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6/30 全く観光客に優しくない圧倒的観光地 【ポーンサワン】
寝台バスは悪くなかった。
身長168cmのぼくでも窮屈に感じるほど狭い空間だったが、意外とよく寝られた。
日付が変わる前にはあっさり入眠し、一回だけ目が覚めたが、最後はスタッフに直前で起こされるまで爆睡していた。
早朝5時45分、ポーンサワンのバスターミナルに到着。
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まず、やらなければいけないことが2つある。
次の目的地であるルアンパバーン行きのバスの時刻表を確認することと、スクーターをレンタルすることだ。
ちょうどバスターミナルに職員が出勤してきたので尋ねてみると、ヴィエンチャン行きのバスしかないと言う。
またヴィエンチャンに戻るのかとうんざりしたが、もしかしたら市内の旅行代理店で直行バスを手配できるかもしれない。この件は保留。
次にスクーターの件だが、どちらにせよ市内に出ないことには始まらない。
バスターミナルから市内へは約5km。
朝の良い散歩だと思って歩いて行くことにした。
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どうやらこのあたりは高地にあるらしく、かなり気温が低い。
半袖のTシャツだと肌寒いくらいだ。
おそらく気温は25度もないだろう。
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朝のマーケットを通りかかる。
覗いてみると、ハリネズミのような生き物や大きなネズミの燻製が売られている。
なかなかのカルチャーショックである。
さて、市内に到着して旅行代理店を探すも全く見つからない。
詳しくは後述するが、このポーンサワンには世界遺産があるため観光客が集まるはずだ。
実際、ゲストハウスの看板は山ほど見かけたのだが、ツアー会社はほとんど存在しないようなのだ。
これではスクーターも借りれないし、ルアンパバーン行きのバスも確保できない。
しょうがないので、来た道を戻ってツアーオフィスに立ち寄る。
まずはバスの運行状況を問い合わせると、北バスターミナルからルアンパバーン行きのバスが出ているという。
北バスターミナルはどこにあるか尋ねると、スタッフのおじさんは口頭で説明してくれるのみで、自力で辿り着ける気がしない。
地図が欲しいと言うと、しばらく探してから「ない」と答える。
そこでぼくがスマホを差し出して、Googleマップで表示して欲しいと伝えると、しばらくいじった後に「わからない」と言う。
ぼくが「northern bus terminal」と検索してみると、他の街のバスターミナルが出てくる。
全く訳がわからない。
いろいろと検索した結果、「Xiengkhouang Bus Station」というのが正式名称だと分かった。
ちなみに、ぼくが早朝に着いたのが「Phonsavan Bus Terminal」で、こちらは通称「南バスターミナル」。
あまりにも不親切すぎる。
ツアーオフィスのおじさんも分かっていなかったし、改良の余地ありだ。
そもそも、このような過疎地域にバスターミナルが2つもあること自体がおかしな話なのだ。
バス問題は解決したところで、次はスクーターのレンタル。
ポーンサワンの郊外には温泉があるらしく、スクーターで温泉施設へ行って1泊しようと考えていた。
しかし、Googleマップでトラベルエージェンシーと調べて表示されたところに行っても、ただの民家があるだけだった。
ツアーオフィスにも一応、バイクが借りられるお店の名前が書かれたリストが貼られていたのだが、そのどれもがGoogleマップで表示されなかった。
もう一度市内に戻って、手当たり次第にゲストハウスで「スクーターのレンタルはできますか」と聞くと、全てのゲストハウスで「ない」の返答。
そのうち何軒かは、とある方向を指差して「シティの方に行けばある」と答えてくれた。
ようやく手掛かりが掴めたと思い、指さされた方角まで歩いていって適当なゲストハウスで同様の質問をすると、今度はぼくが歩いてきた方向を指差して「シティの方に行けばある」と答えるのだ。
一体どうなってるんだ、この町は。
頭がおかしくなりそうだ。
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食事を挟みながらではあるが、そんなことを繰り返していると、気づけば正午になっていた。
その間の収穫は、ルアンパバーン行きのバスは北バスターミナルから出ると分かり、北バスターミナルの場所が判明しただけだ。
心も体も疲れ果てたぼくは、温泉に行くのは諦めることにした。
ルアンパバーンの郊外にも温泉はあるらしいので、そっちで楽しむことにする。
今日は午後に世界遺産の観光を楽しみ、明日の朝発のバスでルアンパバーンへ行くことにしよう。
とりあえず北バスターミナルで翌朝のチケットを買い、近くのゲストハウスにチェックインした。
世界遺産は市内からそこまで離れた場所にあるわけではないが、歩いて行くにはしんどい距離だ。
念のため、ゲストハウスで自転車は借りれるか聞いてみると、例の如く「シティでなら借りられる」の返事。
その「シティ」とやらは実在するのか?
