北烏山編集室

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編集者2名の小さな出版社兼編集プロダクションです。 単行本・図鑑・事典など、幅広い書籍の企画・編集をてがけます。 お仕事のご相談・ご用命は、担当者の個別メールアドレスまたはツイッターのDMへ。 〒157-0061世田谷区北烏山7-25-8-202 株式会社北烏山編集室

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  • サミュエル・ピープスの日記を読む

    革命と動乱のイングランド17世紀。この時代を生きたサミュエル・ピープスが10年にわたって残した「日記」は、日記文学として価値を持つ一方、「天下の奇書」としても読まれてきた。本連載はピープスの10年の日記から適宜ピックアップして、毎月1回、新訳でお届けしていく。翻訳・解説は、慶應義塾大学教授の原田範行氏。

  • 本のことなど

    北烏山編集室・津田正が書いた本などについての文章をまとめました。

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サミュエル・ピープスの日記を読む(0)

解説:原田範行(慶應義塾大学教授) 連載開始にあたって  革命と動乱のイングランド17世紀。この時代に、生涯の大半をロンドンで過ごし、国会議員にして海軍大臣、王立協会総裁を務めたのが、サミュエル・ピープスである。だが、ピープスの名が一般によく知られているのは、むしろ、1660年から69年にかけての10年間に彼が綴った膨大な日記によってであろう。日記文学といえば、日本にも、例えば平安時代の『土佐日記』や『更級日記』、近代に入って永井荷風の『断腸亭日乗』といった傑作がある。だ

    • サミュエル・ピープスの日記(2)

      翻訳・解説:原田範行(慶應義塾大学教授) 【1660年のつづき。すでにピープスは、オランダへ国王を迎えに行く船の中。ただし、まだロンドンにいる。】 4月3日 夜遅く、就寝。朝3時頃、私の船室を激しくノックする者がいた。だいぶ苦労して私の目をさまし(とは仲間の話)、私は起き上がる。なんのことはない、郵便が来ただけのこと。だから私はまた寝た。朝、その郵便をご主人さまに渡す。  今朝、アイシャム艦長*がご主人さまに会うために乗り込んできて、ダウンズ錨地*へ向かう前にとワインを

      • 北烏山編集室の業務内容2024

         北烏山編集室は2024年6月1日、3年目に入ります。編集プロダクションとして業務を開始いたしましたが、2023年12月のデニス・ボック著、越前敏弥訳『オリンピア』の刊行を皮切りに、2024年5月には、原英一『カズオ・イシグロ、沈黙の文学』、レスリー・シモタカハラ著、加藤洋子訳『リーディング・リスト』を刊行。「英語英文学・翻訳のふたり出版社」というキャッチフレーズで、出版社としての活動も本格化しています。2024年現在の弊社の業務内容を以下に記します。 ●業務内容 ① 出版

        • サミュエル・ピープスの日記(1)

          翻訳・解説:原田範行(慶應義塾大学教授) 1660年  神に祝福あれ。昨年末、私はたいへん健康に恵まれた。例の痛み*も、冷えた時以外はない。  私はアックス・ヤードに、妻とお手伝いのジェインとともに住んでいる。他に家族はいないから、三人暮らし。  ここ七週間、妻に生理がなかったので子どもができたかと期待したが、大晦日になって始まった。国の状況は次の通り。ランバート卿*の騒動の後、臀部議会*が招集され、議員が議席に戻った。陸軍将校たちも承知せざるをえず。ローソン* はまだ

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        • サミュエル・ピープスの日記を読む
          3本
        • 本のことなど
          9本

        記事

          古田徹也『謝罪論』未読感想序説

          以下は、古田徹也さんの『謝罪論』(柏書房)の出版記念イベント(新宿・紀伊國屋書店)の感想。メモ書きであるし、校正も殆どしていない。 ① 昨夜は、古田徹也さんの『謝罪論』(柏書房)の出版記念イベントが新宿の紀伊國屋書店で開催された。イベントに参加予定の友人が急遽行けなくなり、私が代わりに参加。本を読む前にイベントへ行くことになったのだが、古田さんのお話を聞いたあと、いろいろな思考と連想が止まらないでいる。 ② ちょっと何から書いたらいいか分からないぐらい、あれこれ思うことが

          古田徹也『謝罪論』未読感想序説

          斎藤真理子著『本の栞にぶら下がる』感想メモ

           以下は、斎藤真理子さんの『本の栞にぶら下がる』(岩波書店)の感想メモである。書評を書きかけたが、きちんとまとめるのには時間がかかりそうなので、思いつくままメモ書きにした。丸数字を入れたのは、もともとはtwitterにアップしようとしたからで、noteにあげるにあたっては丸数字を削除したほうがいいのかもしれないのだが、noteに上げるつもりだったら別の文章にもなったかもしれないので、敢えて丸数字を残している。 ① 読了。これは「読書エッセイ」である。書評集ではない。本をき

