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DAY0:平凡なOLはスナックに立つ夢を見る

はじめまして。くね子です。

タイトルからもお察しの通り、「スナックのママになりたい」という思いを秘かに胸のなかに宿しながら生きています。


20代後半に自分でも驚くような環境の変化(転勤や結婚など)に晒され、その度に肩書きも職種も名前も変化していくと、それらを全部肩からフゥ〜っとおろして目的もなく純粋に流れゆくまま時間を楽しめる「酒場」という最高に民主的でハッピーな場に通うようになりました。



その頃からでしょうか。

「いつかカウンターのあちら側に立ってみたい......」

とある種の憧れを持ち続けています。


各地の酒場で佳き客としての立ち振る舞いはある程度は学んできたし、人当たりの良さには割と自信がありました(本当に手前味噌でごめんなさい)。


でもそれはあくまで客としてサービスを享受する側の話であって、飲食の経験もなければ水商売の経験もありません。


過去に興味本意で水商売の求人を覗いたことはありましたが、顔の見えない求人広告はただひたすらに怪しく...... 条件が良ければ良いほど懐疑的になり「きっと女子ロッカーでドレスを八つ裂きにされたりする人間ドラマがあるんだ」などと想像してはそっとiPhoneを閉じていたのです。


それに平日サラリーマンしてるとなんだかんだ忙しいフリをして生きていけてしまうわけで「やりたいけど、まあいつかタイミングが合えば」くらいに考えていたのでした。





そんなところ、SNSでとあるモデルさんが、副業としてスナックで働いていることを知ります。


古びた場末のスナック。

カラオケを愉しむ紳士淑女たち。

お客さんを見守り顔をしわくちゃにして笑うママ。


彼女のインスタから流れてくるそれらは昨今のウイルス騒ぎですっかりと姿を消しつつあった、豊かな社交場の姿そのものでした。



その後も彼女のストーリーズを辿っていくと『求人募集』の文字があるではありませんか。


「あ...これだわ......」と考えるよりも先にDMを彼女に送り、夫には翌日白状しました。



DMを送った翌週には面接へ。

ママ(連絡をとっていた彼女はチーママだった)は、写真で見ていた通りの方で、ご高齢ながらに人を惹きつける魅力があり、ご多分に漏れず声は酒で焼けていた。


「はい、面接しますよ。マスクとってね。・・・はい、顔きれい。採用」


就職活動ぶりに考えてきた志望動機は悲しいかな出る幕もなく一蹴され、ただ両親から与えられた顔が人様を不快にしない程度であった、ということだけであっさりと採用が決まってしまった(※本当に面接は10秒で終わり、そのあとはスナックの居心地の良さゆえお客として閉店まで過ごしました)。


そんなこんなで、いよいよ明日はじめてカウンターのあちら側に立つわけです。大人になってから(仕事以外で)新しいことをはじめるのは、とても気持ちがいいものですね。いまはただただ心が躍っています。


このnoteでは、そんなわたしのスナックでの奮闘記を静かに綴っていきます。ママがかなりクセの強い人で、入店半年でおおよその女の子は辞めてしまうそうなので、まずは勤務もエッセイも半年続けることを目標に。

またエッセイの端々では私自身の覚書も兼ねて、レイ・オルデンバーグ (著)の『サードプレイス――コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」 』からの引用が登場します。本著はスナックでバイトを決めた前日に本屋で立ち読みしていて見つけた一冊で、きっとお酒の勢いと余ってこぼれ落ちてしまいそうな些細な発見を掬い上げてくれるのに役立つだろうと思って購入しました。

自身のフィールドワークに+本の力を借りながら、少しずつかたちにしていけたらと思います。お付き合いいただけたらうれしいです。

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