見出し画像

ワイヤレスヘッドフォンすごいって話と便利になりすぎると引き返せない世界

大学院を修了しアメリカで働き始めた記念として、その初給料でワイヤレスのヘッドホンを買おうと決めていた。それで何年もずっと欲しいなぁと思い続けていた、BoseのQuietComfort 35をついに購入。

わたしがたまに「趣味」といってやることのひとつに、秋葉原の大型家電量販店で、ヘッドフォンに限らずデジタルカメラやペンタブ、新モデルのアップル製品などを片っ端から試してまわるというのがある。それである時ヘッドフォンを聞き比べまくっていた時に、音質・ノイズキャンセリングの性能・ワイヤレスという利便性の全てにおいてこのヘッドフォンは文句なしの高クオリティだったので、いつかぜひ買いたいと思いながら年月が過ぎていた。

なにしろお値段が… (今ざっと調べると、公式サイトで日本円¥39,960、米ドルで$349.95) 現在の私の金銭感覚では、ヘッドフォンに出すには結構勇気のいる額だった。だけどこれまで使っていたヘッドフォン・イヤフォンともに最近ダメになったのをきっかけに「大学院修了のご褒美とアメリカでの初給料記念を兼ねて!」と考え、購入に踏み切った。

実はワイヤレスヘッドホンを使うこと自体が初めてだったのだけど、使ってみるとめっちゃ便利…!

たとえばパソコンで動画を見ていてちょっと席を離れる必要がある時に、いちいち再生を停止させてヘッドフォンを外し、用事が済んだらまたヘッドフォンをつけて再生を再開する、といった手間が省ける。ヘッドフォンをつけたまま歩いていける。こうやって書くとそんな手間は大したことのないように思えるけど、そんなちょっとした手間がなくなるだけでも「超便利!楽!」と感じるし、そうなるともう元の不便には戻れない。

こういうことって、ヘッドフォン以外の製品でもあると思う。いつも使っている製品のパッケージが改良されて、新しいのを使ってみると「確かにこれ前より使いやすくなってる!認識してなかったけど、そういえば前のやつはここが不便だったわ!」と思うことがある。

またQuietComfortの話に戻ると、ヘッドフォン本体についているボタンで停止・再生・音量の調整・前後の曲への移動などが簡単にできるのも地味に便利。これで移動中に音楽を聴いている時、ポケットからiPodをいちいち取り出さなくても操作ができるようになった。手袋したままでいいし。本当にささいな操作なんだけど、一度それを省略した方法を知ると元のやり方でやるのがもう面倒に感じる。

で、こうなってくると次は「手で操作しなくても、頭で考えるだけで操作できたらいいのに」と考えるようになっていた。ヘッドフォンで音楽を聞きながら食器を洗っていたときのことだった。ワイヤレス体験前時代の、濡れた手でiPodを操作する不便さから解放されたのもつかの間、結局泡だらけの手ではヘッドフォンのボタンを操作することもできないので、そうなると「頭で思うだけで操作できたらいいのに」となってしまう。

頭で考えるだけで操作できるテクノロジーはまだ難しいだろうけど、じゃあ音声認識だったら現実的では、と思った。けど、何でも音声で操作することが果たして手での操作に勝るのか?というとそれはどうかなと思っている。

その理由は、映画「ブレードランナー」を見ていた時に、デッカードが写真画像の解析をするシーンで、音声操作でひたすら「拡大、拡大」と言い続けるのを見て「アイアンマンみたいに手で操作するインターフェースの方が使いやすいよなぁ」と思ったからだ。どういう用途だったら音声操作がいいのか、どういった場合には手での操作が便利なのかという話は、UIやUXに詳しい方だったら自明のセオリーなんだろうか。(地図や写真を拡大するといった、画像が絡むものは手の操作がいいんだろうと思っている。音楽の再生とかは音声操作が楽かな。) 大学院でのマーケティング研究を経て、いまはUI/UXに興味があるので、ちょっと考えてみたい。

結局、便利さの追求って終わりがないんだろうな。

また別の日、なんとなくネットを見ながら昼食にサンドイッチを食べていた時に、両手が汚れている時はパソコンを触ることができないので「手を使わずに頭で考えるだけでパソコン操作できたら、この時間に仕事も進められるのに」と考え、即座に「ちょっとそれはワーカホリックの思考回路すぎないか?」と思い、その考えを振り払った。

インターネットの発達により必要な情報を引き出せる速度が圧倒的に速くなり、Eメールや無料ビデオ電話、チャットアプリがコミュニケーションの速度と距離をぐっと縮めた。そしてそれらのツールが生活をうんと便利にしたが故に、たとえば1日でこなすべき(だと要求される)仕事の量が昔(ネット以前の時代)より増えたのではないか?と思うことがある。なので、便利になりすぎた時代というのが果たしてユートピアなのか、それともひょっとしたらディストピアかもしれない、と時々考える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?