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【北米アニメ研究所#1】カナダ有名大学のアニメ研究会に迫る|北米アニメファンは日本アニメをどう見ているか。

本社を香港に構えながら、開発はカナダ、デザインはロンドン等、世界中のネットワークを使ってサービスの展開を行なうベンチャー企業、KLKTN(コレクション)。そんなKLKTNが発信する本noteは「北米アニメ研究所」と題し、グローバル市場での事業展開の中で築いたネットワークを生かして得た知見をもとに、北米に住むアニメファンの実態に迫るインタビューシリーズを展開します。

これまで把握が難しかった海外のアニメファンの実態を、「統計情報」ではなく「エピソード」を交えてお伝えすることで、是非多くの国内のアニメ業界関係者の皆様には、グローバル市場における「日本のアニメ」の新たな価値を掘り起こし、新サービス・プロダクトを検討するきっかけを作っていただければと考えています。

第1回目の今回インタビューをしたのは、UBCの略称で親しまれるカナダの名門大学・ブリティッシュコロンビア大学にあるアニ研(アニメクラブ)。2023年世界大学ランキング(イギリスの教育関連情報誌 Times Higher Education による)でも、東京大学に続いて40位の本校は、多くの政治家やノーベル賞受賞者を輩出。世界中から優秀な人材が集まっています。

Source https://www.flickr.com/photos/85424459@N08/7835821172 Author CjayD

今回は、500人以上の会員数を誇る本研究会に所属するこちらの3人にお話を伺いました。
 

【今回取材したメンバー紹介+好きなアニメTOP3】

アンドレ 
ブリティッシュコロンビア大学2年生
好きなアニメ:『ブラックラグーン』『暗殺教室』『86―エイティシックス―』など

NR
ブリティッシュコロンビア大学3年生
好きなアニメ:『サイコパス』『コードギアス』『男子高校生の日常』など

マシュー 
ブリティッシュコロンビア大学2年生
好きなアニメ:『サイバーパンク:エッジランナーズ』『HELLSING (ヘルシング)』『Angel Beats! (エンジェルビーツ)』など

みなさんのバックグラウンドについて聞かせてください。出身地やご両親の職業、そして子どものころのアニメ体験は?


アンドレ:僕はバンクーバーの出身で、ずっとこの街に住んでるよ。母親は看護師で、中国系移民の2世なんだ。トラベルジャーナリストの父親は、イギリスで生まれ育ったけど、母と結婚するためにカナダに来た。父の影響もあって僕もそれなりに旅はしていて、日本へも2019年に行ったことがあるよ。その年は、日本とオーストラリアを旅行したんだ。
 
幼い頃に観た宮崎駿監督のアニメの数々は、その後の僕の人生にすごく大きな影響を与えたと思う。小学生の頃、『ポケモン』や『遊戯王』をテレビで見たことも大きかったかな。
 
マシュー:僕は、生まれも育ちも香港。生まれ育ったのは九龍島だけど、香港島の学校に通うことになって引っ越したんだ。その後、大学生になって初めて地元を離れて出てきた街が、バンクーバーだったんだ。
 
子どもの頃は、『ドラえもん』をよく見てたな。学校が終わるとまっすぐ家に帰って、夕食の時間までずっと、夢中で見てたんだ。
 
父は物流系の仕事をしていて、母は印刷会社のマネジャーをしていたんだけど、そんな両親も、『セーラームーン』とか『ガンダム』を見て育ったって言ってた。だから実家には、『フライング・フォートレス』とか『トトロ』のものとか、アニメグッズも結構あったんだ!香港にはアニメに関するものが結構たくさんあって、僕はあっちの漫画だと『老夫子』とかも好きだったな!
 
