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人生終盤のその悩みを遺言書を書くことで解決するかもしれない

夫の秋山 忠司の葬儀を終え、妻の佳子は弔問客を見送っていた。

心の準備はしていたつもりだったが、実際に夫を見送ると心にポッカリと穴が空いたように呆然としてしまった。
人が死ぬと様々な手続きがあることは知っていたが、大事な夫を失った直後だとそんな手続きも思うように進められない。

夫の忠司が病気で入院してから今日の葬儀を終えるまで幸いなことに、長男の貴生の嫁の奈央子(なおこ)が献身的に助けてくれたが、3人の子供たちは葬儀に関する幾つかの事柄は手伝ってくれたが、葬儀が終わるとそれぞれの多忙な日常に戻っていった。

広い家に一人ぽつんと残された佳子は、生きていく気力を失い何も手がつかない状態になっていた。

それでも、長男の貴生の嫁の奈央子は葬儀後の様々な手続きも一緒に取り組んでくれたので本当に助かった。

葬儀が終わり、しばらくして忠司の遺言書を元に残された相続人全員が集まり、相続の話し合いの場が持たれた。

忠司が病気になり、入院していた時に妻の佳子と子供たち3人を呼んで、事前に忠司の意向を伝えていたため佳子も子供たち3人もある程度の心の準備は出来ていた。

結局、妻の佳子が忠司の財産のほとんどを相続することになり、子供たち3人には預貯金の一部を3等分して、一人辺り500万円ずつ受け取ることで落ち着いた。

これは本来、忠司が考えていた配分とずいぶん違ってしまっている。

と、いうのも入院していた時期に病室で忠司から伝えられたことに兄弟3人のうち、2人が納得しなかったからだ。

そこで、忠司が再考し、今回のような結果に落ち着いた。

佳子は一人残された自宅で考えを巡らせていた。

“もし、わたしが死んだら、残された兄弟3人はどうなるのだろう…”

“夫の時のようにわたしも居ないわけだから、揉めた場合、誰が仲裁に入るのだろうか…”

こんな悩みを解決するにはどうすればいいのか、誰に相談すればいいのかを最近は毎日考えるようになっていた。




相続対策が欠かせない時代に


2015年(平成27年)から相続税が改正されました。

具体的には、基礎控除が縮小で5,000万円+1,000万円×法定相続人の数だったものが、3,000万円+600万円×法定相続人の数になり、最高税率が55%になり、この改正で、これまで相続税がかからなかった人にも相続税がかかるようになりました。

では、相続税がかかる人たちというのは全体の何%なのかというと、例えば2019年でいえば、被相続人、つまり亡くなった人は約138万人(2020年12月国税庁公表)でそのうち、相続税の課税対象となった被相続人は約11.5万人で課税割合は約8.3%になります。

2015年に相続税法が改正されてからは、8%台前半で推移しています。
ちなみに、2014年までは4%台前半で推移していました。

そう考えると、相続税を支払う人たちって10人中1人も居ないということになります。

ここで多くの人が誤解してしまうことがあります。それは、

「うちは相続税を支払う必要が無いだろうから、相続対策はしなくても大丈夫。」

というものです。

これは大きな間違いで、相続対策は相続税対策とイコールではありません。
相続対策とは、相続トラブル対策と言ってもいいくらいです。

何の対策もしていない状態で、何千万円も価値ある不動産や預貯金を、家族という血の繋がりがある人同士で分けるわけですから、受け取る側には様々な主張があります。

介護で貢献したとか、兄貴は留学費用を出してもらったとか、そういった主張を加味した遺産分割というのは一筋縄ではいきません。

だからこそ、相続対策が重要なのです。

ちなみに相続トラブルで裁判に持ち込まれる事例の80%が財産額が5000万円以下だという統計も出ています。

遺言書は絶対に書いておく


では、具体的な相続対策というのはどのようなものがあるのか?というと、直ぐに思いつくのが、“遺言書”です。
遺言書とは、子供たちや妻、夫や兄弟姉妹などの相続人に伝えたいことを書面にしたものです。

遺言書があれば、相続は遺言書に沿って進めることになります。

法律的には誰にどの財産をどれだけ相続させるかを伝えるものになります。

被相続人(亡くなった人)の財産は遺言書があれば、遺言書の内容に沿って分割することになります。

「それなら、法定相続分に従って兄弟3人仲良く3分割にしてくれればいい。」

とお考えで、遺言書を書かないといった判断をする人もいますが、遺言書が無ければ、被相続人の財産は自動的に法定相続分で分けられるわけではありません。

遺産分割協議といって法定相続人全員が話し合ってそれぞれの取り分を決めていくことになるわけです。

被相続人の財産が法律で強制的に自動で分割されるのであれば、揉めるようなことは少ないかも知れませんが、それぞれの取り分を相続人で話し合いで決めるわけですから、そこには揉める要素がたっぷりあります。

ですので、残された家族に迷惑をかけたくない、皆仲良く末永く暮らして欲しいのであれば、遺言書を書いておくことです。

いろいろある遺言書の種類

遺言書には、

1.自筆証書遺言
2.公正証書遺言
3.秘密証書遺言

の3つがあります。

どのようなケースでもそうですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
そのため、状況によってどの遺言書を書けばいいのか?は違ってきます。

もし、初めて遺言書を書く時で、まだ死ぬまでに時間がありそうな時は自筆証書遺言が良いかも知れません。


遺言書を初めて書く時は自筆証書遺言を書いてみる


一般的な遺言書というのは、映画などで亡くなった人が生前、手書きで書いておいた書面が封筒に入れられていて、それを残された遺族が集まり、開封して誰にどの遺産を相続させるか?を話し合っているようなシーンがありますが、これは自筆証書遺言である場合がほとんどです。

被相続人自身が書いた遺言書のことを自筆証書遺言と呼びます。

法改正で財産の内容を示す“財産目録”については、パソコンで作成することが認められるようになりましたが、他の部分はすべてを被相続人の手で書く必要があります。

遺言書として書く紙についても決まりはないのですが、他人が代筆したり、パソコンで作成されていると無効になるため、注意が必要です。

メリットとしては、手軽に書けることやお金がかからない(法務局に預ける場合は別)ことや、証人がいらないことなどがりますが、デメリットは、前述したように決められた形式で書かれていないと遺言書が無効になってしまうことです。

よくあるミスとしては、日付が入っていないとか、不動産の所在地の記載方法が違うといったものがあげられます。

そのため、初めて遺言書を書く人にとっては、取り組みやすいものといえます。

2020年7月10日からは、“自筆証書遺言書保管制度”というのが始まり、自筆証書遺言を法務局で適正に管理・保管されるようになり、より自筆証書遺言を書いて残しておく取り組みがやりやすくなりました。

今回のケースで遺された佳子さんが抱えるお悩み解決の第一歩は、自筆証書遺言を書くことで解決していくものと考えられます。

■相続・不動産でお悩みの方の相談窓口

三茶萬相談:https://sanchay.jp/


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