くね子

編集者として働く側、週一で高架下にある小さなスナックでアルバイトをしています。 スナッ…

くね子

編集者として働く側、週一で高架下にある小さなスナックでアルバイトをしています。 スナックでの些細な出来事を通して、コミュニティを都市を社会を見つめ思いを綴っています。

最近の記事

DAY5:零れ落ちてしまわぬように

早いものでスナックで働きはじめてから1ヶ月が経過した。 ここで働くのにも慣れてきた。慣れるのはいいことももちろん多いけど、気づきに鈍感になるという意味においては危険なことでもある。ここで改めて、このスナックで感じたことを振り返っておこうと思う。小さなことも大きなことも。 まず記しておきたい気づきは、お給料について。 学生時代のアルバイトからサラリーマン10年目のいまに至るまで、お給料は銀行口座に振り込まれるものだった。 毎月25日に口座を確認して「お、少し増えてる。で

    • DAY4:寄り道

      昔から女友達と遊ぶ日程を約束するのが苦手だった。 「じゃあ、次は来月土曜の夜ね!」 「えー、わたし来月の土日は全部埋まってんだよね〜」 「なにそれリア充じゃん」 リア充が死語かどうかはさておき、ほぼ毎日会っているような子だっているのに、一体何をそこまでして会って話したかったのか、いまのわたしにはもうさっぱり思い出せない。 特にこのリア充的やりとりが発生したのは大学時代の頃で、私たちは遊びとバイトしか入っていない手書きのスケジュール帳を開いてはああでもないこうでもない

      • DAY3:言葉の体温

        「彼氏や旦那さんの存在は、お客さんの前では絶対に隠すこと」 これはこのスナックで働く女の子に課せられた掟のひとつである。 お店に来るお客さんの大半が前期高齢者以上のこのスナックにおいて、その掟は果たして必要なのか......?と思うこともあるけれど、ママが決めた掟なのだから仕方がない。 お店にいる女の子は20〜30代の女性なので、もちろん彼氏がいれば旦那さんがいる子もいる。 チーママだって結婚しているけれど、勤務中は結婚指輪を右手の薬指に付け替えその他にもファッション

        • DAY2:君は無駄話を愛せるか?

          カウンター席のみ。10名入ればもうパンパンになってしまうこの小さなスナックは、私が知る限りではいつもそれなりに賑わいを見せていました。 「あなたラッキーね。こうゆう日ばかりじゃないのよ。お客さんゼロな金曜日の夜もあるしね」 チーママにはそう言われていたけれど、にわかに信じがたいほどでした。 ところが、その日は急に訪れました。 営業時間内に来た客は、なんと2人だけ。 油断すれば店からシーンという音が聞こえてきてしまいそうなほど、とにかく静かな夜が幕を開けました。 だ

        DAY5:零れ落ちてしまわぬように

          DAY1:カウンターのあちら側

          駅の高架下。小さな看板がひょいと顔を出す古びたスナックが、今日から私がお世話になるアルバイト先です。 お店では彼氏や旦那さんの存在を隠すというルールなので、自宅と同じ沿線沿いにあるそのスナックへ向かう道中で薬指の指輪を外します。 「あれ。薬指ってこんなに軽かったんだっけ?」などと思い返し、平凡な夫婦生活にもそれなりに重みがあったことを知ります。 この先何年ここに勤務するかは分からないけれど、指輪を外すこの瞬間ばかりはずっと罪悪感を感じ続けるのだろうな。 面接から1週間

          DAY1:カウンターのあちら側

          DAY0:平凡なOLはスナックに立つ夢を見る

          はじめまして。くね子です。 タイトルからもお察しの通り、「スナックのママになりたい」という思いを秘かに胸のなかに宿しながら生きています。 20代後半に自分でも驚くような環境の変化(転勤や結婚など)に晒され、その度に肩書きも職種も名前も変化していくと、それらを全部肩からフゥ〜っとおろして目的もなく純粋に流れゆくまま時間を楽しめる「酒場」という最高に民主的でハッピーな場に通うようになりました。 その頃からでしょうか。 「いつかカウンターのあちら側に立ってみたい......

          DAY0:平凡なOLはスナックに立つ夢を見る