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ハマスの認知的戦略

ハマスに蝕まれるヨルダン


 まず、以下のXポストを読んでほしい。

 ここに指摘されているように、この頃、ヨルダンでのハマスの扇動がXにも流れてくる。

ムスリム同胞団とハマスの支持者たちは、エジプトで行ったように、ヨルダンでの平和的な抗議行動を暴力的なデモに変えようとしている。ムスリム同胞団は、この地域のどの国の安全保障にとっても脅威である。

彼らは公然と、ヨルダンの警察官を殺害し斬首するようデモ参加者を扇動した。


 こちらの記事が詳しく、国内での親ハマスデモが不安定化をもたらしている背景を説明している。

パレスチナ人社会での地歩

 まず、ハマスの戦略が何であったかを思い出すべき。彼らは、イスラエルに入って大虐殺を行い、人質を大量に取ったのは、まずはパレスチナ社会を扇動して、自分たちの地歩を固めるため。西岸において、パレスチナ自治政府よりも自分たちに支持が集まり、西岸において勢力を持つためだ。最終的に、ハマスがパレスチナの代表となり、よしんば、国際社会からの支援も受け取ることができるようにするためだ。

 以下は、ハマスとイスラム聖戦が、パレスチナ自治政府の本部から乗り物を盗んで走っている姿。

 この目論見は、かなり成功していると言える。すでに統計において、西岸とガザ地区のパレスチナ人の大半が、10月7日のハマス攻撃を支持しており、ハマスの支持が上がり、パレスチナ自治政府の支持が下がっている。

 このように今、隣接するアラブ諸国、特にヨルダンにおいて、ハマスの扇動が積極的に行われているのだ。ヨルダンは、非常に難しい舵取りをしている。

国内に国を造られる脅威を受けたヨルダン

 ヨルダンは、かつて黒い九月と呼ばれる、PLOとの血みどろの内戦をして追い出した経緯がある。しかしパレスチナ人が非常に国内に多いために、イスラエルへの批判をしないといけない。ラニア王妃の極端な発言もそれを反映したものだ。

 しかし、非公式には、長いことイスラエルと安全保障の堅い協力の中にある。

かつてはイスラム国の脅威

 ヨルダンは、アラブの春以後は特に、国内の過激派との戦いを展開していた。イスラム国との激しい戦いも展開し、日本人にとって記憶しているのは、後藤健二さんが斬首するというイスラム国の動画が流れた時に、交渉したヨルダンが、ヨルダン人の空軍パイロットの人質との交換を条件にされていたのだ。

 ジョエル・ローゼンバーグ氏は、アブドラ二世国王の宮廷がイスラム国の襲撃を受けるフィクション小説を書いたが、これは現実味のある脅威として国王自身も捉えていたのは、彼がこの小説を呼び、ジョエルさんの家族を王宮に招待したことからもわかる。

 そして今、ハマスによる扇動がヨルダンで起こっている。

ムスリム同胞団と戦ってきたエジプト

 エジプトも、イスラエルとの安全保障の協力を緊密に行っている国だ。イスラム過激派のムスリム同胞団と長いこと戦っている国であり、ハマスはその一派だ。シナイ半島は、過激派の無法地帯になる危険をいつもはらんでおり、イスラエルとの協力を行っている。

 ガザ市民をエジプトに入るのを、コンクリートの壁を三重も立てて阻止しているのは。ハマスが紛れ込むことを非常に恐れているからだ。

背後にイラン

 このように、アラブ諸国は、イスラエルを表向きは非難するが、本音ではハマス掃討戦について利害の完全な一致している。ハマスの背後には、イランがいて、イランとの強力な支援によって、様々な行動を決めている。イランは直接的にイスラエルと対峙したくない、いつも、自分たちの手を汚さず、イスラム過激派の武装勢力を使ってイスラエルを攻撃させるようにしている。

サウジアラビア:公式にはイスラエル非難、国営報道局ではハマス批判

 その背景があるから、アブラハム合意が進展していたのだ。そして、イエメンのフーシー派と戦っているサウジアラビアが、イスラエルとの国交正常化交渉に積極的だったのだ。そして今も、その姿勢は崩していない。公式にはイスラエルを非難するが、報道では、ハマスを非難している。以前、イスラエル軍がシファ病院に巣喰うハマスと戦った時、シファ「病院」ではなく、なんと「ハマスの司令部」と記した地図を見せながら、ニュース解説をしていたのだ。

 日本の報道や専門家は、イスラエルの主張を「プロパガンダ」と一蹴したが、よく考えてほしい、逆に、ハマスのプロパガンダに呑みこまれているのではないか?ということだ。ハマスの戦略は、軍事的なものだけでなく、認知戦、宣伝戦が大きく占めているのだ。

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