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短編小説集

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いずれ長編になるかもしれない物語たち。
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2021年6月の記事一覧

【短編小説】風の音

【短編小説】風の音

女は銀座に立つ料亭の裏で煙草を吸っていた。
いつもはどんなに最悪な機嫌をも直し、心を落ち着かせるものであるそれが、ここ最近は、心を乱すものになっていた。

「そろそろ辞め時かしらね」

火が消えたことを確認し、料亭の中へと戻る。

二階と一階に、常連の団体客。二階の客は都々逸やさのさを嗜むのが好きで、この女でなければ相手ができない難客だった。

「〽憎らしい 憎い仕打ちは虫が好く 花を愛して嵐を憎

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