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人生に必要なことは、みんな近所の模型屋のおっさんに学んだ

親友から教えてもらった清水模型店の話を、なぜかふと思い出した。この話、以前本(『企画心』)に書いたけど、あらためて紹介するね。

清水模型店は、「模型店」とはいうものの、プラモデルだけを売っているのではない。近所の子どもたちの遊び全般を引き受ける意志があった。覚悟、と言ってもいい。だから凧、週刊マンガ雑誌、野球ボール、バットも置いていた。

プラモデルで「サブマリン707」や「サンダーバード」が人気だとする。それらのマンガが掲載されている雑誌のバックナンバーも、置く。今でこそこういうメディアをクロスさせた売り方は「クロスセリング」として当たり前だが、昭和40年代の当時は珍しかった。清水のおっさん、革新的なのだ。

清水のおっさんの企画力その1:子どもの遊び全般を引き受ける

元旦から営業した。いまでこそ、コンビニやデパートが元旦から営業、というのは当たり前だが、昭和40年代当時はどこもやってなかった。子どもたちのお年玉がまだホカホカしてる元旦に店を開けない理由がない。そのまま清水のおっさんのもとに流れ込む。ちなみに営業時間は平日午後3時から9時まで。土曜は正午から9時。日曜は午前8時から夜9時まで。おっさんの意図、わかるよね?

清水のおっさんの企画力その2:営業時間を差異化する

清水のおっさんはいつも何かを企画する。企画することによって商品を情報化するのだ。例えば、凧は店頭に置いてあるだけでは売れるのをただ待つのみ。そこで、おっさん主催の凧揚げ大会を企画する。

企画するだけではなく、当日、大会会場(河川敷)には軍手を用意しておく。凧を揚げたことのある人ならわかると思うが、ひもが指にこすれて痛い。そこで清水のおっさんは軍手を持って会場を走り回る。飛ぶように売れる。

また、プラモデル大会を11月に開催する。優勝者発表は正月元旦。子どもが完成したプラモデルを店内に持ち込むと、おっさんはすぐ、陳列してくれる。店の玄関横の、ガラスショーケースだ。普段ならみんなの憧れ・・・たとえばGIジョーなどが輝いていて、「見上げている」スペースに自分の「作品」が並べられる。それだけで子どもたちは胸がいっぱいになり、ワクワクする。誇らしくなる。友だちに自慢したくなる。連れてくる。清水模型店の新規顧客が増える。

当然、このエリアの子どもたちはサンタさんにプラモデルをお願いする。サンタさんは清水模型店で「今年の売れ筋」について相談する。子どもの顔と名前を清水のおっさんは熟知しているので、サンタさんに的確なアドバイスをする。おかげでサンタさんは的を外さない。サンタさんにとっても、子どもたちにとっても、清水模型店はありがたい存在になる。

プラモデル大会の優勝者は、一番お金持ちの子どもを選ぶ。元旦、おっさんは優勝トロフィーを渡しながら、おもむろに講評する。

「タカシくん、いい仕上がりだね。でも、欲を言わせてもらうなら、こっちのこのラッカーを使うと、もっとよくなると思うよ」当然、タカシくんは新しいラッカーを買いこむ。

清水のおっさんの企画力その3:売れるきっかけを自分で作る

コマ、ベーゴマ、スーパーボールをおっさん自らが店先で遊ぶ。くだんの凧揚げ大会ではいち早くゲイラカイトを輸入して揚げる。子どもたちは「あれ何?!」と大注目。

ゲイラカイト


スーパーボールを高く弾ませていたら、当然、子どもたちで黒山の人だかりになる。そして、おっさんは次の一言を。

「これ、流行ってるらしいで」

清水のおっさんの企画力その4:流行を自分で作り出す

清水のおっさんの企画力、いまでもいろいろ応用できそうだよねー。

現在のスーパーボール。昭和のは真っ黒一色でした

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