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障がい児を育てるhandmade作家ミーティング

1ヶ月近く前の事です。うさぎカフェで、うちのハンドメイド事業「オンラインショップhandmadeウサギ」の作家ミーティングがありました。内容は、今年度のイベント予定の共有や決まりごとの確認、そして今年の新しいチャレンジについての提案など。この事業は、ハンドメイドが得意な障がい児ママたちの応援をすることで、「障がい児を育てていても自分自身を忘れないでほしい、自分を大切にしてほしい」というメッセージを全ての障がい児ママたちに伝えるための事業です。


今年は倉敷美観地区の中の店で売ってみる

ハンドメイド事業は始めて開始して丸3年が経ちました。早い!という感覚です。コロナと重なっていたから、思えば丸まるコロナと共に進めてきた事業だった。ようやくこれまでよりもっと伸び伸びと活動できると思うと嬉しいです。

この日の打ち合わせでは、今年度、岡山県随一の観光地である倉敷美観地区の中にあるお店で作家の皆さんが自分のお店を出すという新しいチャレンジのことをお話しし、出店する場合の決めごとの確認などをしました。

元々ハンドメイド事業では、作家のステップアップも応援したいと考えていましたので、今回は法人側でマージンは取らず、その代わり基本、出店に関する全てのことを作家さん自身にしてもらうことにしました。ずっと、イベント設定も集客も法人で担ってきましたが、3年経ってそれぞれの作家にファンもついてきたので、この辺が独立に向けてのチャレンジ第一歩のタイミングと考えたからです。

忙しい子育ての合間にものづくりを続ける女性たち

ハンドメイド作家は「障がい児を育てていても自分らしさを持ち続けて欲しい」という私たちからのメッセージの象徴的存在です。彼女らは、病院の待ち時間、療育の送り迎え、子どもが寝静まったあとのわずかな時間を利用して、少しずつ少しずつ、自己表現としてのハンドメイド作品づくりを続けてきた人たちです。中には、子どもが触っても危なくないものを選んで、子どもを見守りながら作っていたという人もいます。立ったままで編み物を編む人もいます。

経験していないと分かりにくいことですが、子どもに障がいがあると知った母親たちというのは、頭の中がそれでいっぱいになってしまいます。思いもかけぬことにショックを受け、自分と我が子の将来についての不安の黒雲が広がるので、常に頭のどこかでそれを考えるようになってしまいます。そうなると、「産む前の自分」を忘れてしまう人が結構います。私もそうでしたが。

障がいのある子を産んだと知った時に人生の分断が起きる

障がい児の子育てはその人の人生にとっての分断になり得ます。大袈裟でなく、産む前の自分が何を好みどんな夢を描いていたか、本当に頭の中から消えてしまうことがよくあるのです。つまりそれくらい衝撃的な出来事だということです。

あまりに障がいのことばかり考えているので、子育てをきっかけに障がい福祉分野のパート職につく人もとても多いです。自分のやりたいことがそれだと思ってしまうのです。もちろん中には元々の福祉職の方もいますし、子どものことがきっかけで本当に福祉に関心を持つ人もいますが、しかし一方、結構な割合で「それしか頭の中になかったから」という状態も多いのではないかと思っています。それくらい、色々と見失うのです。

ハンドメイド作家さんたちは自分の「好き」を手放さなかった人たち

NPO活動としては特定の人たちだけを応援するということは普通しないのですが、私たちにとって彼女たちは障がい児の親のロールモデルの一つというか、若いお母さんたちに「こんなふうに自分らしく楽しんでいいんだ」と憧れて見てもらえるような、そういう立場の人たちとして活躍して欲しくて、その活動を応援しています。

ハンドメイドはひとつの例に過ぎません。好きなもの、打ち込めることの種類はなんだっていいんです。あなたはあなたでいい。障がい児を産んだからって急に福祉の人にならなくていい。ひとりの人として、あなたの人生を大切にしていい、そんなことを彼女たちの姿を通して感じてもらいたいと思っています。

ハンドメイド事業は社会への窓口

この事業は、法人にとって大きなメリットとなった面がありました。それは、彼女たちのおかげで私たちは「モノを売る」ことができるようになった、ということです。普段の私たちの活動は、障がい児の保護者及び支援者に特化したものになっているので、一般の方に見て触れて知っていただく機会というのがほとんどありません。そうなると、保護者支援への理解も広まりません。

でもハンドメイド作家さんたちの作ったモノを売らせてもらうことによって一般社会への窓口がひらけました。ハンドメイドのマーケットには、誰でも来てもらって、買ってもらうことができます。作家と話もしてもらうことができます。これはとてもありがたいことでした。モノの販売を通じて、社会課題に触れてもらう機会となったからです。

