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日本で防弾チョッキもボディガードもつけずに出歩きました

日本では「進撃の巨人」という漫画が流行しているそうです。この漫画の中では、人間を襲う謎の巨人たちに人類は追い込まれ、生き残った一部の人間たちが高い壁に囲まれた街の中で生活しています。

これは漫画の中の設定ですが、私は今イラクの首都バグダードでこれと似たような生活を送っています。私が暮らす約10平方kmの安全地帯、通称「グリーンゾーン」は、全体をT-ウォールと呼ばれる高さ5mほどのコンクリートの壁で囲まれています(トップ写真参照)。

壁の外はレッドゾーンと呼ばれ、そこでは巨人たちが常に住民の命を脅かしています。この巨人たちはよく欧米のメディアで「テロリスト」や「謎の武装集団」という表現で報道されます。

2005年から2007年にかけては極めて治安が悪かったイラクですが、2008年頃から徐々に治安の回復を見せていました。しかし、今年に入ってからまた急激に悪化し、最近では毎月1,000名ほどの住民が自爆テロや銃器を利用した襲撃により命を失っています。

グリーンゾーン内であっても油断は出来ないため、業務上の理由以外での外出は禁止されています。私が勤めるJICAイラク事務所には寝室や食堂等が併設されており、これが私の生活圏全てです。ちなみに事務所もまたT-ウォールで包囲されています。

イラク政府との会議などでレッドゾーンに出る時は、私もスーツの上に防弾チョッキを着用し、数名のボディガードと共に防弾車で移動します。

先日、日本に一時帰国しました。日本では防弾チョッキを着ることなく、またボディガードに見張られることもなく、自由に街を出歩けます。あまりに当たり前のことなのですが、間抜けな自分はイラクに来るまで、それが当たり前になっている事の素晴しさに気付きませんでした。

日常の一つ一つに感謝をしながら生活できれば幸せなのでしょうが、それが当たり前になっていると難しいですね。

真鍋希代嗣(イラク在住)

※この文章はワシントンDC開発フォーラムに2013年11月に寄稿したエッセイ「日常」を転記したものです

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