なぜ『ゴールデンカムイ』が2700万部も売れているのか
謎はこの記事の最後に明かされます。
グリーンランドで最初の雨が降ったのは、2007年冬。これで氷が溶けちゃった。
地表はすべて氷、土壌がない。氷が割れたり溶けたりすると、岩盤が表れる。つまり、植物がない。だから農耕という発想が出てこない。イヌイットは冬にアザラシを一年分獲って備蓄し、それで生きてきた。家の前に置いておけば良かったのが、温暖化で腐ってしまう。だから冷蔵庫買わないといけなくなったらしい。
いまやATMもあるし、スーパーマーケットもある。どんな小さな集落へ行ってもみんな携帯電話持ってる。子どもたちは西洋音楽をイヌイット語で歌う。デンマーク領なので、デンマークの貿易会社が資本主義的行動をとっているのだ。
デンマーク史上初めて地面が見えるようになった。するとその下に眠る鉱物資源にわんさと世界中から人が集まってくる。
「氷みたいにカネにならんもんより、資源だ。氷、もっと溶かそう」
という意見の人まで出てきたりする。
買ったばかりのこの本でこんな話読み、そして映画行った。
『ゴールデンカムイ』。
痛快。面白い。この面白さはどこから来るか。狩猟と編集。
狩猟というのは、動物の軌跡を追いかけ、森や雪景色という自然の統一体の中に断片を見つける技術。断片は言い換えると「不調和」。統一しているべきが不調和見せている。ということは、本来そこにあるべきではないものがいる、あるいは、そこにあるべきものがいない、ということ。このアルゴリズムがアイヌのアシㇼパ脳内にある。北海道の大自然においては、アシㇼパの脳内アルゴリズムに勝てる者はいない。
「クマの穴、つららが下がっていて、生臭いにおいがしたら、中にクマがいる証拠」
「冬眠から覚めたばかりのクマは胃が縮んでいるから、人を襲わない。襲っても食わない」
『ゴールデンカムイ』の面白さは、「埋蔵金がどこに隠されているか」という謎解きの面白さであり、つまり、狩猟なのだ。
遠い縄文の祖先が持っていた「狩猟」の記憶がまだぼくたちのDNA(Y染色体)内にある。
それが呼び覚まされる。
イヌイット・アイヌ・縄文
は通じる。狩猟がメインというライフスタイルが。
『ゴールデンカムイ』登場人物たちはデジタルなアルゴリズムではなく、人間脳内のアルゴリズムで戦う。簡単にいうと「知恵比べ」なのだが、ここにアナログな肉体のぶつかりあいの戦いが加わる。そこが痛快に面白い。
知恵比べの好敵手・鶴見中尉が日露戦争で前頭部を損傷、プロテクターをしているのが示唆的だ。
そして、編集。断片的にあるヒントが編まれた時、「ああ。なるほどー」と納得できる。編み物の面白さ。一本の毛糸が編み物となって絵を見せてくれる。
推理小説にせよ、宝探しにせよ、面白いのは、謎を追い求めるプロセスと、最後の伏線回収だ。これ、狩猟と編集。
商いが面白いのは、狩猟の血が騒ぐんだろうね。
ゲームにしても、ヒットするのは「追う」ストーリー。
古くはスーパーマリオブラザーズ。ただ単にコインをチャリーンチャリーンと集めて、画面向かって右へ進むだけなんだけど、あれは狩猟なんだよね。
冒頭に触れた「謎」というのは、
なぜ『ゴールデンカムイ』が2700万部も売れているのか
なぜゲームが面白いのか
なぜ商売が面白いのか
すべてぼくたちの中に縄文DNA「狩猟と編集」があるから、です。
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