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中学生への読書案内~女の子はどう生きるか 教えて,上野先生! (岩波ジュニア新書 929) ~

今年度は中学校でも、1年生の国語科の授業を持つことになった。
小学生向けの本であれば、ある程度手渡しできる情報の蓄積があるのだけれど、中学生となるとさっぱり。
ということで、コツコツと読んで、書き溜めておこうと思う。

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ジェンダーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、男女による性差を意味する言葉です。
なんでわざわざカタカナ表記なのかって?
それは、日本に限らず国際社会全体で共有すべき概念だからです。
この学園で取り組むSDGsにも『5 ジェンダー平等を達成しよう』という形で明記されています。

さて、皆さんの中には、性別によって不当な差別を経験したり、自分には如何ともしがたい性別上の困難にぶつかった経験がある人はいませんか。
もし、そういった経験が無いひとがいるとしたら、次の2つのことを疑ってみて下さい。

1.不当なことを、当たり前だと思いこまされている。
2.無自覚のうちに、性別上の利益を得ている。


世界経済フォーラムが出したジェンダーギャップの大きさを示す調査によると、日本は156ケ国中120位。(2021年3月)
男女格差の課題先進国であることは間違いありません。
ですから、これまでにジェンダーによる困難に直面した経験を持つ人はもちろん、困難を認識したことのない人にはより、この本を手に取ることをお勧めしたいと思います。
この本はQ&A形式になっていて、寄せられた率直な質問に、著者である上野先生がアンサーします。
時に丁寧で、時に痛快な上野先生のアンサーは、本が進むにつれて文が熱を帯びていくような感覚さえ生む、気込みを感じます。
その気込みは、本の最後に収められた『東京大学入学式 祝辞』でピークを迎えます。
既にこの祝辞の内容を知っている人もいるかもしれませんが、本書の内容を踏まえて、もう一度読んでみて下さい。

ジェンダーギャップに関する知識を得て、自分なりの考えを持つことができる一方、この本は『女の子』という視点から、社会のあらゆる問題について考えることもできます。
労働、社会保障、子育て、経済、介護、政治、学校教育、多様な性。
ぜひ、これらの問題に対して『男の子』という視点や、『中学生』というあなたなりの視点から、考えを言葉(読書メモ)にしてみて下さい。
この本が、1つの事柄に対して複数の視点から考えるきっかけや、1つの視点から複数の事柄に対して考えるお手本にもなるかと思います。

ようこそ、ジェンダーギャップの溢れる社会へ。
公正な未来をつくるのは、あなたです。




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