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人の心を動かす広告コピーのエッセンス

広告のコピーと言われて何か思い浮かべるものはありますか?
ないですかね。笑
JR東海の『そうだ 京都、行こう。』とかは有名かもしれません。

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広告会社のコピーライターは、こういうコピー、文章を書くことでお金をもらっている訳です。つまり、それだけ広告コミュニケーションにおいてコピーが持つ役割は大きい。
「いや、俺でも書けそうだな」と思う方いると思います。僕もそうでした。書けません。笑

今回は自分が、いいな、これは人の心を動かすなと思ったコピーと、なぜすごいのかどこがすごいと思うのかを書きます。
※あんまり詩的なコピーではなく、実際にブランドの成長に効きそうだなと思ったコピーが自分は好みです。


〈ゼクシィ〉
結婚しなくても幸せになれるこの時代に
私は、あなたと結婚したいのです。

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坂本美慧さんは、このコピーでTCC最高新人賞を受賞されたこともあり、有名なコピー。
ゼクシィは結婚情報誌を含め、ウェディングを応援するサービスなので、言うまでもないですが、結婚を考える人が増えると売上も伸びる。
広告会社へのオリエンは、「ふだん結婚を意識していない人にも、結婚したいと思えるCMを。」だったそうです。

『結婚しなくても幸せになれるこの時代に 私は、あなたと結婚したいのです。』というコピー。
①懐を見せることにより共感を産む
②結婚したい気持ちを逆説的に強く見せる

点が巧みだなあと思います。

①懐を見せることにより共感を産む
結婚しなくても幸せになれるこの時代に、ってゼクシィが言っちゃう懐の深さがいい。
想像に難くないと思いますが、これまでのゼクシィの広告は、結婚した人のベタベタな幸せの様子を描くのが基本。でも、結婚ってこんなに幸せなんだぞーって真正面から広告すると引かれてしまう。いや、別に興味ねーしと。
そこで、ゼクシィ側が「正直今って結婚しない人も増えてるし、結婚が幸せの必須条件でもないですよね」とぶっちゃける。懐を見せる。
これって勇気がいると思うんです。時代感として私たちアウェイですと言うようなものですし。
でも、そうすることで共感が産まれ、言いたいことを聞いてもらいやすくなっている。

②結婚したい気持ちを逆説的に強く見せる
世の中の時代感と自分の気持ちに高低差をつける。単純にあなたと結婚したいのですと言われるより、結婚しなくても幸せになれるこの時代に、って言われた方がぐっと来ますよね。
細かいところですが、「私は、」も結婚したいという気持ちをより強める表現になっていて素敵です。

業界No.1だからこそのコピーだと思います。痺れる。


〈ケンタッキーフライドチキン〉
今日、ケンタッキーにしない?

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最近ケンタッキー食べてますか?
まあクリスマス時期とかパーティーの「ハレ」の時に食べるかなぐらいですかね。旨いし好きなんだけど、食べるの気合いるし、そういえば日常で頻繁には食べないな的立ち位置。
ケンタッキーの課題はそこで、生活者との結びつきが「ハレ」、特にクリスマス一本足打法であることです。日常の食になっていない。
クリスマス以外にもケンタッキーを食べてもらうこと、それが最大の課題です。

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2018年9月ケンタッキーフライドチキン中期経営計画資料より


『今日、ケンタッキーにしない?』というコピー。
①ケンタッキーを食べる時の気持ちを捉えたユーザーワードである
②シーン展開が利く

点が巧みだなあと思います。

①ケンタッキーを食べる時の気持ちを捉えたユーザーワードである
例えば、友達と複数人でいる時に「昼何食べる?」となったシーンを想像してください。こういう時って、誰かが「〇〇にしない?」と引っ張らないとグダりますよね。
ケンタッキーはさらにそうで、まだ日常の食に浸透していないので、グループの誰かに「ケンタッキーにしない?」と提案してもらわないといけない。
「え。マジ?ケンタッキーにすんの?」と言われる不安はありますが、コピーとして生活者の頭に刷り込んでしまえば、『今日、ケンタッキーにしない?』とグループで提案するのも少しハードルが下がる。
ブランドから生活者への提案であると同時に、生活者から生活者への提案の言葉としてそのまま使えるものになっているのです。

②シーン展開が利く
このコピーはCMの展開にも効いてきます。日常食へという戦略のもと、こんな時にケンタッキーどう?というシーンを多数CMで提示し、生活者とケンタッキーの接点作りをしています。

例えば、スポーツ観戦の時に

その他にも、お盆やホームパーティー、もちろんクリスマスの時にも。

スポーツ観戦×今日、ケンタッキーにしない?
お盆×今日、ケンタッキーにしない?
ホームパーティー×今日、ケンタッキーにしない?
クリスマス×今日、ケンタッキーにしない?

というようにシーン展開が利くコピーなのです。
こんだけ色んなCM打てるのも流石お金があるなあと思います。笑

『今日、ケンタッキーにしない?』が手書き風になっているのもいいですよね。ブランドの押しつけがましい感じが薄く、生の言葉感がでます。


実際『今日、ケンタッキーにしない?』を軸とした、日常浸透戦略により、ケンタッキーの業績は、9四半期連続の売上増加、2020年度の営業利益も25%増の予想となっています。すごい。


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紹介したいコピーはたくさんあるのですが、長くなったのでここまで。
天才技のように見えるコピーの仕事も、こうやってエッセンスを整理してみるとヒントが得られるかもしれません。

冒頭の『そうだ 京都、行こう。』は京都に行こうかなと思い立つ時のユーザーワード(ケンタッキーと同様行動喚起型)ですし、
最近話題になった、ピノのコピーも懐を見せることにより共感を産むの技法です。

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おしまい。


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