素—siroが誕生しました
今日は2月末にローンチした「素—siro」について書きます。
まず、「素—siro」とはなんだ?ということを先にざっくり説明します。
素—siroとは、
料理人さんを対象にした、器のオーダーメイドブランド
です。
一言で言うと、これです。というか言ってしまうとこれが全てなのですが、その一言を今から長々と説明します。
まず、siroの特徴は大きく2つあります。
1. 料理のプロフェッショナルの方のみを対象にしていること
2. 既製品の販売はせず、オーダーメイドによる受注生産のみとすること
この2点です。
では、なぜこんなブランドをつくったのかという話から。
日常づかいの器づくり
2009年からゆるりと始めたトキノハ(当初はトキノハ陶房)のコンセプトは、「日常に寄り添う器」。
作家色の強い京都の陶芸界のなかで、「つかう」ということに焦点を当てたものづくりができないかと考えながら、僕と奥さんの2人でいろいろと模索をしながら日常に寄り添う器をつくってきました。
2015年には、そんなトキノハのコンセプトを実際に体験できる場所としてHOTOKIというお店もつくりました。
日常づかいの器というテーマは、器づくりの根源的なテーマであるはずなのに、京都ではあまり重視されていない領域です。
器=作品
という考え方が根強い京都では、ぼくたちがやっている活動というのは結構珍しがられました。
ただ、ぼくからすると、そもそも器っていうのはつかうためのものなのに、なぜそんなに作品作品というのかの方が不思議でした。京都って変だなぁとずっと思っていました。
そんなことで同業者に変な目で見られながら日常使いの器をつくっているなかで、数年前から料理人さんから器を依頼されることが少しずつ増えてきました。
きっかけ
大きなきっかけは、obaseというレストランがオープンするときに、器を何種類もオーダーしていただいたことかなと思っています。
トキノハでやっている釉薬だけでなく、もともと作家として活動していた際に使っていた釉薬なども引っ張り出してきて、obaseさんのイメージに寄り沿うように器づくりをしました。
そこから、obaseさんで器を見た、ということで別の料理人さんからオーダーが入り、それを見てまた別の料理人さんが、というようにレストランからの仕事が少しずつ増えました。
そういった仕事も、すべてトキノハの名前で受けていたのですが、「日常づかい」と「プロ向け」という異なる2種類の器づくりをトキノハという名前で並行して行っているうちに、そもそもの「日常づかい」のトキノハのテイストが少しずつ変わっていきそうになるのを感じていました。
それを良しとする考え方もあったのですが、ぼくのなかで、日常づかいとしてのトキノハの色はとても大切で、それをプロ向けの方向にシフトすることに対して少し抵抗を感じました。
そこで、トキノハはそのままに、プロ向けのブランドを別でつくろう。という考えに行き着きました。
2017年の秋頃です。
そこから、ではどんなブランドにしていこうかなと考えを巡らしせていくうちに、「オーダーメイド」に特化する。という考えに至ったのですが、その理由は、
プロのなかでも、みんな求めるものがちがう
ということに気づいたからです。
大きな部分では似ている部分があるのですが、細かいところはぜんぜん違います。
そんな料理人さんの考え方に寄り添いながら、お互いのイメージを重ね合わせながらつくるという過程はぼくにとってめちゃくちゃ楽しいアプローチです。
もともとぼくは、「これが作りたい」と自分の中から溢れ出す思いをかたちにするというタイプではなく、「相手が欲しいと思う器をつくりたい」というタイプなので、オーダーメイドという形式はぼくにとって一番合ったものづくりの形だと思っています。
ということで、「料理人さんを対象にしたオーダーメイドブランド」という基本コンセプトが決まりました。
ちなみに、オーダーメイドによる受注生産を基本としている「素-siro-」には一つの基本原則を設けています。
それは、料理人さんと顔を合わさないとつくらない。
ということです。
こういう言い方をすると、お高くとまっているように思われそうで嫌なのですが、正確に言うと、
「つくらない」ではなく「つくれない」です。
顔を合わせて対話をしないと、つくれないのです。
料理人さんからオーダーを受けて、雑談も含めていろいろな話をしますが、ぼくはそのときに器をつくる際に大切な情報を集めます。
そして、つくるときにはそのときの情報をもとにつくります。主にディテールの仕上げ方などに影響することが多いのですが、どのように仕上げるかは、実際に顔を合わせて対話をしないと難しいのです。
もちろん結局最後は全て想像というか妄想です。
でも、顔を見ず、会話もせずに妄想するのはちょっと難しいです。
なので、メールや電話のみでの受注は基本的にお断りすることにしています。
素—siroの強み
当然ですが、このコンセプトに対して強みを感じ、ビジネスとしても成立すると考えていたこともブランドを立ち上げる大きなきっかけでした。
ぼくは、素-siro-に関して3つの強みを感じていました。
