほど評価が低くなったというケースは少なくありません。

「税理士に言われた通りに相続したら不動産が売れない」

といったケースはよくあることです。

ですが、これはその税理士が悪いのではなく税理士は税の専門家であって、不動産の専門家ではありません。
また、税理士の中でも不動産に関わる税金に精通している税理士かどうかもポイントになってきます。

そのため、不動産の評価や税金の処理は出来るかも知れませんが、不動産が売れるようにすることは税理士には出来ないと考えた方が無難です。

不動産には土地・建物そのものに関わることから法律、税金まで多方面に渡って専門知識が求められます。
そんな時、それぞれの専門家にみてもらって、適正な評価と適法な対応に適正な税金額を算出していくことが資産を守るにつながります。

それが、ひいては相続対策になるというわけです。


本当の意味で相続対策が出来る不動産相続の専門家の選び方

知識もあって、実務経験が豊富。

診断力にコーディネート能力、その上で先見の明が求められます。

まず、知識だけでは、実際の相続の現場でどのように振る舞えばいいのか?が分かりません。
それは、どれだけ水泳の本を読んでいても、実際に泳いだ経験が無いと泳げないのと同じです。

そのため、理論だけ並べるような人は避けるべきでしょう。

診断力というのも、結局のところどれだけ不動産相続の現場をこなしてきたか?が問われます。

様々なケーススタディを鑑みながら、このケースにはどのように対応すればいいのか?が感覚で分かるようになるまで長い年月と経験が求められます。

そして、依頼主のことを考えたコーディネート力もまた欠かすことが出来ないものです。

いくら相続税の対策になるからといって、借金してアパートを建てても、それが依頼主の意向に反していれば、それは間違った対応だと言えます。

実際、目先のことだけを考えた相続税対策をしたばかりに持っていた財産を減らしたばかりか、相続人同士の争い発展したという例も多数あります。

このことから、広い視野を持って、そして相続後の相続人の生活や被相続人の意向などを鑑みて、市場の変化などを読み最善の策を授けられるような先見の明が欠かせません。

そういった専門家と出会うことは決して容易くは無いかも知れませんが、大切な財産を大切な家族に引き継ぐことを考えると、理想の専門家と出会うためのその労力は決して無駄にはならないでしょう。

■相続・不動産でお悩みの方の相談窓口

三茶萬相談:https://sanchay.jp/


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