高校生になってからも相変わらず『ドラえもん』が好きで、深く考えずにただ楽しんで見てたんだけど、ちょうどその頃、友達の影響でアニメについてもっと掘り下げて考えるようになったんだ。アニメ用語とか、どの作品はアニメでどの作品は漫画とカテゴリー付けされるのか、なんてことも意識するようになった。そこからは、『ブラックラグーン』や『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』などの、本格的なアニメを見だして、最後には『Fate(フェイト)』シリーズに行きついて、もっともっと、アニメの世界にのめり込んでいったよ。
 
NR:私は生まれはカナダだけど、育ちはマレーシア。父はマリッジ・ファミリーセラピスト(※心理カウンセラーの一種。結婚や家族問題を専門とする)で、母は化学系のエンジニアとして働いてたよ。といっても、母は1年ほど働いた後で私を妊娠して辞めちゃったんだけどね。
 
『ドラえもん』を中国語で見たのが、私の一番最初のアニメとの出会い。2番目の出会いは、友達が見ていた『GOSICK-ゴシック-』がきっかけだったな。その子の肩越しに私もなんとなく画面を覗いて見てて、そこからだんだんアニメに興味が湧いてきたんだと思う。ちょうどその頃、ほかの友達からもいくつかのアニメ作品を教えてもらったりして、ゆっくりとはまっていったって感じ。

UBCアニメ研究会に入った経緯は?

「UBC Ani Icebreaker 2022!」新たに入学してきたアニメファン仲間を歓迎!
新入生歓迎会は、毎年盛大に開かれる

アンドレ:UBCは評判もいいから僕自身もここで学びたいと思っていて、両親もそれに賛成だった。アニメ研究会には、友達を作りに来たんだ。それまで仲が良かった友達はみんな違う大学に行っちゃって寂しかったし、趣味が合う友達と出会いたくてさ。
 
マシュー:僕の場合、アニメへの興味がぐっと深まったのが高校生の時だったんだけど、その頃はまわりにアニメ好きな友達がほとんどいなかったんだ。だから、大学に入ってからはもっと共通の趣味をもつ友達を増やしたくって。
 
もっと詳しく言うと、1年生の時はコロナの影響でずっとオンライン授業を受けていて、2年生になってやっと通学できるってなった時に、ふと心配になったんだ。「本当に友達ができるかな」って。それもあって研究会に入ったんだよ。入会から1年で役員になることもできたし、当初の目標通り、趣味が合う友達がたくさん見つかったよ!

2022年の新歓では、チームに分かれ制限時間以内に段ボールでコスプレを作る大会なども行なわれた

NR:私の場合、昔からずっと、アニメファンでいるのがちょっと恥ずかしいような気がしていたんだよね。だからあまりこの話題に対してオープンになれなかった。すごく個人的で、内に秘めておくものだと思ってたし。マレーシアをはじめとする東南アジアの国では、アニメカルチャーってすごく浸透していたから、今思うとなんでそんな風にしてたのか自分でも分からないんだけど……。
 
でも、もともと住んでいたカナダに戻って来て大学に進学した時、このアニメ研究会の存在を知って、すごく嬉しかった!シャイな性格も邪魔をして、すぐに「入会しよう!」って決められたわけではないんだけど、ある日友達に誘われて、研究会が主催するイベントに行ってみたんだ。「ボードゲームナイト」が行われていて、そこでたくさんの素晴らしい人たちに出会ったの!研究会のリーダー的存在のチャッキーっていう友人に出会って仲良くなったのも、その時のこと。彼女はロリータのコスプレをするんだけど、本当にクールな人!彼女のお陰で、ちょっと恥ずかしがり屋で内にこもりがちだった私のアニメファン人生は、すっかり変わったと思う。今ではグッズを身に着けて、堂々としているし、クラブの役員にもなったしね。

研究会にはコスプレ好きも多い。写真はコスプレコンテストが開かれた時の模様

アニメ研究会に出会って、自分の人生がこんなに変わって、今ではこの楽しさや喜びを多くの人と分かち合えること。――それが、とっても幸せだなって感じてる!

