何故?相続対策では不動産の相続対策が重要なのか?
大学病院の帰り道、秋山 忠司(あきやま ただし)の思考はいま住んでいる自宅と自らが最近始めたアパート経営のことで一杯になっていた。
今年、81歳になる忠司はこの数週間ほど体調が優れずに寝付きも悪かった。食欲も無く、頻繁に目眩や立ちくらみがする。
健康には気をつけていたのだが、81歳ともなれば、身体にガタが来ていてもおかしくはない。
近所のクリニックを受診した後、大学病院への紹介状を書いてもらい、大学病院で精密検査を受けて今日はその結果を聞いた帰り道だった。
妻の佳子(よしこ)は習い事の発表会でこの日は付き添ってもらえずに、太郎一人で検査結果を元に担当医師の話を聞いていた。
“大したことは無いだろう…”
そう軽く考えていた忠司に対して、担当医師はこんな言葉を告げた。
「申し上げにくいのですが、早めの入院が必要です。」
「明日か明後日に奥様と一緒にいらっしゃってください。」
どうやら、忠司の状況は良くないらしい。
確かに食欲が無くなったので、頬もげっそりしている。
また、目眩や立ちくらみも酷く、いまも休み休み歩いていた。
それから1週間後、忠司は大学病院の個室に3人の子供たちを呼び、自身の相続対策を始めていた。
しかし、忠司の財産のほとんどは不動産に姿を替えていて、そのせいか話し合いが難航してしまった。
何故?財産が不動産であれば相続の話し合いが難航するのだろうか?
不動産の相続対策がもっとも難しい3つの理由
それは、不動産は“分割が難しい”ということと、“複数の評価が出来る”ということ、そして“しがらみがある”ということです。
そのため、預貯金や株券、投資信託といった金融財産とは違った意味合いがあり、慎重な対応が求められます。
不動産の分割が難しい理由
例えば、9,000万円の預貯金があって、子供たち3人で公平に分けるとすれば、一人3,000万円ずつ分ければいいということは直ぐにわかりますが、9,000万円の評価額の自宅を子供たち3人で公平に分けるとすればどのように分けるのが正解なのでしょうか?
まず、自宅を物理的に、つまりノコギリを持ってきて3等分にするようなことは現実的ではありません。
では、不動産はどのように分けるのかというと、不動産相続の場合、遺産分割方法として4つの方法があります。
それは、
現物分割
代償分割
換価分割
共有
の4つです。
現物分割というのは、不動産を複数に分割してそれぞれを現物で相続する方法です。
不動産にもいくつか種類があって、自宅の場合もあれば、土地だけの場合もあります。
土地だけの場合は“分筆”といって、登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続きを経れば、一つの土地を複数に分けることが出来ます。
代償分割というのは、特定の相続人が不動産をそのまま相続して、他の相続人に対して不動産の対価を現金で支払う方法です。
換価分割とは、相続した不動産を売却して金銭にして相続人で分割する方法です。
売れる不動産であればこの方法を選択するのもいいでしょう。
最後の共有というのは、不動産をそのまま複数の相続人の共有名義のままで相続する方法です。
この方法は相続の問題の先送りとも言われて、世代が交代して行くにつれて共有名義人が増えるにつれて収拾がつかなくなるケースがあります。不動産を売りたくても共有名義人全員の承諾が無いと売れないなど、不自由なことが多いのがこの共有です。
更に言うと、不動産の価格は変動するため、例えば代償分割で平等に分けたつもりでも、直後に土地の価格が値上がりしたり、逆に値下がりしたりして不満が生じるケースも少なくありません。
不動産には複数の評価が出来るとは?
不動産は相続時は“路線価”と言われる土地の評価額を使って価値を算出します。
これは、公示価格と比較すると8割程度になると言われています。
他に“実勢価格”といって、マーケットで売買される価格、“公示価格”といって国土交通省が毎年1月1日時点の土地を算定した価格で一般の土地取引の指標とされている価格があります。
他には、固定資産税評価額といって固定資産税を徴税するために算定の基礎となる土地価格を評価したものがあります。
更に不動産の価格というのは一定ではなく、価格が変動していることから価値が一定ではないという点から、金融財産のように固定した価値として判断が出来ず、どの時点でのどの評価を採用するか?が非常に重要になります。
不動産のしがらみとは?
不動産といっても、土地や戸建、マンションに駐車場など様々な種類があり、ひとつとして同じものはありません。
金融財産のように数値だけで図れるものではなく、不動産には勘定の他に“感情”の側面で物事を見る視点が求められます。
例えば、長年住み続けた実家の土地、建物と相続対策のため最近建てたアパートの評価額が同額だったとしても、それぞれに対する感情的な受け止め方は全く違うものになるでしょう。
相続対策のために建てたアパートに対して、建てた人、この場合であれば、太郎さんにとっては、特別なこだわり等があって愛着があるかも知れませんが、子供たちにすれば単なるアパートに過ぎません。
また、不動産会社の営業マンに強引に進められて仕方なく建てたアパートで、しかも収益が毎月赤字続きなら…
一日でも早く売り飛ばしたいのではないでしょうか?
このように不動産に対しては、被相続人、相続人共に何らかの思い入れがあることから、一概に評価額だけを基準に物事を測れない側面があります。
では、忠司さんはどうすればいいのか?その解決策としては、不動産相続の専門家に頼ることです。
不動産に関しては、前述の通り難しい側面が多いのでどれだけ知識を習得しても、経験が無いと解決に持っていけないケースが多く、状況が酷くなる場合もあります。
ただし、その場合、単に不動産会社の担当者に相談すればいいというものではなく、相談する相手が不動産相続の専門家である必要があります。
ですので、まずは不動産相続の専門家を探すことが解決の第一歩につながっていきます。
■相続・不動産でお悩みの方の相談窓口
三茶萬相談:https://sanchay.jp/
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