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起業を考えている人がいたら読んでほしい。起業する前に〇〇〇を決めた方がいい

6月18日、知人の会社が上場しました。
私が最初の会社を設立したのが今から17年前。私の会社とその会社の設立日が数日違いでした。その会社の上場のニュースを見て、嬉しかったですね。

私は17年間会社を経営しているので、今回は起業について自分なりの見解を書いてみようと思います。

起業を考えている人が見たら、少しは参考になるかもしれません。
興味の無い人は本話を飛ばしてください。


まず、私の立ち位置を説明します。

私は起業関連の仕事をしていません。起業コンサルは起業してもらわないと仕事にならないので、ネガティブなことは書かないでしょう。不動産会社が不動産のことを悪く言わないのと同じです。この点、私は仕事で起業コンサルをしていませんから、客観的な立場で書けるのかと思います。

なお、私は起業に関してポジティブでもネガティブでもありません。ニュートラルです。起業したければすればいいと思っています。


次に、私は仕事柄、多くの会社に関わります。

自分が経営した会社が30社くらい、役員をするなどして深く関わった会社が50社ほど、仕事で関わった会社は1,000社を超えています。
会社設立のとき(起業)に関わることもあるし、会社を清算するときに関わることもあります。「ゆりかごから墓場まで」のような職業ですね。

さて、タイトルについて触れましょう。
これは、私が起業を考えている人に意識してほしいことです。

【起業する前に〇〇〇を決めた方がいい】

〇〇〇に入るのは「辞め時」です。

会社を設立する前に、やめるタイミング・方法を考えておきましょう、ということです。

私は不動産や企業買収のセミナーでこう説明しています。

『投資するときにはエグジット(出口)をイメージしてください』

不動産投資の場合は、自己資金30%・借入70%で10億円の不動産を購入し、5年後に売却する。物件保有によるインカムゲインと物件売却によるキャピタルゲインは、年率換算すると10%……とイメージすることです。

起業も不動産投資と同じです。

起業前に3年後の目標(売上、利益など)を決めておいて、3年経過後に判定する。
目標値を達成できていれば事業を継続し、達成できていなければ事業を売却して撤退する。

起業ではこんなイメージです。

「起業する前から……縁起が悪いな」と感じる人もいるでしょう。

ただ、これには理由があります。

1.成功するかどうかは運である
2.起業はタイパが悪い

前置きが長くなりましたが、本記事ではこの2つについて説明します。

ここからの話はあくまで私の意見です。
主観の部分が強いので、「そうじゃない!」と思う人もいるかもしれません。ご了承ください。



1.会社が成功するかどうかは運である


会社を設立してから1年後にその会社が存続している(休眠状態ではなく営業を継続している状態)のは約30%。3年後になると約10%です。
つまり、10社に1社しか残りません。

起業コンサルは「9割潰れますよ」とは言いませんね。

会社が存続しない理由は幾つかあります。
たとえば、以下のようなものです。

・思ったよりも業績が伸びない
・方向性が合わずに役職員が辞めていく
・取り分で揉めて仲間割れする
・従業員がお金を持ち逃げする

私の経験上、純粋に事業が失敗して清算するケースはそんなに多くありません。

会社を経営するといろんなことが起こります。
経営方針の違い、内輪もめ、詐欺などです。
儲かっていても、会社は潰れます。
起業には不確定要素が多くて、何が原因で潰れるか分かりません。

実際に、私は起業して1年で仲間割れして分裂しました。

さて、起業する前は夢や希望に溢れています。
この時期は楽しいです。
起業には夢があります。私も起業する前はそうでした。

「これは絶対に売れるはず!」とか「僕なら成功するはず!」と思って起業します。

しかし、重要な点を見逃しています。

まず、神様でもなければ未来を予想することはできません。勘のいい人でも成功率は70%くらいです。「絶対」はありません。
「これは絶対に売れるはず!」や「僕なら成功するはず!」は試してみないと分かりません。

**

ここで、パン屋を始めた人の話をしましょう。

その人は某有名パン屋で修行し、技術を習得したパン職人でした。
某有名パン屋の中でもかなりの腕前で、「私の焼くパンはどこよりも美味しい!」と自信を持っていました。
そして、高クオリティのパン屋は「成功するはず!」と信じていました。
でも、失敗しました。

失敗した理由は何だと思いますか?

その人のパン屋は美味しいけど、他のパン屋さんも美味しいからです。

考えてみてください。

――自信の無い人は起業しますか?

起業する人はそれなりの腕前、スキルを有しています。
熟練のパン職人が起業(お店を出店する)したように、社内で「この人は仕事ができる!」、「この人は優秀だ!」と言われていた人が起業します。

つまり、現存する会社は、仕事ができる人、優秀な人が作った会社です。
自信のないパン職人は独立(起業)しません。

起業すると、優秀な人が溢れている市場で戦わないといけません。
大企業の知名度が使えず、資金的にも余裕がありません。

優秀な人との戦いで生き残れるのは2タイプの人です。

・とんでもなく仕事ができる人
・運のいい人

「とんでもなく仕事ができる人」の起業家は稀です。
優秀さレベルの10段階中10の人です。数が少ないし、別格です。

大多数の起業家の優秀さレベルを10段階中7~9としましょう。
例えるなら有名大学に合格者を輩出する地方の進学校です。そこの生徒はみんな優秀です。
起業家は普通の人よりも仕事ができます。優秀さに明確な差はありません。
その中で生き残るのは「運のいい人」です。

ソフトバンクグループの創業者の孫正義さん。有名な経営者ですね。
孫正義さんは優秀さレベルの10段階中10だと思いますか?

