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穴があったら。

「穴があったら」と言われたら、「入りたい」と答える。
国語のテスト的には良い回答だ。
「穴があったら」「埋めたい」。
気持ちはわかる。危ないしね。

今日は、「穴があったら」「空いたまま」という話をします。

変わる時には「穴」がいる

私は普段、キャリアコンサルタントとして仕事をしている。
主にキャリア発達や人材育成に関することが専門で、企業へ出向いて「キャリア研修」とか「女性向け研修」とか「昇進昇格時/次世代リーダー向け研修」「部下育成研修」「メンタルマネジメント(ヘルス)」研修をしたり、一対一のコンサルティングをしたりしている。

まあ、手段はどうあれ、根底にある関心事は、「人の可能性を最大限に開くには?」である。で、大人がいかに発達するのか、いかに学習するのか、という領域(知性発達科学とか、成人発達理論とか言われたりする)を学んだりするのだけれど、それは基本的に「性別問わず、人間共通」の話である。

私が現場でいろいろと思うのは、「人間共通、もあるけれど、社会という環境の影響を受ける中で、そして時代(世代)という時間軸の影響を受ける中で『女性特有の発達』という観点があり得るし、それを扱わないと現実と合わない」ということだった。
ちょうど森さん発言があった時に、某企業で女性活躍推進がらみの研修をしたのだけれど、オンライン研修だったにも関わらず、わざわざ私がいる(隔離された)会議室まで出向いてきた受講者が、いろいろな思いを吐露してくれたことも私の中では記憶に新しい。
(細かいことは言えないが、男性優位の業界で、まだまだいろんな面で実態が伴わないなど、個人の問題だと片づけられない話だった。私はずっと、こういう話を企業で働く女性たちから聴いている。そして念のため付け足すなら、このことについて、「企業の体制が問題だ」と言いたいのではない

とまあ、そんな日々の中で、女性特有の発達・成熟を扱う知見を見つけたので、これまでの蓄積と合わせて女性たちにシェアしたいと思い、先日セミナーを開いた。

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今日のテーマは「女性の云々」じゃないので、細かい中身は紹介しないとして………。(ごめんなさい、ただのフリでした。笑)

その中から今日話したいことは、「穴」の話。
セミナー中、共感コメントが多かったことのひとつだったのと、これは男女限らず普遍的なことだと思うから。

ところで、「穴」ってなんなんだ、といえば、「心に空いた穴」である。

人が内面の変容をしていく時、痛みを伴う生まれ変わりの時期がある。
その長さは、人によってさまざまだ。
闇夜のように先の見えない、ぽっかりと空虚な、心に穴が空いたような時期がある。
そして、その「穴」は、「慌てて埋めてはならない」というのが、大切なポイントなのだ。
穴が空いたとしても、ジタバタせず、早急に何かを詰め込もうとせず、「穴は空けっぱなしたままで、癒さなくてはならない」のだ。

この話をしたら、セミナー参加者の皆さんから「うわあ~…」「空けっぱなしか……」「ふさぎたい」「すぐ埋めたくなる…」というチャットコメントの嵐だった。

そう。穴は、入りたかったり、埋めたかったりするのだ。
でもそれでは、過去の再生産をするばかりだ。
空いたら空いたまま、そこに留まらねばならないのだ。

「手放したら入ってくる」と言うけれど。

こんな決まり文句をよく聞きませんか?
「手放せ」って。そして、「手放せば、入ってくる」って。

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私は、「手放せば入ってくる」とは、思っておりません。
これは、実体験があるから。
なんてったって、手放して「約2年」、何も入ってきませんでしたから……!(手放しっぱなし。笑)

変容には、手放しや、穴が必要だ。
それは、多くの研究・理論でも言われているし、何より実体験としても、そして多くの方々を支援させていただく中でも、本当にそうだ、と思う。
(まあ、本気の変容の場面では、自らの意志で手放さなくても、「ひっぺがされる」ことの方が断然!!多いです。笑)

ただし、「手放し」たら必ず「代わりの何かが入ってくる」と思ったら大間違い。
だけど、「空いたまま」にしておかないと、「次のものが入らない」のもこれ本当。

「手放せば入ってくる」を心の拠り所にして、手放すのではない。
「手放したい」から「手放す」のだし、「手放さざるを得ない」から「手放す」のだ。
「手放せば、入ってくる。だから、手放そう」は、手放した後の姿まで、自分の都合で設計している考えだ。
ただもう、これ以上、今の自分ではいられないから、先がどうなるかなどわからないけれど、手放すのみ、なのだ。
そして、穴は空けたまま、その痛みを丁寧に癒すのだ。
その後のことは、その後になれば、だんだんわかってくる。



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