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追悼ピーター・グリーン:隠れた名曲 フリートウッドマック ”Oh Well”

追記:2020年7月25日にフリートウッドマックのオリジナルメンバーだったピーター・グリーンが亡くなりました。本記事は彼が亡くなる前の7月6日に掲載したものですが、本記事を彼の死に捧げたいと思います。R.I.P.

YouTubeで女性三人姉妹のHaimが2015年のT in the ParkでFleetwood Macの”Oh Well”を演奏するのを見つけた。Haim自体がどんなバンドかすら知らなかったが、このカバーは文句なく素晴らしい

調べてみるとHaimは2013年と2014年にGlastonburyにも参加していて同じ曲をやっていたようだ。

https://dai.ly/x2vce92

アレンジ面ではどの演奏も大きく変わらず、ギターリフで始まり、大きな太鼓を髪をかき乱して叩く姿、メタルっぽいギター音と彼女たちの大学生のようなステージ衣装とのギャップが演出効果抜群だ。

この"Oh Well"は古くからのロックファンであれば、すぐにPeter Greenが作曲したFleetwood Macの曲だと知っている。

Haim姉妹の両親はともに音楽通で、元サッカー選手の父親はドラムを叩き、母親は70年代にGong ShowでBonnie Raittの曲で優勝したことがあるらしく、姉妹は両親の持つClassic RockとAmericanaのレコードコレクションを聞いて育ったらしい。この"Oh Well"がそのコレクションの中に含まれていても不思議ではあるまい。

Fleetwood MacによるオリジナルはPart 1とPart 2があり、このHaimが演奏するのはPart 1。Part 1と2はシングルでリリースされた後、アルバム”Then Play On"にも収録され、その後はベストアルバムや未発表ライブでもリリースされている。69年にUKチャートで二位、16週間チャート入りしている。米国ではFleetwood Macの曲として初めて100位以内に入っている。

面白いことにこの曲は作曲したPeter Greenが去ったあとのFleetwood MacでもLiveでよく演奏されており、亡くなったBob Welch、Lindsey Buckingham、そして一番新しいのではTom Petty & HeartbreakersのギタリストMike Campbellと元Crowded HouseのNeil Finnが演奏するバージョンがYouTubeにある。

この曲が他のミュージシャンに及ぼした影響は多大で、Led ZeppelinのJohn Paul JonesとJimmy Pageは”Black Dog”のギターリフとブレイクの構成がこの曲にインスピレーションを得たものだと認めている。そういえばBob WelchがParis時代に演奏していた”Religion"もよく似ている。AC/DCの"Beating Around Bush"になるとバンドはこの曲のトリビュートだと認めているし、Aerosmithの”Walk this Way"のリフも"Oh Well”の変形疑惑濃厚である。

当然"Oh Well Part 1"をカバーするバンドは多く、ZZ TopのBilly Gibbons、Tom Petty & Heartbreakers、Aerosmith、Jimmy Page & Black Crowes、Jason Isbell、意外なところではJoe JacksonやLeo Kottke & Mike Gordonも取り上げている。

オリジナル発表当時Peter GreenがPart 1をライブで演奏する映像もYouTubeにあるが、微笑みながら歌う姿はかなり不気味だ。

作曲したPeter Greenはアルバム"Then Play On"から”Oh Well Part 1"がシングルカットされるというので当初は相当渋っていたらしいし、バンドメンバーも反対していたそうだ。それが今やこの曲がこれほど長くの間他のミュージシャンに演奏されているのにさぞかし驚いていることだろう。

BBCのPeter Green - Fleetwood MacというドキュメンタリーではOasisのNoelが”Oh Well"にぶっ飛んだと語る一方、Peterはインタビューで「”Part 2"の方がもっと素晴らしい」と言っているようだ。正直かなり言っている内容が不明瞭で「「神」について歌っている」と当時の心境を語っている。

69年にはエリッククラプトンやジミヘンドリックスと並ぶギタリストとしての栄光を手にしたPeter Greenだが、米国ツアーを契機にドラッグに溺れ、まもなく精神疾患に陥り、ついにはその後25年間精神療養所で過ごすことになる。BBCが1996年に制作した彼のドキュメンタリー”A Hard Road"では、何とか療養所を離れ、やっとまともに眠れるようになったPeterがギター演奏を始めた姿が描かれている。

Fleetwood Macを辞めたPeterと一緒に演奏していたギタリストであるナイジェル・ワトソン等が集めたバンドメンバーはドラムが故コージーパウエルでベースがニールマーレーだった。未だ十分人前で演奏できる状態では無いピーターだったが、小さなギグやリハーサルを行いブルースフェスティバルに出演する。駆け付けたエリック・クラプトンの前で演奏するピーターについてバンドメンバーは「随分良くなったが、まだまだこれは始まりだ」と語る。

Mick Fleetwoodは今年の2月にPeter GreenのTributeコンサートを開いている。Mickは共にFleetwood Macを創設したPeterが忘れられてしまわないかと気にかけていたのがこのコンサートを企画したキッカケだと言う。Peter自身はこのコンサートに参加していない。同コンサートではSteven TylorとBilly GibbonsがPart 1をDave GilmourがPart 2を演奏している。

Peterをリスペクトするミュージシャンはまだまだ増え続け、”Oh Well"のカバーも世代を超えて続いていくのだろう。



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