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北米アニメ研究所2|カナダの有名大学アニメクラブ運営の裏側に迫る

本社を香港に構えながら、開発はカナダ、デザインはロンドン等、世界中のネットワークを使ってサービスの展開を行なうベンチャー企業、KLKTN(コレクション)。そんなKLKTNが発信する本noteは「北米アニメ研究所」と題し、グローバル市場での事業展開の中で築いたネットワークを生かして得た知見をもとに、北米に住むアニメファンの実態に迫るインタビューシリーズを展開します。これまで把握が難しかった海外のアニメファンの実態を、「統計情報」ではなく「エピソード」を交えてお伝えすることで、是非多くの国内のアニメ業界関係者の皆様には、グローバル市場における「日本のアニメ」の新たな価値を掘り起こし、新サービス・プロダクトを検討するきっかけを作っていただければと考えています。

今回は「北米アニメ研究所1」でインタビューをしたメンバーが参加している、カナダの名門大学・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)にあるアニ研(アニメクラブ)のディスコード(※アメリカ発のゲーマー用チャットサービスとして登場したコミュニケーションツール)チャンネルのモデレーターを務めるチョッキーさんにお話を伺いました。

アニ研のディスコード

3年間にわたって同クラブの役員を務めた経歴もあり、今ではSFU(サイモン・フレイザー大学)のアニ研にも所属するチョッキーさん。バンクーバーの大学のアニメコミュニティを引っ張ってきたキーパーソンともいえる彼女のインタビューは必読です。

チョッキー
サイモン・フレイザー大学4年生好きなアニメ:『おそ松さん』『日常』『BEASTARS(ビースターズ)』など


まずは簡単に自己紹介をお願いします。

香港生まれでずっと香港に住んでいたんだけど、UBCに進学するタイミングで、ひとりでカナダに渡航したよ。その後、「将来は3Dに関わる仕事をしたい」と思うようになり、今はSFUに編入してInteractive Arts and Technologyという学科で学んでいるの。
シアトルで開かれたアニメイベントで出会った、『遊戯王』好きの彼がいるよ。オーストラリアに住んでいるんだけど、実は今もカナダに遊びにきてくれているんだ。
父は、東南アジアの某レコード会社で代表をしてる。弟はプロデューサーで、父はアーティストマネージャーをしているの。母は、私の出産を機に退職してからは専業主婦だよ。

今在籍しているSFUと、もともといたUBC。この2つの大学のアニメクラブの違いを教えて。

2つとも、スタイルもカルチャーも全然違う。SFUは、ディスコードでアニメの鑑賞会をしたりゲームをしたり、オンラインベースの活動がメイン。
一方、UBCでは対面で会って、一緒に何かして楽しむことを重視してるよ。実際にオフラインイベントも毎週あるしね。

UBCアニメクラブ(以下、UBCアニ)へは、大学に入学した2016年に入会したんだ。大学内で参加したサークル活動はこれだけだったから、そこでのつながりは私にとって大切なものになった。実際に学内でできた友だちのほとんどは、アニメクラブを通して出会った人たちよ。クラブのみんなは、私が居心地よく大学生活を送れるように、いろんな人を紹介してネットワークづくりの手助けもしてくれてた。だから、UBCアニへの思い入れは強いかな。今は仕事に勉強に忙しいし、私が定期的に参加している対面での交流会は、このUBCアニのイベントだけ。今住んでいるところからは結構遠いんだけど、ほかのアニメファンと会って遊ぶのはやっぱりすごく楽しいから、毎週通っちゃう!

これまでで一番楽しかったUBCアニ主催のイベントは?

毎週金曜日に開かれるレギュラーイベントの中で一番好きなのは、カラオケ大会!ほかのメンバーからも圧倒的に人気だよ。それもあって以前は2~3カ月に1回くらいの頻度だったのが、今では毎月やってるの。参加率も一番高いしね。
それにしても50人くらいの人たちが一斉に歌いたがるから、実際自分で歌えるのは、せいぜい1曲くらい(笑)。でもいいの。なぜなら、例えば誰かほかの人が自分が知っている曲を歌うとするでしょ?そうしたら、「マイクを奪って歌っちゃえー!」みたいな雰囲気がそこにはあって、そうやってみんなと盛り上がれるから。UBCアニに入った最初の1年くらいは、そんなふざけたやりとりの中でどんどん友だちが増えていったよ。私はもともと歌うのも好きだし、とにかくめちゃくちゃ盛り上がって楽しい!

みんなで歌ったり踊ったりするのは毎回大盛り上がり!写真はUBCアニでダンスワークショップを開催した時のもの。

カラオケのシステムは、本当はジョイサウンドを使えたらいいんだけど、日本国外では利用が難しいの。既に任天堂スイッチを持ってるメンバーはたくさんいるし、ジョイサウンドのアプリを任天堂スイッチに入れるところまでそんなに難しくないんだけどね。ただ、日本のクレジットカードがないとそのアプリにアクセスできないから、私たちはYouTubeを駆使しながらカラオケを楽しんでる。

季節ごとに開催されるスペシャルイベントでいえば、新入生を歓迎するための「アイスブレーカー」というものも実施しているんだ。無料イベントで誰でも入れるから、有料イベントより気軽に参加できるのもいいの。「アニメ好きの友だちを作りたい」という理由でクラブに興味を持ってくれるメンバーも多いから、いつも盛り上がるよ。制限時間以内に段ボールでコスプレを作って競い合ったりとか、毎年いろんなゲームをするの。

新入生歓迎会をみんなと楽しむチョッキーさん。


バンクーバーの大学のアニ研同士でコラボイベントをすることもあるの?