          斎藤真理子著『本の栞にぶら下がる』感想メモ

          一英語編集者の戦中と戦後

          書いた人=津田正(北烏山編集室) [以下の文章は、2002年に中京大学の『八事』という評論誌の求めに応じて寄稿した文章である。特集テーマは「生存」で、それに関するエッセイなら何を書いても良いということだった]  筆者の勤務する研究社という出版社は九十五年の長い歴史を持つ。あの太平洋戦争の時代を生き延びた会社である。当時、紙は配給制になり、印刷に使う紙にも事欠くようになった。英語は敵国語である。その時代の出版目録を見ると、細々とながら英語のテキストなども出しているが、ナチス

          一英語編集者の戦中と戦後

          タカヤマ神がかり――令和交雑文体の修辞学

           高山宏先生の代表的な訳業として上げるべきは、バーバラ・スタフォード、ロザリー・コリー、マージョリー・ニコルソンなどの観念史の学者さんの著作の翻訳だろう。しかし、筆者が愛してやまないのはタイモン・スクリーチの翻訳だ。たぶん高山先生の翻訳はスクリーチさんの原文より面白い。そのことは題名を見るだけで一目瞭然である。たとえば、『春画』についている副題だ。「片手で読む江戸の絵」という。なぜ春画は片手で読むことになるのか、ちょっと考えてくすっと笑ってしまうが、長く考える必要はないぐらい

          タカヤマ神がかり――令和交雑文体の修辞学

          若林俊輔先生没後20年

          雑誌の人 「雑誌の人」であった若林俊輔先生について語りたい。               1  若林先生が62歳で東京外国語大学を退官されたとき、教え子の皆さんが、『私家版英語教育ジャーナル』というものを作ったことがあった。この名前はむろん、1980年に創刊され、若林先生が編集主幹を務めた『英語教育ジャーナル』(三省堂)の名前から取ったものだ。  ちなみに若林先生が還暦を迎えたとき、還暦記念の論文集というものも作られていた。その2年後にまた論文集を作るというのではいかにも

          若林俊輔先生没後20年

          北尾修一『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』のこと

                          1  北尾修一さんの『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』読了。著者の北尾さんは一人出版社「百万年書房」の代表だが、この本じたいはイースト・プレスの刊行。私、今年、イースト・プレスにものすごく課金している(韻踏み夫さん、斎藤真理子さん、奈倉有里さんの本)。  これ、いい本でした。編集者を40年近くやってきて、退職した今も、細々と編集の仕事を続けている。その間、半分はアドバイスを求めて、半分は憧れの有名編集者への個人的な興味から、編集者の書い

          北尾修一『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』のこと

          外山先生の『英語青年』

           外山先生の代表作は『英語青年』であると信じている。編集という行為は、おそらく外山先生の著作の発想の中心にあったと思うので、外山先生にとっても『英語青年』の編集に携わったことは大きな意味をもっていたのではないかと思う。  外山先生が『英語青年』を担当されたのは一九五一年から一九六三年の十二年、年齢でいうと二十代後半から四十ぐらいまで。筆者の経験で言っても、この年代が気力、体力、ともに充実する時期だ。が、それにしても外山先生の編集ぶりは、あまりに颯爽としていて、嫉妬すら起こら

          外山先生の『英語青年』

          都立の流儀

           先日、東大英文科には、柴田工房、大橋工場という言葉があると聞いた。自称「生半可な学者」である柴田元幸さんと、柴田さんの教え子たちが目下つぎつぎと現代アメリカ小説の翻訳本を刊行しているが、それらの翻訳集団を指して使うのが「柴田工房」。一方、「大橋工場」とは、とくに現代批評系の書籍を次々と翻訳している大橋洋一さんと、そのお弟子さんたちの集団を指す。  しかし、いまから4半世紀前、都立大にも巨大な翻訳者集団が存在した。篠田工場である。当時、篠田先生は海外文学紹介のスーパーバイザ

          都立の流儀

          映画『スープとイデオロギー』(ヤン・ヨンヒ監督)

           以下の文章は、現在、上映中のヤン・ヨンヒ監督の映画『スープとイデオロギー』の感想文である(映画については、 (soupandideology.jp)を参照)。以下では、この映画に登場する荒井カオルさんーーこの映画の「エグゼクティブ・プロデューサー」であり、ヨンヒ監督のパートナーでもあるーーに敢えて焦点を当てて書いた。よほど私の記憶力が劣化しているのか、二回もみた映画だったのに、細部の記憶違いがあった。失礼を顧みず、荒井カオルさんに直接お尋ねして、2カ所ほど事実関係において訂

          映画『スープとイデオロギー』(ヤン・ヨンヒ監督)

          北烏山編集室の業務内容

           本日、北烏山編集室を開設いたしました。当編集室の業務内容について説明いたします。おおよそ3つの段階を考えています。 ●業務内容 ① 出版社さんからの委託による編集業務 二人とも、古巣である研究社、三省堂の編集業務を引き続き行っていますが、それと併行して、他社さんからの編集も引き受けています。引き続き、その仕事を行います。 ② 当編集室による企画立案・編集 上記①は、あくまでも出版社さんからのご依頼により仕事をお受けするものですが、当編集室が書籍企画を立案し、出版社さんに

          北烏山編集室の業務内容