Nao Kikuchi

福島県公立学校教諭11年→私立小学校。誰でも居られる,暮らせるクラスを大切にしています。

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マガジン

最近の記事

「日本の教育はコスパ世界一」に喜んでいいのか?

1月5日に開催された「どう読む?どう生かす?PISA2022」というオンラインイベントでの、僕のメインメッセージは「日本の教育はコスパ世界一」に うかうか喜んでいていいのか?というものだった。 OECD生徒の学習到達度調査(PISA2022) https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/ 「学習到達度が高い=良い」のか? 国際的な学習到達度調査であるPISA2022で、日本は世界トップレベルの結果だった。 要因としては、コロナ禍の休校期間が短

    • 「個別最適な学び」という名の幻想

      「個別最適な学び」という名の幻想 「おめぇら俺が怖いんだろ。名前つけなきゃ不安でしょうがねぇんだろ。」 高校生のころ、金城一紀の小説を原作とした映画「GO」に魅了された。 中でも、窪塚洋介が演じた主人公の杉原がクライマックスで叫ぶこの一言に、当時の僕の心が強く共鳴した。 話変わって、いま「個別最適な学び」という言葉が教育業界を賑わせている。 令和3年1月に、中央教育審議会が『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的

      • セルフ代休を取る【先生の仕事論】

        日曜日は、陸上大会の引率でした。 どの子も、大会や競技を楽しめてようだったので、僕としてはそれで十分でした。 そして昨日は、その分の休みをいただきました。 現在の勤務校では、制度上も正式にお休みをいただいています。 でも、公立学校に勤務していた頃はそうしたお休みはありませんでした。 なので部活のための休日出勤は強制ではありますが、なぜかお安めな日当をいただいて働くという不思議な取り扱いでした。(今は、公立学校も代休はあるのかな…?) 公立学校時代は、制度上のことをあれこれ

        • 叱らないで育てる~うまい先生のしている7つのこと~

          先週、修学旅行に行ってきました。 その道中、みんなの前である子に注意をする場面がありました。 いま振り返っても、同じ場面になったらまた叱ってしまうだろうなと思います。 時間が無い中で改善を求める声かけは、どうしても注意という形になってしまいます。 でも、叱る側も、叱られる側も、見ている側も、気分はよくないですよね。 僕自身も、「あぁもっと早く気づいておけばよかった」と反省したワンシーンでした。 そんな中、別の場面で同行した校長が行った注意が「うまい!」と思わず唸ってしまうもの

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        • 暮らすクラス
          14本

        記事

          外部人材を”活用”するのは、もうやめにしないか?~人を消費する授業・人とつくるする授業~

          地域人材を活用する授業と地域人材と協働する授業の違いコラボ授業は、地域人材と「協働」する授業であるという点に、大きな特徴があります。 似たような言葉で、地域人材を「活用」した授業というものがあります。 この2つ、たった一言変わるだけで、印象が変わると思いませんか? また、一言の変化で、授業のどの部分が違ってくると思いますか? 私なりの回答をすると、以下のようにまとめられます。 活用するのは学校のためで、協働するのは共通の目標のためまず地域人材を活用する授業は、活動の主体が学

          外部人材を”活用”するのは、もうやめにしないか?~人を消費する授業・人とつくるする授業~

          「行ってよかった」と帰れるように

          勤務校は、今日から2学期が始まった。 朝、教室はザワザワ。 うるさくもなく、静かでもなく、でも何か落ち着かない。 子ども達からは、久しぶりに友達と顔を合わせた嬉しさが感じられる。 同時に、少しの緊張や、自分の話をすることへの躊躇、相手のことを聞くことへの遠慮なんかも。 それで、なんだか周りをうかがうような空気になる。 さて、そんな夏休み明けの初日。 この日は、何かとやる事が多くて忙しい。 ともすると、テキパキ、テキパキ、ガガーッと… 一日を終えて、子ども達が帰った

          「行ってよかった」と帰れるように

          中学生への読書案内~女の子はどう生きるか 教えて,上野先生! (岩波ジュニア新書 929) ~

          今年度は中学校でも、1年生の国語科の授業を持つことになった。 小学生向けの本であれば、ある程度手渡しできる情報の蓄積があるのだけれど、中学生となるとさっぱり。 ということで、コツコツと読んで、書き溜めておこうと思う。 --------- ジェンダーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。 これは、男女による性差を意味する言葉です。 なんでわざわざカタカナ表記なのかって? それは、日本に限らず国際社会全体で共有すべき概念だからです。 この学園で取り組むSDGsにも『5 ジェ

          中学生への読書案内~女の子はどう生きるか 教えて,上野先生! (岩波ジュニア新書 929) ~

          その不安を分かち合えたなら~教師と子どもが手を取り合うこと~

          4月。 期待と不安の入り混じった表情で見つめる子どもたちに、毎年僕は話す。 「僕だけの力では、この学級の、これからの一年を充実させることなんてできない。」 こう言えるようになって、僕はどれだけ学級を楽しめるようになっただろう。 どれだけ、子どもが頼もしく思えるようになっただろう。 どれだけ、子ども達の良さに目を向けられるようになっただろう。 教師が自分の限界と不安を率直に、 そして丁寧に子どもたちと分かち合うことで、 "私たちの学級"がゆっくりと始まっていく。 教