SFUとUBCのアニメクラブのメンバーで集まって映画を見に行って、その後食事をしたりとか、そういう企画がいろいろとあるよ!コロナでパンデミックが起こる前までは、毎年「大学祭」っていうイベントもやっていたんだ。SFUとUBC だけでなく、BCIT(ブリティッシュコロンビア工科大学)とかほかの大学のアニメクラブも一緒になって、ゲームをしたりして遊ぶの。コロナ以降は開催されてないけど、すごく楽しかったな!


UBCアニの役員やディスコードのモデレーターになった経緯を聞かせて。

実は役員にはだいぶ前からなりたいと思っていて、過去に2回も立候補したんだけど、決まらなかったんだよね。それですっかり諦めていたところへある日突然、当時の会長から連絡が来たの。「どうしてもクリエイティブディレクターが必要なんだけど、ぜひやってくれないか?絵を描くことができて、さらに役員になりたいって人をほかに知らないから」って。ずっと念願だった役員になるチャンスがめぐってきて、その時はとっても嬉しかった。「もちろん!」って言って、快く引き受けたよ。
その後、2019~2022年までの3年間役員を務めて、そのまま続けることもできたんだけど、仕事と勉強に専念したくて辞めたの。「Co-opプログラム」っていうインターンシップで、ビデオグラフィーとモーショングラフィックス・アニメーションをしていたんだ。


役員って、実際にどんなことをするの?

毎週ミーティングがあって、金曜日に開かれるレギュラーイベントの企画を練るの。その後は、物の準備を中心とした運営準備が始まる。例えば「ビデオナイト」をやることになるとするでしょ。そうしたら、ゲームをするためのスクリーンモニターからコンソール(ゲームをプレイするための装置)、ソフト、VRヘッドセット等々、これら一式を誰かから借りる手配をしないといけない。こういうのが毎週続くから、結構な作業量になるよ。
こうした毎週のレギュラーイベントに加えて、バレンタインやハロウィンといった季節ごとの大イベントも入ってくるんだよね。これらは有料イベントで参加者もお金を払ってるから、豪華賞品を用意したり、会場のデコレーションをしたりと、演出が何かと大変。
その中でも、毎年開催する「コスプレカフェ」は、一番大変かもしれない。ポップアップカフェを実際に作るからね。食べ物や飲み物も用意しないといけないし、去年もこれをオーガナイズするのに大騒ぎだったよ。 

去年はこのコスプレカフェイベントを、「居酒屋」のテーマで開催して盛り上がった。
本格的な居酒屋メニューを調理するメンバー。

コミュニティを運営するのって、そもそも大変だよね。メンバーの中には本当にいろんな人たちがいて、恥ずかしがり屋の人がいたら、殻から出てきて周りに溶け込む手助けをするところから始まるんだし。でも、こういう役員の気配りや努力のおかげで、私自身やほかのメンバーのキャンパスライフが充実してきたんだよね。前回まで何度かにわたってインタビューに出ていたNRだって、最初はシャイだったのが今では役員として活躍しているんだし、すごくやりがいのある仕事だよ!

役員は、何人くらいいるの?

今は10~12人くらいで構成されてるよ。クラブの規模が大きくなるにつれて、仕事量も多くなって、役員の数も増えていったの。みんなボランティアでやってるよ。
それぞれ役割が与えられるんだけど、例えば私は最初の2年はクリエイティブディレクターをしていたから、イベントの宣伝に使うアートワークを担当したし、メンバーシップカードを作ったこともあったな。それに、コミュニケーションディレクターも担当したよ。これは、ウェブサイトやSNSの管理と運営をするポジション。SNSの投稿とかメールマガジンも、自分で書いていたよ。
そのほかには、ゲームのプランを練るなどしてコンテンツを考えるイベントコーディネーター、議事録をつける秘書、予算管理を任される財務担当なんかがいる。有料イベントも結構あるから、財務は大事な役割ね。
副会長は2人いて、スポンサーを探す人と、スケジュール管理やほかのアニメクラブとのコラボ企画を担当する人に分かれるの。
SFUと違ってUBCは大学からも予算をもらってないから、毎回資金調達をするところから始まるの。長く活動を続けていくためにも、メンバーシップ料の売り上げを保つことも大切なんだ。

UBCアニのメンバー数は現在、500人を超えています。そして、ディスコードには、卒業生なども入れて3千人弱もの人が集まっています。こうしてクラブの規模が年々大きくなっている陰には、役員の皆さんのこうしたみんなの努力があったのですね!

チョッキーさんにお話を聞くこちらの「北米アニメ研究所2」はまだ続きます!次回は、チャッキーさんの好きなキャラや声優、日本のアニメファンと海外アニメファンの言語や文化の違いについて。3月下旬に公開予定です。

今後も更新情報をお知らせするので、KLKTNのTwitterや、noteのお気に入り登録をお願いします。また、KLKTNでは、アニメファンがお気に入りのアイテムをデジタルで共有・収集できる新しいアニメキュレーションプラットフォーム「weebox(ウィーボックス)」のリリースを予定しています。「weebox」に興味があるアニメ関係者の方や、「北米のアニメファンの実態をもっと知りたい!という方は、以下のフォームからご連絡ください。


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