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我が愛しの変人よ

芸人を職業として選んだ自分は変な人間なのか。そう思うことがあるのだが、この世界に入ってから本当に変な芸人さんは少数で、あとはいたって常識人が多いことに気づく。

芸人以外の人の方がよっぽど変な人が多いなと思う。


僕の身近な変な人、それは弟だ。


年は3個下。僕が結婚する1年前に結婚をし、現在鳥取で整骨院を営んでいる。

小さいときから長男の僕と次男の彼は、性格が正反対だった。人見知りで泣き虫だった僕とは似ても似つかず、彼はガキ大将でクラスの中心だった。

夜に親が揃って家を出て行くときは決まって、「あ、あいつなんかまたやらかしたな」と兄として頭を抱える毎日だった。

兄弟けんかをすることもあった。兄弟にとっての歳の差3つは圧倒的な差のように感じるが、けんかの終わりはたいてい僕がトイレで泣き喚くのが終了ゴングとなっていた。

僕が高校を卒業し、彼が中学を卒業したころ、僕は初めてアルバイトを始めた。地元にある24時間営業ではないコンビニ。有名ではない個人経営のコンビニ。面接に行き採用され、家に帰り母に報告すると非常に驚いていた。

「え、面接受かったの?!」

そんなに驚くことか?僕は不思議に思ったが、理由を聞いて納得した。

どうやらその個人経営しているご夫婦の息子さんが弟と同級生で、弟が1度けんかをし、息子さんのお尻を蹴り、尾てい骨を骨折させていたのだ。

そして両親がそのコンビニまで行き、謝罪に訪れていたらしい。

「あ、あいつまたなんかやったな」の日だ。

確かに母のファーストリアクションは「よく受かったな」で間違いない。


弟はガキ大将でやんちゃだったが、変なやつではなかった。


しかし、大人になるにつれ、こいつは変なやつだと思うことが増えていった。

変であることは雰囲気だったり、言動でわかったりすることだが、言葉で証明するのは難しい。

まず彼は整骨院を開業することになったのだが、生まれ育った関西ではなく、なんのゆかりもなかった鳥取で開業することにした。

鳥取を選んだ理由を聞いたのだが、整骨院が最も少ないという理由だけらしい。県民も最も少ないからいっしょではないか?

それにその理由だけで土地勘もない鳥取に飛び込む思いっきりが、僕には考えられない。

そしてもう一つ、弟はなぜか綺麗なおかっぱ頭をしている。その髪型にした理由は全くないらしい。家族にその髪型への賛同者は1人もいなかった。

しかし、木﨑家もさすがに彼の結婚式には、一世一代の晴れ舞台、髪型を変えてくるだろうと予想していたが、当日、より綺麗なおかっぱ頭になって教会内に入ってきた。

結婚式もこの髪型なのか。。

おかげでその日撮った僕と彼のツーショットをSNSに載せると、弟の方が芸人ぽいと盛り上がってしまった。

現在も鳥取で奥さんとともに整骨院を営んでいる。もしお近くの方は行ってみてほしい。

なぜかボルダリングにハマり、ムキムキになったおかっぱ頭が整体してくれるであろう。

きっとこのコロナの状況下で先行き不安だろうから、宣伝をしようとしたのだが、整骨院の名前を知らないことに今気づいた。

変だ変だと書いて、宣伝もしない。

兄失格である。




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