展覧会 #19 西川勝人 静寂の響き@DIC川村記念美術館
2025年1月末で休館が決まっているDIC川村記念美術館の最後となる企画展を訪れました。
※ひとつ前の記事に休館のことを書いているので気になる方はそちらもご覧ください。
今回の企画展はドイツを拠点に活動する西川勝人(1949年~)の日本初となる回顧展です。
彫刻、写真、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物、約70点が作家自身の構成によって展示されています。
西川勝人 静寂の響き
会期:2024年9月14日(土)~2025年1月26日(日)
フィザリス
フィザリス(Physalis)とはフランス語で「ほおずき」のこと。
200展示室の窓際にクリスタルガラスでできたフィザリスが5体置かれていました。花のつぼみのようにも見える捻じれのある形状。
自然光を包み込んで空間に溶け込む柔らかい雰囲気を持ちながらもガラスの重量感をしっかり感じる作品。
203展示室のインスタレーションの中にホワイトコンクリート製のフィザリスがあり、そちらはガラス作品よりも「ほおずき」の形に近いものでした。
Color as Shadow シリーズ
レーム社(ドイツ)のカラーアクリルガラス18種を重ね合わせることで別の色を生み出すシリーズ。
今回展示されている《静物》2005年、《静寂の響き》2005-06年 はそれぞれ24点組の作品。
《静物》は何色とも言い難い曖昧な色をしています。土や砂、石の色という表現が近いかも。《静寂の響き》は白と黒の2種類が一列交互に並び、縦4枚×横6枚で市松模様の配置になっています。白は強い真っ白ではなくこちらも曖昧な色合い。光と闇(影)のイメージかなと思いました。
シルク絵画
《失われた風景》1995年
ベージュ、グレー、白、ブルーの4種のシルクオーガンジーのうち3枚を重ねて異なる色を表出している作品が6点並んでいます。
解説ではモノクローム絵画とも言われていて、ペインティングではないけど絵画?と思いましたが、平面に色を重ねるという意味では絵画のカテゴリになるのでしょうか。
これもColor as Shadow シリーズと同じで何色と言うのが難しい。
美術館のニュートラルな壁色だからこそ、この繊細で微妙な色の深みを感じられるのかなと思いました。
油彩画
202展示室の《池のほとり》、《湿地帯》はタイトルが示す通り水辺の風景を描いた作品。
しっとりした水蒸気に包まれた木立とそれを映す水面、水辺の草地が微かに見えている。淡くて儚いモノクロームの風景。
インスタレーション
203展示室は《ラビリンス断片》というひとつのインスタレーション作品になっています。
天井の高い正方形の空間を高さ1mの低い壁で計9つの区画に等分し、規則正しく置かれた異なる作品をみながら空間全体を巡るように設計されています。
ちょっと照明を落としているのかなと思ったのですが、実は照明器具を使わず天井の天窓からの自然光だけというのを後で知りました。
《分水嶺》2016年(No63~72)はモノクロームの写真作品。
雲と霞に覆われたぼんやりした画面に山の稜線や水面が微かに見えたり見えなかったりする風景。展示の後半になると雲の切れ間から空が見えたり、白っぽい明るい雲が見える作品もありました。
石膏や木、ブロンズやガラスなどで作られた立体作品が各区間に2~3個ずつ置かれています。
遺跡や塔などの建築物をモチーフにした作品は、後半になるにつれて具象的な形から抽象的な形になっていきます。
動物や植物を抽象的な形で表現している作品がすごく素敵だなと思いました。
展示室中央の《秋》(No74)は白い花の花弁が一面に敷き詰められた区画。
花弁が茶色に変色しているところがあり、今の時間が流れている場所なのだと感じました。
生きている花が発する香りではなく、もっと生々しい植物の匂い。展示室に入ってから時々ふわっと感じていた匂はこれだったのだと分かりました。
区画を辿りながら一つ一つ作品を眺める、ただそれだけのシンプルな時間を過ごしたあと、気づけば心の中がしんと静まっていました。
最後の企画展は心に残る素敵な展示でした。またいつの日か、この美術館でしかできない素晴らしい企画展がみられることを期待しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?