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【連載】 第2回 プロから学ぶ◯◯

オープンしたはいいものの

2019年10月にリニューアルオープンした喜代多旅館。同時期にリノベーション関係者などを招いてのレセプションパーティ、そして一般・報道関係者向けの内覧会での反響もあり、オープン直後、我々の心は希望で満ちていました。

その希望を燃料にし、慣れないエクスペディアやブッキングドットコムなどのオンライン予約サイト(業界用語でOTA・Online Travel Agentと言います)の開設を、怒涛の勢いで果たしました。あとはお客様を待つだけ。しかし、待てども待てども、思い描いていたような数の予約は入ってきません。次第に希望は、焦りに変わっていきました。

旅 = 出会い = 人生?

突然個人的な話になりますが、昔から旅が好きで、学生時代は国内、社会人になってからは海外も含め、気ままな旅を楽しんできました。こう書くとスーパーアクティブ人間に聞こえるかも知れませんが、実際はそうでもありません。

旅先では社交性のスイッチを割と切ってしまうので、出会った人と積極的に交流することもなければ、貪欲にその土地の食を味わうことも、有名な観光地に必ず足を運ぶということもしません。ベネチアに行って、丸一日をゲストハウスの二段ベッドで過ごしたこともあります。

そんな内向型(?)な旅をしている私でも、旅は出会いだと感じています。風景、そこで感じた匂い、土地の雰囲気、人。旅は出会いで構成されています。

「人生は旅である」そんな風によく言われますが、人生も旅であるならば、自らの人生をもう少しひいて見ることができるようになった時、通常の旅の出会いと同じように、出会った人や経験を思うことができるのかなと最近ぼんやりと思うようになりました。

前置きが長くなりましたが、そんな「出会い」が予約が思うように入らず、焦り始めた我々に訪れました。オープンから1ヶ月ほどがたった頃のことでした。

プロデューサーって何をする人?

待てども待てども予約が入らないことに焦っていた我々。とはいえ、本当にただ待っていたわけではありません。

知り合いに割引価格で泊まってもらい、その口コミをきっかけにお客さんが繋がっていくような試みをしたり、観光案内所にチラシを置かせてもらえるようお願いに行くなど、我々なりに行動はしていました。

こうした行為が無意味だったとは思いません。しかし、思うように次のお客様に繋がっていくことはありませんでした。このままでは、お客さんは永遠にやってこない。けれど、ほかにどんな方法があるのか。そんな状態の我々に、ある人物から連絡が入りました。まるで図ったようなタイミングでした。

連絡をくれたのは明石博之(アカシヒロユキ)さん。明石さんは4年以上に渡った喜代多旅館リニューアルプロジェクトで、総合プロデューサーを担った方です。富山を中心に、まちづくりや場づくりを手がけているグリーンノートレーベル株式会社という組織の代表も務められています。

明石さんは、実践的に自らも場をつくることもなさっていて、富山の射水(いみず)市に、サンドイッチやコーヒーを中心に提供する<cafe uchikawa 六角堂>を運営されています。カフェのある内川というエリアは「日本のベネチア」と呼ばれるほど風情のある港町です。

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写真:「日本のベネチア」と言われる富山県射水市の内川エリア

私もカフェには数回お邪魔したことがあり、その時はコーヒーやテイクアウトでサンドイッチをいただきました。食べると素材にこだわって作っていることが感じられ、ボリュームも十分です。(お店に寄ったら、必ずお手洗いによることをお勧めします。驚きます。)

そんなカフェを手がける実践的なプロデューサー・明石さん。ただ馴染みのない人にとっては「プロデューサー」は何をする人なのか、イメージしにくいのではと思います。実際私も社会人になって数年は、わかっていませんでした。

前回の記事で書いたように、私は2019年のリニューアルオープン時から喜代多旅館で働き始めた人間です。喜代多旅館に来るまで私がいた業界では、プロデューサーという肩書きの人間があちこちに存在していました。

「プロデューサーは何をする人か」という問いに対して、あくまで一つの業種を経験した私個人の認識ですが、プロデューサーは組織間の交渉ごとや、プロジェクト費用の管理、人員の確保、あとは最終的にそのプロジェクトを完成させ、クライアントに納品する納品責任が大きな役割です。

とはいえプロデューサーごとにその仕事範囲や、仕事のやり方などは本当に千差万別です。いろいろ気にかけて動いてくれるタイプもいれば、必要最低限しか関与しないタイプなど様々でそれぞれに良さがあります。

「プロデューサーとはなんぞや」という持論を展開しましたが、納品責任を担っている以上、彼らはそのプロジェクトをまとめて完成させる必要があります。そしてこのまとめるという作業や役割は、当然ですが関わる人や組織の数が多いほど難しくなっていきます。

経営者と社員を合わせて4名ほどの当館でさえ、プロジェクトをまとめて進めるという作業に、時には頭を抱えることもあります。当館リニューアルプロジェクトにいったい何名の方が関わってくださったのでしょうか。それを思うたびに、明石プロデューサーが、当館リニューアルプロジェクトにおいて果たした仕事の大きさを、実感する今日この頃です。


