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桐貴清羽(きりたかきよは)
2021年6月18日 15:08
女は銀座に立つ料亭の裏で煙草を吸っていた。いつもはどんなに最悪な機嫌をも直し、心を落ち着かせるものであるそれが、ここ最近は、心を乱すものになっていた。「そろそろ辞め時かしらね」火が消えたことを確認し、料亭の中へと戻る。二階と一階に、常連の団体客。二階の客は都々逸やさのさを嗜むのが好きで、この女でなければ相手ができない難客だった。「〽憎らしい 憎い仕打ちは虫が好く 花を愛して嵐を憎