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【エッセイ】漂う画材

画材販売の実店舗は着々と減っている。

少し前に出かけた名古屋の画材専門店では売場が縮小し、文具店と大差なかった。画材店とうたっているものの、行ってみればアクリル絵具と水彩絵具だけでしたというパターンもある。

田舎で日本画画材を手に入れるのはとても大変だ。

そのため、メルカリにはかなり助けられている。
個人で岩絵具や「日本画画材まとめ売り」を販売している人が意外と多くいるのだ。書道店を閉店するので、とか、おじいちゃんが使ってたものなので詳細はわかりませんなど、さまざまな事情で店頭価格より気持ち安めに出品されている。同じ出品者の他の出品物を見ると、総合的に「なんとなくこういう人なのかなあ」と想像できる面白さもある。

「日本画 画材 まとめ売り」

出品者本人が使用したと思われる画像と説明文に、想いを馳せずにいられない。

かつて夢を追い求め別の道を選んだのか、別の創作を選んだのか。

わたしの通っていた美大では、卒業したら描かないよ、と明るく話す同級生もいた。わたし自身も描かない・描けない時期があったし、何度も描くことが嫌になった。破った絵も、完成できなかった絵もたくさんある。

その苦しさとやりきれなさを越え、やめる決断を受けた画材たちが、夜な夜なフリーマーケットに出没する。

漂う画材を眺めれば、自分のアナザー・ストーリーが展開されている。
それは少し怖くもあり、掬いたくもある。

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