アルゴリズムを超える深さ
珍しく隣に人がきた。
若い男の子、サングラス、白い歯、オーラ。間違いなく芸能人だ。
「Aですか? B?」
話しかけてくる。
窓側Aに座ってるけど、自信ない。チケットは・・・探し始めたところで「あ。ぼく8号車でした! ここ9号車ですね。失礼しました!」
立ち去ったあと、「誰だっけ。よく知ってる人・・・あ。BE:FIRSTの◯◯だ」
こういうこと、よくある。ドラッカーに道案内してもらったときも、後になって気づいた。
明日、大阪城ホールのライブに行くのでもう一度会える。
ほんの数秒しかやりとりしなかったが、深い人。
こういうとき、「そこ、ぼくの席ですけど・・・」が一般的だ。でも、「Aですか? B?」でとどめ、「お間違えじゃないですか?」を言わない。恥をかかせない配慮。
深い人と浅い人、どこで分かれるんだろう。
年齢じゃない。
コスプレイヤーが、『葬送のフリーレン』フリーレンやってインスタに挙げてる。フリーレンが跪き、両手合わせ祈るポーズ。
フリーレンはそんなポーズ取らない。
もし取るとすれば、旅を終える最終話になってようやくあるかないか。ここを理解できない浅さ。ただ顔や衣装をコピーすりゃいいってもんじゃない。浅い。
一方、miletちゃんが「フリーレン巻き」でポーズとってる。エンディングテーマ歌っているだけあり、もちろん彼女の教養の深さで、「わかってるなあ」と嬉しくなる。深い。
カイル・チャイカが『アルゴリズムの独裁』という記事を書いていて、非常に刺激的だ。
ケープタウンのカフェオーナーが、シドニーのバリスタのインスタ投稿を見て、真似する。それをブルックリンのカフェがまた真似する・・・
結果、地球上のカフェが同じになる。げんに、「デジャ・ブ」かと思うくらい、どこのカフェも似てくる。メニュー、ユニフォーム、BGM・・・
インスタのアルゴリズムが「おすすめ」してくるから、地球が均質化、同質化していくのだ。
インスタに限らない。You Tubeにせよ、Xにせよ、「おすすめ」機能は各プラットフォームのAIがアルゴリズムに従って「最適なもの」を提案する。
結果、カフェに限らず、レストラン、ワークスペース、マンション、家、車のデザイン、文具デザイン・・・・すべて同じになる。
サグラダ・ファミリア研究すればするほど、ほんもの建築の素晴らしさを感じ、周囲にあるビルのつまらないこと。
今秋オープンする予定のグラングリーン大阪。なんて美しくないんだろう。
昨日の夕景。美しいのは夕日であり、ビルではない。
ニューヨークに住む友人の悩みは大統領選2024の「選択肢の無さ」だ。
これもアルゴリズムによって生まれたのかもしれない。アルゴリズムは人間の選択肢、つまり思考をも均質化、同質化する。
2000年以降、インターネットやネットショップが生まれ、浸透してきた。
楽天、アマゾン・・・
今年までの24年間、基本、地球経済はデフレだった。
なので、特に深い考えもなく商いの腕を磨くこともせず「安いよ!!」と叫ぶだけで売れた。
ところが今年は三連休が11回もある。
三連休、テーマパークや旅行にお出かけしたい。ところがインフレで、ホテルも乗り物も軒並み高くなってる。給料は上がらない。インフレだと実質的には「賃下げ」。するとどうなるかというと、「つまらない買い物は控えよう」。
そう、「つまらない買い物」でもやってくれていたのが、これからは、買わなくなる。
げんに、「ただ安いだけ」のネットショップは売上をガクン、と落としてる。
インフレは全地球的に続く。そうすると、「ほんもの」しか売れなくなる。
商いに深さが求められる。
正確にいうと、商いをする商人に深さが求められる。
テクニックや「安いよー!」だけでは通用しない。
人としての深さ。
これがアルゴリズムを超える。
今年のテーマだね。
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