足を向けて眠れない存在が、また一人

突然ですが、プレスリリースを書いた経験がある方って、どのくらいいるのでしょうか?私は喜代多旅館にくるまで、一切書いたことがありませんした。

ちなみに、プレスリリースとは<報道関係者向けの公式発表>のこと。もっと簡単にいうと、自分の会社・組織が何か新しい取り組みをはじめた時に、それを報道機関に知らせるためにまとめた資料がプレスリリースです。その目的は主にプレスリリースを発信して、メディアで取り上げてもらうことで、自分の会社や新しい取り組みの認知度をあげる、ということです。

学べば学ぶほどプレスリリースを作って発信することは、社外的にはもちろん社内的にも重要であることがわかります。ただ、再スタートを切った喜代多旅館には、プレスリリースのノウハウを持った人材はおらず、その重要性に気づくこともできていませんでした。

当館プロデューサーである明石博之さんが、誰を連れてやってきたというところに話を戻します。

明石さんから紹介されたのは、坂本正敬(サカモトマサヨシ)さんという人物でした。坂本さんは富山県在住の翻訳家でありライター。多くの媒体で記事執筆をしている言葉を扱うプロフェッショナルです。2020年に「何万回クリックされるかよりも、地元の会員さんにどれだけ愛されるか」というモットーの元に創設された北陸発のウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長でもあります。

<HOKUROKUで個人的に印象に残っている記事>
「買い」の古民家。「買ってはいけない」古民家。
記者と編集者に学ぶ。発信力を育てるための「聞いてメモする」技術。

おそらく、喜代多旅館という場所や存在を面白がっていただけたからと思いますが、いつの間にか、我々は言葉を扱うプロである坂本さんから、プレスリリースのイロハを教えてもらえることになっていました。

彼がプロである以上、こうしたノウハウの伝授に対して対価は発生すべきだと私は考えます。しかし、坂本さんから「今回は手弁当でやらせていただきます!」とのお言葉を頂戴した我々は、有難くそのお言葉に甘えることにさせていただく事になりました。

ライターである坂本さんにとって、取材先となりうる我々とこうした繋がりをつくっておくことは損にはならないはずです。しかしながら、人に何かを教える・伝えるという労は大変で、めんどくさいものです。それも初心者に教えるわけなので、まずは基本から覚えてもらう必要があります。プレスリリース(おそらく最初の方はプレスリリースのようなもの)を書いては、坂本さんに送る。そしてそれが「こうするともっとよくなる」という、明確で建設的な言葉で添削され戻ってくる。そんなやり取りをかなりの回数重ねましたが、坂本さんからの添削のメールの熱量は、最後まで変わる事が有りませんでした。

こうした影の支えがあり、喜代多旅館はプレスリリースという手段を一つ手に入れ、組織として一歩前進していったのです。

<ちなみに、坂本さんが当館について書いてくださった記事はこちら↓>
富山〈喜代多旅館〉元県庁職員の3代目おかみが生家の老舗宿をフルリノベ!

そういえば、今、平日<8、700円税込>で泊まれます。

※※※※※※※※※※※2021年2月6日追記※※※※※※※※※※※※
緊急事態宣言の延長に伴い、3月7日分まで新規のご予約の受付を停止しております。
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プレスリリースにまつわるノウハウを、プロから伝授してもらった我々。しかしながら、今、すべてにおいてそれを実践できているかと言うと、できていません。

そのせいで、割引率の高い商品を売り出しても、誰にも知られずに終了していくと言う事が多々発生しています。

<知ってもらうこと>の重要性を、組織内部に浸透させることも課題の一つですが、まずはできることから、と言うことでこの場で『今、一番お得な商品』をご紹介させていただきます。

平日 8、700円(税込)で泊まれます

当館は、通常最低でも一泊16、400円(税込)のところ、3月31日まで、平日は半額にしています。(2021/1/22時点で上記サイトからのご予約のみです)

我々としては、一人旅のお客様にも、もっとご利用いただきたいと考えています。ただ現状の価格(一泊16、400円)だと、市内ビジネスホテルなどと比較した場合、一人旅のお客様にとっては割高です。コロナ禍以前は、私自身、もっぱら一人であちこち行っていたので、その感覚はよくわかっているつもりです。

そんな『喜代多旅館、気になっているけど、一人一泊1万6千円は考えるな・・・』と言う一人旅派のお客様に向けてこちらの割引プランをつくりました。

ただいま、絶対とは言い切ることはできませんが、平日は高確率で貸切状態となります。よって・・・

大浴場も独り占め。

2階_大浴場

お風呂上がりは、肌触りのいい久留米絣の浴衣に着替える。(寒い時期はベストも備え付けでご用意しています)

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そして買ってきた材料で、キッチンで自炊とか。(ご飯も炊けます

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(徒歩5分ほどの場所に、地元の野菜などを扱うお店有り。地場もんや

そして、ラウンジでご飯。

2021-01-07 15.16のイメージ


こんな羽を伸ばし放題な使い方が、できてしまいます。

今、遠方から、県をまたいでの移動などはできる限りちょっと我慢しましょう、と言う時期なので、そのあたり何も考えずにきてください、とは言いません。

とはいえ、「コロナだから仕方がない」と言って考えることをストップせずに、今できることを積み重ねて、少しずつでも前に進むため、この商品の紹介をさせていただきました。

次回から、土曜の夜更新になります。

こちらの連載、今まで金曜日更新を予定していましたが、どうやら休日の夜の方が人目に触れる機会が多そうだということで、次回から土曜日夜の更新となります。ご承知おきください。

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今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました。


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休んでかれ。