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「心穏やかに。」を読んで

準天堂大学医学部教授の小林弘幸氏と明治大学文学部教授の齋藤孝氏の共著の「心穏やかに。」(プレジデント社)を読みました。参考になる点がいくつかあったので、まとめてみようと思います。

自律神経研究者第一人者の生い立ちについて

僕は、小林先生の著作はすでに数冊読んでいて、彼の心を整えるためのメソッドについて興味関心があったので、今回も先生の名前を見てこの書籍を購入しました。そして読み始めると、先生ご自身の個人的な人生について率直に表現されていて、ちょっとした驚きがありました。

「はっきりいうと、わたしの人生には、自分なりにつらいことが多かったのです。少なくとも人生の前半までは、つらいことしか記憶にはないような気するほどの日々を送りました。『もっとほかの人生があっても良かっただろう』そんなことを思いながら、每日を過ごしていたのです。子どものころから、『しんどいな』と思うことが多く、社会に出て医師になってからもしばらくは、その思いが変わることはありませんでした。いまでこそ、本書のテーマである『心穏やか』な人生を生きられるようになりましたが、とくに若いころについては、本当につらく苦しい思い出しか残ってません。


この文章を読み、なぜ自分が小林先生の自律神経を整える技法に興味持ったかよくわかりました。ご自身の葛藤を乗り越える中で、体系化した理論だからこそリアリティーがあるものだと思いました。そして、僕自身も、ゴジラのような母親を持ち、年柄年中感情の赴くまま激しく父と喧嘩をする中で、小さい頃育ち、本当にしんどく、每日逃げ出しいくらいでした。それ以来、家族から幽体離脱して心穏やかになるための術を求めつづけ、今もなお、新しい術を求め続けているからこそ、この本を手に取ったのだときづきました。

いつのころからか、わたしはめぐまれた環境や人生というものに対して、ほとんど期待をいだかないようになっていました。『これが自分の人生なのだ』醒めていたわけではなく、ただ現実としてそう思うようになったのです。だからこそ医師になって、自分の人生の問題にもっと直結した『心』というテーマを、自律神経のメカニズムをもとに科学的に解明し、実際の治療として施していく外科の仕事に夢中になることができたのでしょう。

齋藤先生ご自身も小さかった頃の「偏り」と「悩み」を告白された後、二人の対談となり、心穏やかに過ごす具体的なメソッドを披露していきます。

1日30分、自分だけの自由な時間を作る/ゆっくり動き、ゆっくり話す/「雄弁は銀、沈黙は金」とむかしからいわれますが、それは自律神経の観点からも真実です。そして黙るということは、心穏やかにする簡単な方法です。

など、具体的なコツを丁寧に解説されています。僕は読んでいて、頷けたのは運動の効用です。勤務する会社で新規事業を立ち上げる任務についた10年前、日々嵐のような日々が続き、気が滅入るようになった時、運動することが手っ取り早く気分をポジティブに変える手段だと気づき、それ以来、こまめにジョギングをするようになりました。

小林  どんなことでもいいので、毎日1時間運動することは人を変えると思います。「人生を変えたければまず動け」ですよ。 齋藤  なるほど。運動したあとは、気が巡って晴れ晴れとした感じにもなって、細かい悩みごとも汗とともに体外へ排出される感じがします。 小林 人間って、座っているといつまでも悩みごとを考えれるのですよ。でも、動いていると、なかなか悩めません。(笑)運動していると、目に映ってくる障害物がたくさんあって、それを避けなければなりませんからね。動いていると、悩みごとって考えられないものなんです。

今、55歳になります。サラリーマンですが、オープン・イノベーション関連の専門領域でビジネスができるようになり、職人のような仕事の仕方で日々過ごせるようになりました。朝は、アメリカ、昼間はシンガポール、夕方にかけてヨーロッパと連絡を取り合いながら仕事をしています。自分自身で仕事をコントロールできるようになり、合間に、こまめに体を動かし、心穏やかに日々を過ごせるようになりました。今の会社に入って、31年、色々ありましたがようやく心穏やかな日々を手にいれることができ、感謝の日々です。その事をこの本は気づかせてくれました。

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