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Vol.20「『時間によって生じる変化』へのキヅキは動画ならでは」京大総合博物館准教授・塩瀬隆之さんのワークショップレポート

一雨ごとに寒さが増し、いよいよ冬の気配が濃厚になってきましたが、みなさんいかがお過ごしですか? キヅキランドもオープンしてから半年以上がたち、ワークショップにもたくさんのこどもたちに参加いただいています。オンラインで開催しているワークショップでは毎回、キヅキセンパイと一緒にこどもたちは「おや?」「あれ!」とそれぞれのキヅキを発見していますが、いつもこどもたちの独自の視点やユニークな発想には驚かされます。
さて、11月19日(土)に開催したワークショップでは、キヅキセンパイに京都大学総合博物館准教授の塩瀬隆之さんに登場いただきました。今回は進行の科学コミュニケーター・本田隆行さんと「ダブルたかゆき」でお届けというわけで、塩瀬先生はキヅキランドでのお名前を「もうひとりのたかゆき」として、どしどし書きこみをしていただきながらのワークショップとなりました。

今回取り上げたムービーの一つが、「目玉焼きの実況中継」です。これは目玉焼きを焼くフライパンの中の様子を真上や横、至近距離や斜めなど4つの視点から観察するものです。おうちでも目玉焼きを作る様子をみたことはあるかもしれませんが、改めてじっくり観察してみると、いろいろな「!」や「?」がありました。
塩瀬先生がまず「そこか!」と取り上げたキヅキがこちら。

「5本」

置いてあるフライ返しの「すきま」の数です。
「まだ卵も出てきてない一番最初にここに気づいた!」(本田さん)
「ムービーを見はじめてまず最初にそこに目がいったわけだよね(笑)。いいな、と思いました」(塩瀬先生)
また、卵が焼ける様子を見たりその音を聞いたりして、擬音語や擬態語を書きこむこどもたちも。

「ぶくぶく」
「ぱちぱち」

こんなふうに、初めはパッと目についたものや聞こえた音などをキヅキとして書きこんでいたこどもたちは、次第に卵の変化に注目するようになっていきます。そういっただれかが見つけた変化のキヅキに、みんながそれぞれ意見や感想を重ねていきました。

「きみの色がうすくなった」「つぶせばあかい」
「なぜはじだけこげる?」「まわりがうすいから?」
「のこってる」「たしかにもったいない」「くっついてる」「どうすればとれるか」

そんな中、「お、すごいむずかしいことを書いている! これは科学コミュニケーターの本田さんに意見を聞かねば」と塩瀬先生がピックアップしたのがこちら。

「えきたいなのになんで固体になるのか?」

「うーん、そもそも卵は液体なのでしょうか?」(本田さん)
「おっと、さらに問いが!」(塩瀬先生)
「卵って手でつかめるようなのもあるでしょう?」(本田さん)
「そうね、粘性が高いね。となるとジェル状じゃない? 半液体」(塩瀬先生)
「さてみなさん、液体と固体の境目はどこでしょうね?」(本田さん)
と塩瀬先生と本田さんが話している間に、「えきたいなのになんで固体になるのか」のキヅキには、たくさんの考えが集まりました。

「ふっとうして水分がじょうはつするから?」「でもぐつぐつしてない」「たしかにぐつぐつしてない」「わからない!」「タンパクシツがかたまるから」「ねつたいりゅう?」

「目玉焼きの動画で面白かったのは、動画ならではの『時間によって生じる変化』へのキヅキがあったことですね。その『白くなった』という誰かのキヅキを受けて、他のこどもたちも時間軸の変化を捉えたキヅキが増えていったのが興味深かったですね」(塩瀬先生)

今回はこの「目玉焼きの実況中継」のほか、大きな交差点の様子を高いところから捉えた「とある交差点」にもチャレンジ。広い視界の中で動くもの(人や電車、車)に着目したりまた看板に描かれていることにキヅキを見つけたり、また道路に書かれた横断歩道が作り出す形に気づいたり、写っているものの数だけ、多種多様なキヅキが集まりました。

(看板に書かれている)「もんじゃ」
(屋根ごしにわずかに見える駅のホームにいる)「人たち」
(スクランブル交差点の歩道で囲まれたエリア)「さんかく」

あっという間の60分がすぎ、延長戦(30分)も開催。こどもたちのほとんどは延長戦にも参加し、それぞれの目で見つけたキヅキがどしどし集まりました。
「今日はみんなに負けないように『もうひとりのたかゆき』でキヅキをどんどん書いていこうと思っていたのに、みんなの勢いがすごくてぜんぜん勝てませんでした!」
と塩瀬先生が半ば本気!?で悔しがるほど。

「でも、キヅキセンパイが率先してキヅキを書きこむ姿を見せてくれたおかげなのか、今日はしっかりと自分が感じたこと、自分が見つけたことを『キヅキ』として書きこんだ人が多かったような気がします」(本田さん)
「そうですね。期待していた以上に、みんな個々にバラバラで多様なキヅキを書きこんでくれました。そしてキヅキを重ねることで、『他の人の視点で他も見てみよう』というふうに視点の共有がはかられて、たとえば『焦げた』という誰かのキヅキをきっかけにたまごの変色に着目したキヅキが増えていったのは興味深かったですね」(塩瀬先生)

ワークショップのたびに、毎回全く違うキヅキのふくらみかたをするのが本当に面白いところ。今回は「目玉焼きの実況中継」にじっくり向き合って、「時間による変化を観察する」という視点でのキヅキが多く集まったのが印象的でした。ぜひ日常の中でも時間軸の変化の中に疑問や驚きを発見して、「どうしてだろう?」「こういうことかな?」とキヅキをふくらませてほしいなと思います。
塩瀬先生、本田さんありがとうございました! そして参加してくれたこどもたちもどうもありがとうございました!


次回のワークショップは1月に開催予定です。詳細が決まり次第お知らせしますので、ぜひ、キヅキランド公式TwitterPeatixをフォローしてください!
なお、当日のワークショップの様子はこちらでご覧いただけます!


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