面白いことに売るモノを持っていると色々なところからお声がかかります。「ここで売ってみませんか」「こちらのマルシェに出店しませんか」そうやって、人に知られる機会の少なかった障がい児保護者支援活動に日が当たるようになってきました。

倉敷美観地区内にある「虹色商店」での販売へ

この3年間に5回のハンドメイドマーケットと、2回の内覧会的な展示会を開催したハンドメイド事業は、今度はより一般社会に近い場所へと進出します。それが倉敷美観地区の中にある「虹色商店」での不定期販売です。虹色商店は全国の障がい者施設で作られた作品を販売するセレクトショップであり、美味しいクレープ屋さんでもあります。倉敷の伝統的町家を生かした美しいカフェの一角で、今年はうちの作家さんたちが入れ替わり立ち替わり、上質なハンドメイド作品を販売します。そこでお客さんと会話し、障がい児保護者支援活動を知ってもらう機会にするつもりです。

作家さんたちには、このチャンスを十分に利用し、いずれは個々に起業して独立してもらいたいと思っています。実際に今回の虹色商店での出店にあたっては、それぞれが電子マネーやクレカ決済ができるように準備をしたりして、個人事業主になることを見据えて動き出しているのです。

倉敷市美観地区、東町にある美しい町家カフェ「虹色商店」

子育てへの悩みは変わらなくても「好き」はメンタルを支える

私たちのハンドメイド事業では、作家の皆さんの活躍の機会を色々と作っています。しかしもちろん、この事業のために彼女らが無理を重ねて、生活の多くを犠牲にするようなことがあってはいけません。だからいつも「楽しめる範囲でやってね」とお伝えしているのですが、一方でイベントなど「ここ」と決めた目標に向かってがんばるという適度なプレッシャーは、彼女たちの生活の張りになっているのではないかと思っています。よく売れるようになった人にとっては、子どもの修学旅行費の足しにするなど、ちょっとした副収入として役に立っているようです。

自分が想いを込めて作った作品が売れて行くのはやはり大きな喜びになるんですよね。その体験は子育てとはまったく別の次元で、彼女らを中から温めているのではないかと思います。

今回のミーティングの様子を見ながら私が嬉しく感じていたのは、今真っ最中で子育てに悩んでいる作家もいるのに、人前に出ることに消極的だった人もいたのに、いつの間にか3年の間にたくましくなって、私たちの庇護がなくても、作家同士であれこれ相談し、コラボで一緒に出店してみよう!などと盛り上がっていたことです。

11人の作家はチームとしても、互いに良い影響を与え合っているように見えます。それぞれがそれぞれの活動をリスペクトしている感じがあるのです。3年かけて、だんだんとそんな空気になって来ました。そのことも、とても嬉しいことです。

作家のみんなが話し合う姿は本当に、明るくて眩しくて。「お母さん」だけではない個人として勝負してきたことは、彼女らの内側に、自信の輝きを与えたように見えます。自分のやりたいことに、たとえ小さなことでもチャレンジすることは、自分を「個」として意識すること。それは、子どもと自分を別個の人間として、良い距離を置くことにもつながっていると改めて実感しました。距離を取れる子育てって、大体うまくいくものなのです。

私たちのハンドメイド事業にもし関心を持ってくださったなら

2023年6月24・25日から始まる、虹色商店での作家展にぜひお越しください。24日はフェルト細工の作家と縫い物の作家の2人で、25日は縫い物の作家が単独で出店します。詳しい情報はhandmadeウサギのサイトや法人のsnsでも紹介していきますので、チェックしていただければと思います。遠くの方はぜひオンラインショップを見て、もしお気に入りが見つかればご購入してください。作家もとても励まされまることと思います。

オンラインショップ「handmadeウサギ」

ご寄付のお願い

私たちの障がい児者保護者支援活動は寄付で支えられています。常に資金が不足しており、ハンドメイド事業やカフェ、本の販売など自主事業もしていますが財政的にはいつも苦しくスタッフの気持ちで支えられている面が大きいです。そのスタッフたちも全員障がい者の親たちで、ない時間を工面しながら仕事に来てくれています。関わっている人たちの気持ちだけで支えるにはあまりに大きな取り組みです。多くの皆さんの応援を必要としています。特にマンスリーサポーターを必要としています。以下のホームページの右上のバナー「寄付で応援」から、寄付の種類を選んでいただくことができますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。
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