孫正義さんは優秀です。でも、10段階中10ではないでしょう。
運がいいから成功した経営者です。

**

「良いサービスなんだけどなー」という起業家は多いです。
でも、考えてみてください。
その会社のサービスもいいけど、他社のサービスも良いのです。

会計ソフトの弥生会計とfreeeのどちらが優れているかを理解できる利用者はほぼゼロです。
つまり、両者のサービスの差が明確に分かる消費者はいません。
90%以上の消費者は「なんとなく良さそうだから」使っています。


ここで少し脱線します。

『3月のライオン』で山崎順慶五段の有名なセリフがあります。
私の好きなセリフです。

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「信じれば夢は叶う」それは多分 本当だ
但し 一文が抜けている「信じて努力を続ければ夢を叶う」
——これが 正解だ。
さらに言えば 信じて「他のライバルよりも1時間長く毎日努力を続ければ
ある程度迄の夢は、かなりの確率で」叶う——だ
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プロ棋士が成功する条件を語っているセリフです。
これは、会社経営に似ています。

・優秀な人が起業する
・優秀な人は他社に勝つために努力する
・優秀な人は成功することを信じて努力する

そして、成功するのは「かなりの確率」ではなく「それなりの確率」です。

・優秀じゃない起業家はいない
・努力しない起業家はいない
・努力を継続しない起業家はいない

だから、運が重要です。

起業を考えている人には「いくら努力しても報われないことがある」ことを知っておいてほしいと思います。

会社が成功するかどうかは運です。

2.起業はタイパが悪い


起業家はみんな優秀です。
そして、起業には資金が必要なので、薄給のサラリーマンは起業しません。
スタート時点から、起業家はそれなりにカネを持っています。

つまり、起業を考えている人は「既にある程度は成功している人」、「人生の勝ち組」です。

私は前職が金融業界です。年収数千万円の人がゴロゴロいます。
それでも、起業したい人がいて、私のところに相談にやってきます。

既に成功しているから、自分はもっと稼げると信じています。
既に成功しているから、次のビジネスも成功すると信じています。

でも、起業すると「会社の知名度」、「会社の資金」、「会社の人脈」を使えません。今までの成功体験が新会社では使えません。

例えば、コンサル業や不動産業で独立すると、新規で顧客やオーナーを獲得することが必要です。
売上ゼロからスタートするので、起業前の給与水準を払えるだけの売上はありません。
※起業前に十分な数の顧客を獲得しているケースもあります。

売上ゼロからスタートすると、起業前の給与水準に達するのに時間が掛かります。数年、10年以上かかるかもしれません。

私の場合は、起業から約10年経って、起業前の水準に戻りました。
でも、こう思いました。

――この10年は無駄だったのでは?

会社が成功するためには、クライアントや消費者に認知される必要があります。それには時間が掛かります。

入浴剤の「バスクリン」は知っていますね?
でも、新しく入浴剤は誰も知りません。
新しい入浴剤を作っても「バスクリン」と同程度に認知されるためには時間が掛かります。

何年待てばいいのでしょう?

起業家の時間は有限です。
あまりに時間が掛かるのであれば、事業を停止するのも選択肢の一つです。
場合によっては、会社を清算して前職に戻った方が収入はいいでしょう。

正直言って、起業はタイパが悪いです。
だから、タイムリミットを予め設定しておくことが重要です。

3.まとめ


さて、まとめです。
ここまで私が起業について思っていることをツラツラと書いてきました。
私の経験では、起業に関して以下のことが言えます。

・優秀な人しか起業しない
・成功するには時間が掛かる

つまり、成功するためには運と時間が必要です。

タイトルに戻ります。

【起業する前に「辞め時」を決めた方がいい】

例えば、「〇年間頑張ってダメなら辞めよう」と決めておいた方がいいでしょう。

売上・利益が伸びなくても会社を継続する人がいます。
損しない程度に利益が出ているから倒産はしません。
起業前から小金持ちなので直ぐに倒産しません。
でも、効率的ではありません。

別の事業を始めるか、元居た会社に戻った方が効率的です。

起業を考えている人がこの記事を読んで、参考になるかどうかは分かりません。気分を害した人もいるでしょう。

でも、後になって気付くよりも、事前に知っておいた方がいい……そう思って書きました。

起業することは悪いことではありません。
成功する人はいるし、失敗する人もいる。それが起業です。

興味ある人は起業してみてはどうでしょう?
ただ、その際には「辞め時」を設定してください。

以上、起業して17年経った私が思っていることでした。

<おわり>

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