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しくじることの大切さ:「小さな会社の社長の戦い方」(井上達也著)を読んで

日本企業に勤めるサラリーマンにとって、失敗は致命傷になり、その後の会社人生に大きな影響を及ぼすことは、今でも変わっていないように思います。でも、会社で出世する、という目標ではなく、ビジネスで何かを成し遂げることを目指すならば、もしろ、失敗を通して学ぶことの経験は、欠かせないと思います。45歳から、海外の起業家の日本ビジネスを手伝うようになって、そのことにか気づきました。そして、もう一つわかったことは、他人から聞く失敗談もまた、多くの学びがあるということです。世の中には、耳障りの良い成功物語があふれていますが、偉人伝と同じく、後から再編成されたストーリーが多々あるように思います。それよりも、自分の失敗を率直に語ってくれる人に素直に学ぶことが大切だと思ってます。そう言う意味で失敗談を率直に語る書籍は貴重です。

自らの有益な失敗談から示唆を与えてくれる本、「小さな会社の社長の戦い方」(井上達也著:アスカ刊)を読みました。

来年、起業を予定している僕にとって参考になるポイントが多々ありました。気になった文章をいくつか引用してみます。

中小企業が売れるものは「誰でもスグわかるもの」です。逆に売れないものの典型的なものは、イメージできないものや画期的なもの、つまりわかりにくいものです。
大企業ならば、莫大なお金や人員も揃っていますから、会社のブランドを駆使し、人々を啓蒙することができます。わかりにくいものでも新しいマーケットを創造し、売ることができるかもしれません。
しかし、中小企業がそのマネをすることはかなりハードルが高いと思います。わかりにくいものは、たとえいいものであってもなかなか売れません。

同上

マーケティングの本にも「ありふれたものでもたくさん売ることはできる」「小予算でも広告の作り方で問い合わせは倍増する」、なんていうことが書かれています。
当時の私はこういう本の話をうのみにして、たいしたものでなくても、マーケティングの力でどうにかなると考えていました。
しかし違っていたんです。マーケティングというものを勘違いしていました。
マーケティングとは、どんなものでもたくさん売る技術ではなく、「まだ知られていない、よいものを人々に知らしめる技術」だったのです。

同上

類似の商品がないものはなかなか売れない
(中略)
「井上さん、類似のものがない商品って売れないんですよ。人はいくつかのソフトを見比べて買うんです。一種類しかないソフトって比較のしようがないから売れないんですよ」
(中略)
ソフトバンクの人が言うように、比較すらできないものは買わないのです。大企業なら広告にお金をつぎ込むといった方法もありますが、小さな菓子屋にはそれができません。

同上

チャンスを逃さない勘を育てる
(中略)
ビジネスをしていて勘が働くことがあります。これはいけそうだ、これはたぶんダメだなという「勘」です。勘をよくするためには経験が必要です。こうしたときにはうまくいった、あのときはダメだったという経験です。ただ経験は何かしない限り増えてはいきません。ですから自分の意思で勘をよくするための方法は知識を学ぶということになります。人が学んだこと、人が経験したことを本から吸収するのです。

同上

上記のような率直なアドバイスが、2000円もしない、この本には散りばめれています。僕は、広告代理店に勤務していて、キャリアの前半は、大企業のマーケティング活動のサポートの仕事を長くやってきましたが、後半は、海外の小さなスタートアップが日本市場でビジネスを拡大するのをサポートする仕事をしてきたので、中小企業の生き残り方が大企業のビジネスといかに違うか、という著者の主張に納得しました。

海外の小規模スタートアップの日本ビジネス支援を13年やってきたとはいえ、僕は大企業のB2Bマーケティングの世界に居続けた人間です。来春、一人で仕事を始めれば、多くの失敗が待っていることは間違いありません。それも少しでも質の良い失敗ができるよう、今からこんなふうにして、様々な「しくじり先生」から本や対面を通じて学んでいこうと思ってます。


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