クラブの規模は?

NR:10ドル程度の年間会員費を払っているアクティブメンバーは、およそ500人ほど。「Discord(ディスコード)」(※アメリカ発のゲーマー用チャットサービスとして登場したコミュニケーションツール。チャットや音声通話、画面共有などの機能がある)の私たちのサーバー(※ディスコード上のコミュニティ)には、卒業生なども入れて3千人弱の人が登録してるよ。 

クラブの活動はどんなことをしているの?

NR:私はイベントコーディネーターとしてクラブ活動の企画運営をしているんだけど、毎週金曜日の夕方5時から夜の10時までイベントを開催しているよ。前半は、2つのグループに分かれてイベントを楽しむようにしていてね。例えばひとつのグループは話題の新作をみんなで鑑賞したりして、別のグループではアニメの絵を描いてみたりするんだ。ディナーを挟んで、最後は全員で楽しめるものを用意するようにしてる。一番盛り上がるのはカラオケ!スピーカーもあるし、みんなでいろんなアニメのオープニングソングを歌ったりするんだ。

2022年のハロウィンイベント

そのほかにも、アニメ知識王を決定するクイズバトルとか、「UBCアニデスゲーム」をしたりすることもある。「UBCアニデスゲーム」はアニメ版のイカゲーム(※Netflixで配信中の韓国のサバイバルドラマ。大金をかけた命がけのゲームに奮闘する人々の模様が描かれる)みたいなもので、偽物の通貨も作ってギャンブルのようなゲームをして、それに負けたら肉体労働をしなくてはいけなかったりするの。最後には豪華なオークションで、アニメのキーチェーンをあげるなどして盛り上がるよ。先週行なったイベントでは、100人くらいが集まった。視聴会は30人くらいだったかな。

「異世界屋」と名付けた、居酒屋風コスプレカフェをオープンした時。
バンド演奏やダンスの披露もあり、居酒屋メニューを楽しみながら盛り上がった。

 視聴会はどんな雰囲気で何を見ているの?

NR:毎週3作品ほど見るんだけど、そのうち1〜2作品はそのシーズンの見たいものをメンバーから募って、投票制で決めるんだ。残りは試写担当がセレクトするよ。
 
前期見たのは、『チェンソーマン』『後宮の烏』『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』。『チェンソーマン』の時はみんな叫んだりしてすごく盛り上がってた。そして今期のセレクションは今のところ『トライガン』『トモちゃんは女の子!』ってなりそうかな。
 
今年の試写担当は『ガンダム』や、2000年代初期のスライス・オブ・ライフ(※ありふれた日常を描いたシリーズを説明するアニメ用語)的な作品が推しなんだよね。それに対して去年の試写担当は、テーマ別に見るのが好きだった。例えば『宝石の国』『ドロヘドロ』でCGビューイングをしたと思えば、エイプリルフールには『男子高校生の日常』『坂本ですが?』が選ばれたりしたし。誰が選ぶのかによって、また違った雰囲気が楽しめて面白いなって感じるよ。
 
これ以外にも、時々「ムービーナイト」というイベントも開催するよ。その時は『紅の豚』とか『サカサマのパテマ』とか、大人気で間違いない作品を選ぶんだ。クラブのメンバーは、ほかにもディスコードを使ってよくみんなで一緒に見てる。
 
アンドレ:僕が思うに、みんなで一緒に見ることの素晴らしさは、見終わった直後の熱が冷めやらないうちに、感想をその場で共有できること。面白い作品ならもちろんみんなで興奮して盛り上がるし、つまらない作品でもみんなで批評してお喋りするのも楽しいんだ。つまらない作品ほど、ひとりで見るよりみんなで見た方がよかったりもするよね。

【次回の「北米アニメ研究所」について】

次回のトピックは、みんなのお気に入りのアニメスタジオや、日本アニメの表現方法について。2月中旬に公開予定です。

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