1. 料理人さんのニーズ
2. 手づくりの強みが最大限生かせる
3. 直売であるということ
1.料理人さんのニーズ
料理人さんと仕事をしているうちに、流通しているうつわをカタログから選ぶ、あるいは個展などでたまたま出会ったうつわを購入する、という以外に、「こんな器があればいいな」という思いを実現してくれるところを探していたという声をよく聞きました。
たまたま身近に陶芸をしている知り合いがいる場合はいいけど、知らない場合はそもそもオーダーメイドでお願いしていいのかどうかを迷うという話もよく聞きました。
「つくります」と宣言することで、そんな器に関して悩んでいるプロの力になれるのではないかと考えました。
2.手づくりの強みが生かせる
レストランの器としては、有田や瀬戸が有名です。有田や瀬戸では、早くからレストラン向けのいわゆる業務用食器を手がけている窯元がたくさんありました。
有田や瀬戸では型をつかって生産することが主なので、その生産力は手づくりではとても太刀打ちできません。
ただし、有田や瀬戸にもウィークポイントはあります。
それは、小口のオーダーに対応しにくい。というところです。逆にそこは手づくりのストロングポイントです。
「手づくりの強み」というタイトルで以前のnoteでも書きましたが、小口のオーダーに応えられることは手づくりの唯一の強みなのです。
siroでは最低ロットなどは基本的に設けていません。極端に言えば、一枚からでもつくります。
それができるのが、手づくりの最大の強みです。
3.直売であるということ
陶芸の流通のはなしを読んでもらうと分かりやすいのですが、ものを売るときにだれかを通して届けるか、あるいは直接届けるかでは、自分に入ってくる金額は大きく変わります。
メリットとデメリットはありますが、ぼくはこれからの時代は直接売るチャンネルを持つということが大きなポイントだと考えています。
いわゆるBtoCのチャンネルを持っておく。ということです。
ちなみに素の活動は、 料理人さんも顧客=消費者=CustomerということでBtoCブランドですが、個人的にはChefの「C」という意味でのBtoCです。
そんな3つの強みを感じたので、このブランドをつくることに迷いはありませんでした。
さて、ではブランドの名前をどうしようかということになるのですが、名前はほんとに難しいです。トキノハのときもHOTOKIのときも悩みました。
なので今回もかなり悩みました。
スタッフも含めみんなで意見を出し合いましたが、なかなかピンとくるものがありませんでした。
そんなときに、トキノハの名前を決めるきっかけになった一冊の色辞典を奥さんが引っ張り出してきました。
そこのなかに、「素」と書いて「しろ」と読ませる色があり、
「晒した白ではなく、生絹(すずし)の色味が残っている未漂白の素材自体の色」
と書いてありました。
料理人さんとともに、ゼロからうつわをつくり上げるというコンセプトと、まだ何ものにもなっていない「素」という色にとても重なりを感じました。
「素」と書いて、読みは「しろ」。
アルファベットだけ少しいじって、shiroではなくsiroとすることにしました。
デザイナーに「いいやん」と言ってもらったときにはほっとしました。ちなみにその前に出した案は、「センスないなー」と思われていましたが笑
駆け足ですが、ざっくりと「素—siro」のことを書かせていただきました。今後も感じたことはnoteなどで書いていこうと思っていますが、その他SNSもぜひフォローしていただければうれしいです。
web → https://siro.kyoto
instagram → siro_kyoto
Facebookページ → https://www.facebook.com/siro.kyoto/
最後になりましたが、今回の素-siro-のプロジェクトは、Kiyo to-bo(株)の新規事業なので、当たり前ですが、会社のみんなの力で作り上げたブランドですが、それ以外にも、プロジェクトデザイナーの森永琢馬、グラフィックデザイナーの加藤啓太郎、そしてフォトグラファーの中島光行さんの3人にがっちりと関わってもらいながらつくりあげました。
その話をしだすとまたかなり長くなるのでその話はまたの機会に書きますが、4人であーだこーだしていた時間は僕の中で素-siro-の骨格を考える上でとても貴重な時間でした。
それ以外にも、webのタグラインを考えてくれた野崎賢一、ライティングを手伝ってくれたりえさん、コーディングをしてくれた佐久間さんなどたくさんの方にご協力いただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
ただ、まだスタートラインに立っただけなのでこれからも素-siro-で色々とクリエイションしていきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。
ということで今日は素—siroについてでした。
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