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6/17 温泉地へ行くはずが…

『地球の歩き方』には、ヌブラ渓谷に点在する村として以下の3つが紹介されている。

デスキット(Deskit):周辺で最も大きい村。
フンダル(Hundar):砂漠の端にある村。
トゥルトゥク(Turtuk):旧パキスタン領。紛争後にインドに組み込まれた。
パナミック(Panamik):温泉が湧いている村。

トゥルトゥクとパナミックに訪れるつもりで、昨日のうちにバスの時刻を聞いておいた。
すると、トゥルトゥク行きのバスは今はなく、パナミック行きのバスは14時半に出発するということだった。
公共交通機関がないトゥルトゥクへは、タクシーを利用することもできるが、一人だと高額だ。
ヒッチハイクという手段もあるが、実際のところそこまで興味はなかったので諦めた。
その代わり、久しぶりに温泉に浸かりたかったので、パナミックには訪れることにした。


午前10時にゲストハウスをチェックアウトし、ブランチを食べる。

バナナシェイクを頼んだら、店主が向かいの八百屋から、文字通りバナナを投げてもらっていた。

搾りたてのバナナシェイクである。

バスターミナルとは名ばかりの空き地

その後、バスターミナルのオフィスにリュックを預け、バス発車の時刻まで村内を散策する。

デスキットは周辺で最も大きな村とはいえ、たかが知れている。
電力事情は全く安定しておらず、ゲストハウスでは頻繁に停電が発生していた。
突然の停電はインドあるあるだが、ヌブラ渓谷に至っては、電気が使える時間のほうが短いといっても過言ではない。

なお、ぼくは「Vodafone India」という通信業者のSIMカードを利用しているのだが、ラダックはカバー範囲外なのか、レー市内ですら圏外なのだった。
だから、Wi-Fiを捕まえられる場所にいない限り、通信できない状況が続いている。
強制的なデジタルデトックスだが、ラダックは文化も自然も独特で美しいし、頻繁に連絡をとるような友達もいないので、特に不都合はない。

ラダック風の小テーブル。欲しいけど、持って帰れない。
野生のロバ

ヌブラ渓谷では、以下のような看板をよく見かけた。

カラコルムはインド最北端の山脈。
カニャクマリはインド最南端の岬。
Bharat とは、インド人によるインドの呼称らしい。
国境問題に揺れるラダックにおいて、国民意識の統合を目指す意図があるのだろう。

集落からデスキット・ゴンパまで歩いて1時間くらいだったので、昨日は訪れることができなかった僧院に行くことにした。

13時前にバスターミナルに戻ると、すでにバスの中には乗客がいたので、ぼくもバスで待つことにする。
noteの下書きを書いて時間を潰す。

重要な物流の役割も担っているようで、小さなバスの屋上や座席の下に大量の荷物が積まれていく。

定刻通り、14時半にバスは出発。

車窓からの景色を堪能していたのだが、とんだミスをしてしまう。
なぜか、源泉が湧くパナミックがバスの終点だと思い込んでいたため、渓谷の壮大な風景を楽しんでいる間にパナミックを通過してしまったのだ。

気づいた時に下車して、ヒッチハイクで引き返すという選択肢もあったが、せっかくなのでこのまま終着点まで行ってしまおうと考えた。
どうせ当てのない旅なのだ。
デスキットから大量に積まれていた荷物の大半は車内に残っていたし、乗客もまだたくさんいた。
おそらく終点はそれなりに規模の大きな村なのだろう。

本来の目的地だったパナミックから1時間ほど進んだところの集落で、荷物や乗客の半分が降りた。
何だか急に不安が押し寄せて来たので、ぼくも一緒に降車してしまった。
しかし、後から考えると最後まで乗っておくべきだったのだ。

ゲストハウスを探して集落を歩いていると、いつの間にか集落の端まで来てしまった。
乗客の半分が降りたとは思えないほど、何もない場所なのだ。

しょうがないので、何もない道をさらに進んでいくことにした。
時刻は17時半。ラダックは標高が高いので、まだまだ外は明るい。

何もないとはいえ舗装された道路は続いているし、実際のところは民家が点在している。
最後の手段として、普通の民家にお願いして、寝床だけでも確保するつもりだった。
日が暮れ始める19時までには決着をつけたい。

荒れ果てた一本道をひとりで歩いていると、「なぜ、パナミックを乗り過ごしてしまったのか」とか「なぜ、終点まで行かなかったのか」と自分を責める気持ちが出てくる。
しかし、道中の風景があまりにも雄大で、そんな後悔もちっぽけなものに思えてくるのだ。

写真だと伝わりにくいが、綺麗な緑色をした石が多い。
ちゃんと加工したら、高い値段がつくのではないかと思う。

1時間ほど歩き、小さな峠を越えたところで、ようやく隣の集落が見えてきた。

何がなんでも、ここで寝床を確保するしかない。

最初に出会った村人に「ゲストハウスを探している」と伝えると、「ゲストハウスはないが、ホームステイならある。この先を500mくらい行ったところだ」という返事。
ホームステイといっても、本当の民家に泊まるわけではなく、ゲストハウスほど豪華ではない宿泊施設といった感じだ。

言われた通り500mほど進んだところで、すれ違った村人に再び「ホームステイを探しているんだ」と伝えると、「この先を5分くらい歩いたところにある」とのこと。

さらに奥まで進んでいくと、片手に携帯を持ったおじさんが向こうから歩いてきて、「ホームステイを探しているのか」と、ぼくに尋ねてきた。
どうやらさっきぼくが道を尋ねた誰かが、先回りして連絡を入れてくれたようだった。

おじさんに促されて、「ホームステイ」と掲げられた敷地に入る。

彼が声をかけると、建物の奥からオーナーらしき人が出てきて、部屋を案内してくれた。
寒村にあるとは思えないほど、清潔感のある部屋だった。

時刻はすでに19時前だったが、まだ外は明るかったので、ちょっとだけ集落を散策することに。

自家製バターを作っているところ
小さな集落だが、小学校がある
何と高校もある
井戸
部外者は珍しいようで、野良犬が近づいてきて小首を傾げる
牛も近づいてくる

集落の端にゴンパがあったのだが、どうやらこのゴンパに続く道が舗装路の終わりで、同時にバスの終点でもあるようだった。
辺境の中の最果てまで来てしまったのだ。

夕飯。付け合わせの調味料も含めて、今まで食べた中で最も美味しいモモだった。

ホームステイの主人に確認したところ、デスキットに戻るバスは早朝の6時半に来るということだった。
明日はとりあえず、それに乗ろうと思う。

意外と居心地のいい部屋で、ぼくは眠りについた。

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