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専門家たちの反イスラエル姿勢 ~ 正義と実利のどちらを取るか? ~

 ハマスがイスラエルに攻撃を始めた10月7日以降、中東研究者や国際政治学者たちが、一様にイスラエルを牽制する姿勢を見せていく姿を、X(ツイッター)において見るようになりました。それらの学者には、昨今ではウクライナにおけるロシア侵略で、ウクライナ支持の立場から論じている方々も多くいます。

テロと明言しない姿勢


 日本政府が当初、ハマスのしたことをテロであると明言せず、すべての当事者に自制を求めているものであったため、私は、それどころではない大惨事だろと強い違和感を抱いていました。ところが、これらの学者はおしなべて、政府と同じようにテロという言葉を使わなかったのです。かえって、現実的であり、適切だとも評価していました。

 その中で、その時は、唯一、声を挙げていた専門家(イスラム思想研究者)が、飯山陽さん(麗澤大学客員教授)でした。イスラエルの自衛権を否定しかねないものだとして批判しています。(記事)

ハマスをそのまま残すのか?


 そのような方々は、次にイスラエルがガザ侵攻を計画してから、おしなべて強い不満や批判を展開しています。Xでは、学者としての見識ではなく、個人の感情の吐け口に成り下がってしまっているものまであります。

 イスラエルが自衛権を行使する時、当然ながらガザ地区にある軍事拠点を空爆するなど、戦闘行為を取るわけです。そしてハマスの軍事力を無効化するために、今回は地上戦も考えています。しかし、事あるごとに、イスラエルが非人道的行為をしている、国際法に反していると批判します。

 私は国際法の詳しいところは分かりませんが、大まかなこととして、イスラエルはロシアやシリアが行ってきているような、一般民を無差別殺戮しながら敵を根絶する手法はこれまでも取っていないし、今も考えていません。空爆する前には前もってSNSなどで事前に伝え、地上戦の前に、南部にガザ市民への移動を呼びかけるなど、人道的な配慮はあります。非常に残念ですが、犠牲者はゼロにすることはできません。でも、最小限になるべく努力しています。

 しかし、ハマスなどテロリストは、人間を盾とします。米国政治や安全保障が専門の小谷哲男氏によれば、軍とテロ組織を分ける違いは、「人間の盾」なのだそうです。ハマスは、ロケットの発射地点を学校や病院など、人々が住んでいるところで行います。こういった時に、テロリストを掃討する時に、そういった人道的配慮は、どうなるのか?ということになる。人質を取った凶悪犯の巣窟を、どう人質を救出しながら、相手を制圧するのかが大きな挑戦になります。

 こういったことを作案している最中に、これらの人々は、世界中でもそうであるように、イスラエルが非人道的行為をすると決めつけて、色眼鏡で見ています。そうしたことをすることによって、結局、「ハマスが、ガザに居残るようなことをする」ようにしているのです。

 問題は、批判そのものではありません。上に挙げたような難題を、共に悩み、解決策を提案していくなど、その専門知識を活用して意見発信すればよいのです。いわば、「寄り添いながら、批判」すればよいです。ところが、すでに距離を取っています。そして、イスラエルのすることを全否定する意見をひたすらポストしている人々もいます。

 国際法を掲げて、ハマスが居残るようにすることは、はたして「正義」なのでしょうか?

「イスラエルは世界からいなくなっていいかも」という本音

 ずっと、いろんな方々の意見を聞いて行って、感じ取ったことを以下に書き記します。

「イスラエルは、厄介」という思いがある。
しかし、「厄介な敵に直面しているんだな」と寄り添ったりすることはない。
そこを超大国アメリカが寄り添っている。
そのために、イスラエルを厄介なままにできず、強い不満を持っている。

・・・という感じです。

 透けて見えるのは、「国際秩序の中で、イスラエルが無かったとしたら良かったのに」という本音です。

 これは、静かな反ユダヤ主義、かつてのアラブ諸国が「地中海にユダヤ人を沈めよ」とか、「ユダヤ人を他のどこかに全員移送させればよい」というような、ナチスの解決法(最終解決はガス室送り)と、同じ発想になっています。

 こういうことを考えて、バイデン米大統領は、イスラエル訪問時にこう話したのです。

We will not stand by and do nothing again.
(私たちは、再び、突っ立って、何もしないということはしない。)

 かつて米国は、ホロコーストが起こっていることに気づきつつも、ユダヤ難民受け入れに消極的であったり、積極的行動に移していませんでした。二度とそんなことはすまい、という意思表明です。

 このように、イスラエルに寄り添うというのは、勇気のある行動です。確かに、国際秩序を考えれば、イスラエルが苦しみの中にいる時に助けるのは、全体を乱してしまうかもしれない。けれども、助けなければイスラエルがいなくなってもいい、とすることでもある。だから、正義のゆえに救うのです。それが、かつてホロコーストの時にユダヤ人を助けた、「諸国民の中の正義の人々」(日本では杉原千畝)なのです。

認定者に贈られる表彰状とメダル。

わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたをのろう者をのろう。(創世記12:3)

追記:ウクライナ支持の国際政治学者たちが、軒並みイスラエル批判に回っている中、ウクライナ人の国際政治学者である、グレンコ・アンドリーさんが、イスラエル支持は100%正しいとして、以下の連続Xをしています。「世の中には実利以上に重要なのは価値観です。」と言っています。

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