何だかおかしな世界に入り込んでしまった気分だ。
しょうがないのでトゥクトゥクでもチャーターして行こうと思って通りに出てみるが、トゥクトゥクは1台も通りかからない。
そのうち通りかかるだろうと歩いてみるが、それでも全く見当たらない。
なぜ世界遺産を抱える町なのに、世界遺産に行くための手段がないんだ?
ふと、パラレルワールドにでも迷い込んでしまったのではないかという考えが頭をよぎる。
街中にはゲストハウスはたくさんあるのに、観光客らしき人は全く見かけない。
少なくとも西洋人は1人もいない。
荒唐無稽な考えだが、何だか寒気がしてくる。
途方に暮れたところで、人が集まる市場に行けばトゥクトゥクを捕まえられるのではないかと閃いた。
朝に通りかかった市場に行ってみると、果たして1台のトゥクトゥクが待機していた。
砂漠でオアシスを見つけた気分だ。
ぼくは運転手のおじさんに話しかけて、世界遺産の「ジャール平原(Plain of Jars Site)」に行ってくれるように、Googleマップを見せながらお願いした。
彼が英語を解さないのは想定の範囲内だが、同時に地図を見せればすぐに理解してくれるだろう。
しかし、彼はどうも場所がよく分からないようで、近くにいた市場の娘に声をかけて一緒にあれこれと話し始める。
行き先は数km先の世界遺産なのに、ここまで手間取ることがあるだろうか。
不意にパラレルワールド説が現実味を帯びてくる。
ぼくの迷い込んだこの町には世界遺産は存在しないのではないか。
しばらく地図と睨めっこしてから、2人は合点が入ったようだった。
「ああ、あそこね」というようにおじさんが頷く。
おじさんが提示した額が、こちらが想定していた額よりも安かったので、言い値でお願いすることにした。
それでも、それなりの「外国人料金」だっただろうが、値切ったところで数百円しか安くならないし、数日前の経験で「変にケチると物事がうまくいかないことがある」という教訓を得ていたので交渉はしない。
そもそも、もうぼくには交渉する元気が残っていなかった。
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というわけで、何とか無事に世界遺産のジャール平原に到着。
ラオス中央部の高原に位置するジャール平原は、鉄器時代の葬儀に使用された2,100以上の巨大な石壷(stone jars)からその名前が付けられました。遺跡群を構成する15の要素には、紀元前500年から西暦500年までに石から作られた大きな壷、石製の円盤、副次的な墓、墓石、採石場、そして副葬品が含まれています。これらは、鉄器文明の最も重要な遺跡で、西暦500年ごろに文明が消滅するまで使用されていました。
要は、平原に大きな石壷が散らばる奇妙な光景が見られる場所なのだ。
実際のところ、その巨大石壷が何のために作られたかは現時点では「諸説ある」段階らしく、食糧貯蔵や骨壷説が有力視されているらしい。
地元には、巨人がライスワインを醸造・保管するために石壺を作ったという伝説も残されているとのこと。
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なかなか奇怪な場所である。
まだ真実が確定していないというのもロマンがある。
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また、この辺りはインドシナ半島の激戦地だったということで、石壺の脇に爆撃の跡だという大きなクレーターがあった。
当時、洞窟はシェルターとしても機能していたらしい。
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世界遺産というのもそうなのだが、この平原が実に心地良い。
軽く汗ばむ程度の気候で、カラッと涼しい風が吹き抜ける。
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夏の北海道と言われてもおかしくないような気持ち良さだ。
敷地内には観光客の姿はほとんど見られず、地元民らしき家族がのんびりと過ごしていた。
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謎の巨大石壺自体も奇妙な光景なのだが、これだけ存在感のある遺跡なのに観光客がほとんどいないというのも、全くもって奇妙な話である。
「世界一観光客が少ない世界遺産」の異名があったラオス南部のワット・プーよりも人がいない。
このジャール平原が世界遺産に登録されたのは2019年。
いざ観光客を呼び込もうという段階で例のパンデミックが発生し、そのまま観光地として栄えるタイミングを失ってしまったのかもしれない。
世界遺産にも登録された謎の古代遺跡、郊外の温泉地、避暑地のような気候、トレッキングができる山々……。
外部の人間からすると、観光地としてのポテンシャルは十分にあるのに、それを全く活かそうとしないのは非常に勿体無いことに思える。
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さて、そんな感じで遺跡見学を楽しみ、ゲストハウスでしばらく休憩。
日が暮れかけた頃に、夕食を食べに外に出たのだが、ゲストハウスの周りにはびっくりするくらい食堂がない。
泊まる場所はたくさんあるのに、周辺に食べる場所が全くないというのは納得できない。
小さな売店はいくつかあるので、カップラーメンなんかは食べることができる。
ふと、人が集まるバスターミナルに行けば食堂があるかもしれないと思って行くと、案の定あった。
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夕食は安定の美味しさだったが、最後の最後まで観光客に優しくないポーンサワンであった。
旅がスムーズにいけば「物足りない」と言い、スムーズにいかなければ悪態をつくという、我ながらわがままな人間である。
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