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サカモトくん、通訳して。

ニューヨークに住み始めた頃、信号待ちしていて、横にある公衆電話(当時はケータイが一般的ではなかったし、Uber Eatsのサービスが生まれるのはそれから14年後だ)で女性が「Can I place an order?・・・」と話しているのを耳にした。真横なので、自然と耳に入る。どうやら飲茶の出前のようだ。これで「出前の電話の話し始めは"Can I place an order?"」と覚えた。つい「出前お願いしますを英語にすると」と発想してしまうが、生きた生活英語だとそうではないことを学んだ。

会社員時代1991年、自営業の義父の代打で、研修旅行に参加した。ヤマト運輸と取引ある代理店の旅行で、それまで一度シンガポールに参加していた。今回はアメリカ西海岸ロサンゼルス、ラスベガス、パーム・スプリングス。

「代わりに参加して」と言われたので、旅費出してくれるのかと思ったら、シンガポール同様、自腹だった。サラリーマンとしては痛いが、勉強代と思ってた。アメリカ本土に渡るのは初めて。

参加者は皆、自営業社長ばかり。シンガポールで顔なじみになっていたし、ぼくが最年少なので、いろいろ頼まれごとをした。一番多いのが「通訳」。

ホテルの磁気式カードキィが動かん。サカモトくん、通訳して。
This key doesn't work.

カードキィを水着ポケットに入れたまま泳いで、気づいたら、無い。たぶんプールの底に沈んでいると思う・・・サカモトくん、通訳して。

I lost my room key in the pool. Could you please reissue my hotel room key?

タバコを部屋に忘れてきた。いま部屋は掃除中やと思う。取りに行っていいか? を
I forgot my タバコ
言うたら、その時点でわからん顔された。サカモトくん、通訳して。

I left my cigarettes in the room. I believe the room is being cleaned right now. May I go to retrieve them?

ここのポイントはleft。「忘れてきた」という日本語をそのままforgotとすると、相手は意味がわからなくなる。タバコはtobaccoで意味が通じるけれど、こういうケースではcigarettesとした方が一本ではなく箱のイメージが伝わる。

このように、鍵は動詞であり、たいていは中学校で学ぶ単語で十分。

風邪ひいた。

I caught a cold.

自営業のおっちゃんたちとのアメリカ旅行で、かなり鍛えられた。そして、自分が本でしか勉強していなかった英語が話しても通じることに自信がついた。この9年後、ニューヨークへ渡り、独立する伏線になっていたなあ。

NYにて。2000年。時刻は夜の9時ごろだけど、明るかった

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