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胸腰筋膜と腰痛 〜介入方法〜

こんにちは!腰痛マガジンメンバーのこじろう(@reha_spine)です。

今回のテーマは「胸腰筋膜:thoracolumbar fascia 」を含めたアプローチ方法についてまとめていきます。

前回では胸腰筋膜の解剖や腰痛との関連性、体幹の安定化にどのように作用しているかなど、胸腰筋膜の概要についてまとめさせて頂きました。


今回は、胸腰筋膜を含めた筋への介入方法についてご紹介していきます。


今回の記事は特に以下のような方にオススメな内容となっております!

✔︎ 胸腰筋膜を含めた筋へのリリース、ストレッチ方法について学びたい方
✔︎胸腰筋膜を含めた体幹安定化エクササイズについて学びたい方


では内容に移っていきましょう!!


▶︎脊柱安定化作用について

まず、体幹の安定化エクササイズを行う前に重要な考え方があります。

皆さんも一度は聞いたことのある内容ではないでしょうか?


関節の安定性には「形状学的閉鎖機構(form closure)」「力学的閉鎖機構(force closure)」という考え方があります。1)

「形状学的閉鎖機構(form closure):関節面が接近し、形状的に安定した状態であり、この状態の維持に余分な力は必要ない。

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「力学的閉鎖機構(force closure):関節の安定性を保つために筋力が必要不可欠である。

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今回は、胸腰筋膜も含めた筋への介入方法についての内容であるため、Force closureに焦点を当てて説明していきます。


まず、「力学的閉鎖機構」に関与する体幹筋群にはどのようなものがあるのでしょうか??


脊柱の安定性を得るためには、まず下部体幹に内在する骨盤底筋群、腹横筋、多裂筋、横隔膜などのlocal muscleの働きが必要となります。

また、腹横筋の収縮によって胸腰筋膜の張力が増加して腹腔内圧が上昇すること、更に骨盤にある後仙腸靭帯の張力などによって「力学的閉鎖機構」が強化されると考えられています。


また、脊柱表在性のglobal muscleや筋膜も脊柱安定化に作用する「力学的閉鎖機構」が存在すると言われています。2)


global muscleには筋腱縦系帯筋腱斜系帯があります。

【筋腱縦系帯】
脊柱起立筋、胸腰筋膜前葉、仙結節靭帯、大腿二頭筋で構成され、胸腰筋膜の張力を増加させて仙腸関節の圧迫を促し、仙骨のうなずき運動もコントロールする

【筋腱斜系帯】
広背筋と対側大殿筋およびその間に介在する胸腰筋膜で構成され、両側の筋腱斜系帯の収縮によって胸腰仙椎各関節の安定性及び仙腸関節の安定性に作用する

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補足ですが、脊柱背面筋だけでなく、前面の筋腱斜系帯も重要であり、内(外)腹斜筋と対側の外(内)腹斜筋、大腿内転筋群、介在性の前腹部筋膜によって構成され、この筋腱斜系帯の収縮に先立って、腹横筋が収縮することが体幹安定性のために必要であるといわれています。


▶︎大殿筋による伝達障害

今回は、広背筋と対側大殿筋およびその間に介在する胸腰筋膜で構成される「筋腱斜系帯」について説明していきます。

上述したように、筋腱斜系帯により正常な骨盤後面における筋膜機能として、大殿筋の張力は仙骨を介して反対側の胸腰筋膜に伝達されると考えられています。

前回の記事でもお伝えしたように、この機能は胸腰筋膜の後葉に相当します。後葉は正中線を越え、下肢・骨盤・体幹の間の張力伝達の働きがあります。そして、同側の広背筋と対側の大殿筋とも強い付着を持っています。


L3レベルの胸腰筋膜の厚みは以下の通りです。

前葉:0.10mm
中葉:0.55mm
後葉:0.52mm

前葉は薄く、張力伝達機能はわずかになります。


筋腱斜系帯の機能としては、腹臥位での股関節自動伸展において、下肢が床から離れる瞬間に同側よりも反対側の広背筋に強い収縮が感知されることによって確認されます(対側伝達)。

大殿筋と広背筋伝達

大殿筋は反対側の胸腰筋膜や脊柱起立筋に張力を伝達することにより、両側の仙腸関節を圧迫し、安定させます。しかし、大殿筋の仙骨への張力に左右差が存在すると、尾骨は張力の強い方向へ引かれ、仙骨は前額面上で傾斜します。この状態は力学的閉鎖機構が破綻した病的メカニズムになります。


大殿筋機能の評価は以下のようにして確認していきます。

【評価】
〈肢位〉腹臥位
〈方法〉下肢を挙上した際に対側の腰背部を触診し、同側よりも反対側の腰背部が優位に収縮しているかを評価する

大殿筋・広背筋伝達評価

力学的閉鎖機構が破綻する原因として、大殿筋周囲の軟部組織(筋間、筋と皮下脂肪や皮膚との間)の滑走制限によって、正常な筋膜機能が阻害されることが考えられます。

そうなると、大殿筋の張力が同側の広背筋に優位に伝達される「同側伝達」や大殿筋と同側の中殿筋や大腿筋膜張筋、大腿直筋などの股関節屈筋群が同時収縮する「拮抗筋伝達」が生じる場合などがあります。1)

伝達障害

拮抗筋伝達が生じている場合には、股関節の伸展制限により、骨盤前傾が生じ、両側の脊柱起立筋や広背筋の緊張が高まってしまいます。



ではここからはアプローチ方法について説明していきます。

▶︎大殿筋・胸腰筋膜リリース

筋膜に対する徒手療法には筋膜誘導アプローチがあります。変性した筋膜組織の機能回復を主眼とするもので、特定領域を伸張・圧迫することで筋膜制限を改善させるといわれています。3)

こちらは腰痛に対する筋膜リリースの効果についての報告になります。

この研究では慢性腰痛患者に対して筋膜リリースを実施した際の治療効果について報告されています。筋膜リリース治療直後、治療後1ヶ月の時点において脊柱起立筋と腰部多裂筋の安静時の過度な筋活動を低下させ、治療効果を維持できていたと示されています。

その他では、筋膜リリースによって腰椎の可動性改善が認められたとの報告もあります。

胸腰筋膜は背筋群の大部分を多い、その下の筋よりもかなり多くの感覚神経終末が存在します。腰痛患者では胸腰筋膜の構造変化を呈し、過度な緊張を長期間引き起こすことで筋筋膜性障害の原因になることも指摘されています。



では、ここからは実際の介入方法についてご紹介させて頂きます。

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