          その不安を分かち合えたなら~教師と子どもが手を取り合うこと~

          立派な恵方巻にかぶりつけなくなった話

          正直,僕が1番おどろいてる。 こんなことになるなんて。 よりによって,こんな日に。 先日妻から,よくお世話になっている近所のお魚屋さんで,恵方巻を予約したという報告を受けた。 だから今日は,美味しい恵方巻にかぶりつくのを夢見ながら,仕事を頑張った。 仕事が終わって,予約をしていた歯医者に寄った。 いつも通りの治療のつもりで,席に着いた。 どうやら僕の歯の1本は,神経の通り道が曲がっているとかで, 前回の診察の時に,次は「外科的に処置しますね」と言われていた。 そして今回も

          立派な恵方巻にかぶりつけなくなった話

          教室の多様性は何に塗りつぶされたのか

          『多様性』 ここ数年で,急によく聞く言葉になった気がする。(僕だけかな?) 詳しくは書けないのだけれど… 高校時代,クラスに全く馴染めず,保健室で過ごしていたことがあった。 そんな時,この言葉に出会って,随分救われた。 (あぁ,僕は一様じゃないから,生きる甲斐があるってもんじゃないか。) (少年よ,今の苦しさこそが,君の危うさ・弱さなのだよ。一様に安心し,保身に走る固定観念を解き放ちたまえ。) なんて,自分に言い聞かせながら,あらゆる場でアウトローを楽しむようになった。 当時

          教室の多様性は何に塗りつぶされたのか

          よろしくね,ボクの曲がった小指ちゃん。

          「ぱちん。」 聞きなじみのない音がする。 左手を見ると,深々と頭を下げるように,小指が曲がっていた。 どうやら,ボクはこの曲がった小指ちゃんと,生涯を共にするようだ。 そして,思う。 こんなふとした瞬間に,体の形や機能は変わってしまうんだ。 ボクの体に不自由が無かったのは,"たまたま"なのかもしれないなと。 曲がった小指ちゃんとの出会い お昼ご飯を食べ終わって,僕はいつものようにパソコンでサーフィンの動画を見ていた。 イメージトレーニングと言えば聞こえは良いが,(あぁ,サー

          よろしくね,ボクの曲がった小指ちゃん。

          子どもが自らの手で「学級」と言う社会を構築するのが,最良のキャリア教育なのだ。

          これまで,様々な角度から「キャリア教育」に類すると思われる教育実践に力を入れて取り組んできた。 社会に主体的に参画して,生き生きと働く大人を教室に招いてきた。 自分の故郷を見つめ直す学習にも,機会を見つけて取り組んできた。 手前味噌ながら,どの学習でも,子ども達は教科書をなぞる授業以上に目を輝かせて学んでいた。 僕には提供できない学びを,たくさんの社会人が提供してくれた。 そんな授業をしながらも,一番大切にしてきたことは,大人から「今の世の中を学ぶ」ことではない。 僕が大

          子どもが自らの手で「学級」と言う社会を構築するのが,最良のキャリア教育なのだ。

          子どもに遊んでもらえる先生でいようと思う。

          「先生,一緒に遊びますか?」 休み時間に,Uくんが僕のところに来て,照れ臭そうに言った。 「うん!いいね!遊びたい。」 と答えると,嬉しそうにはにかんで,友達を誘いに行った。 僕も,素直に嬉しかった。 「なんか,昨日,家で,お姉ちゃんに,菊地先生は業間休みに何してるの?って聞かれたんですよ。」 一緒に,トランプをしながら,ひそひそと教えてくれた。 その子の姉も,僕が昨年担任した子だった。 「うんうん。Uくんは,なんて答えたの?」 「菊地先生は,"いつもパソコンをしてい

          子どもに遊んでもらえる先生でいようと思う。

          「知」図づくり×コケで授業づくりにチャレンジ~苔の声に耳をすませて~

          君は,いったい,いつまで分かった気でいるんだい? たかだか30年ちょっとの人生で,自分以外のものに何かを教えられる気になっているんだもんな。 先日,学校に出勤すると,玄関に何かあることに気が付いた。 近づいてみると,ガラスの容器に,数種類の苔が生けられている。 その小さな世界に,思わず見入ってしまった。 じっとのぞき込んでいると,苔たちが僕に語りかけてくる。 あぁ,これはもう…後戻りはできない。 腹をくくって,職員室へ向かった。 「あの,玄関の苔のやつって…」 「あ,あれ,

          「知」図づくり×コケで授業づくりにチャレンジ~苔の声に耳をすませて~

          偶からはじまる物語~授業「風の歌を聴け」~

          完璧な文章などといったものは存在しない。 完璧な絶望が存在しないようにね。 惚れ惚れする書き出しだった。 僕が,村上春樹を正式に読み始めたのは,この本を大学時代の友達に借りた時だったっけ。 授業中の子ども達の姿から,この題名と書き出しの一節を思い出すなんて。 図画工作科の単元に「動きをとらえて形を見つけて」というものがあった。 自然の中の動きや形から,その特徴を生かした表現をするというもの。 見えないものが見え,聞こえない声が聞こえるものこそ人間らしい 僕は,人には見

          偶からはじまる物語~授業「風の歌を聴け」~

          【アフターコロナ時代】先生の役割って?

          休校が再延期になり,一時登校日だった,5月7日木曜日。 僕はこの日,子ども達の感情…と言ったら大げさだけれど,今感じていることを教えてもらおうと思った。 すると,子ども達の話から,ボクなりに「これからの教師の役割」を考える上で,貴重な話が聞けた。 僕が考えた,ボク的「これからの教員の役割」は,以下の4つ。 ①学習フローチャートをつくる,プログラマー役。(一時的) ➁めっちゃ応援してくる,学びにポジティブなおっさん役。 ➂なんか勝手にワクワクしてる,一緒に学ぶ"超"子ども役。

          【アフターコロナ時代】先生の役割って?