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6/16 パンゴン・ツォからヌブラ渓谷へ

早朝の湖は霧に包まれている
他人のバイクで遊ぶ同行人たち

ラダック北西部のヌブラ渓谷へ向かうため、朝の7時にパンゴン・ツォを出発。

7時にやって来たシェアジープ

乗車人数は運転手を含めて7人なのだが、どう考えても乗れそうにない。
前列に3人、後列に4人座って、何とか車内に収まる。
身動きが取れないほどぎゅうぎゅう詰めである。

さすがに狭すぎるということで、途中から荷台に移動する。

カシミール出身の才色兼備コンビと一緒に、高原の冷涼な空気を浴びながら、荷台でラダックの絶景を楽しむ。
景色は素晴らしいものの、当然、荷台の座り心地は良くない。
舗装された道は問題ないのだが、オフロードに入るとジープは上下に激しく跳ね、体が浮かび上がる。
その度に、固い荷台にお尻が強く打ち付けられるのである。

道中、バラードのようなヒンディー音楽をスピーカーで流しながら、「なんだか映画みたいね」なんて才媛コンビと3人でキャッキャウフフして、非常に楽しかった。

彼女たちはまだラダックに来たばかりのようで、レー市内や郊外でぼくが行った観光地を紹介した。
市の郊外にあったストゥーパ(仏塔)の説明をしていると、「これと同じような場所がデリーにもあるのよ」と写真を見せてくれた。
写真内のストゥーパに書かれた「南無妙法蓮華経」という文字を指差して、「これは何て読むの?」と聞かれたので、「なむみょうほうれんげきょう、って読むんだよ」と教えた。
すると、「どういう意味なの?」と尋ねてくる。
恥ずかしながら意味はよくわからなかったので、「Love & Peace だ」と適当に答えておいた。

話の流れで、「あなたは仏教徒なの?」と聞かれた。
「うーん、仏教徒……なのかな」と煮え切らない返事をすると、当然相手は「は?」という顔をする。
「ほとんどの日本人は信仰心が薄くて、普段からあまり宗教のことを意識していないんだ。ぼくは特定の宗教は信じていないけど、神様はいると思っているよ。そこの木とか、石とか、このトラックにも神様は宿っている。神様はたくさんいるんだ」と、ぼくは説明した。

パキスタンとの国境州カシミール出身の彼女たちは、ムスリムである。
生まれた時から唯一神の信仰を義務付けられている彼女たちには、ぼくの考え方はまるで理解できないようだった。
以前にもnoteの記事で書いたが、ヒンドゥー教徒が多く、原始的なアニミズムの考え方も残っているタミル・ナドゥ州では、上記の説明で納得してくれる人が多かったのだが、多神か一神かといった大前提が違っていると相互に理解し合うことは難しい。

いろいろな話をしているうちに、景色がだんだんと渓谷めいてくる。
雪解け水などの細かい水の流れが合流し、次第に大きな川が形成されていく。

ラフティングもできる

随所に扇状地のような地形が見られる。
隆起やしゅう曲の後が山肌にそのまま残っているところもある。
植物が生えていない剥き出しの岩山が連なり、大規模な地殻変動によって世界有数の高山を形成しているラダックは、まさに地層の標本である。

13時頃、ようやくヌブラ渓谷沿いで最も大きな村であるデスキット(Deskit)に到着。

岩山に建てられたデスキット・ゴンパを見学する。
このゴンパは、僧院がある場所と大きな仏像がある場所に分かれていて、仏像だけを見学した。
仏教には縁がない彼らにとって、地味な僧院はあまり興味がないようだった。

その後、デスキットからもう少し奥まったところにあるフンダル(Hundar)まで移動する。

デスキットとフンダルの間には砂漠が広がっており、フンダルではラクダ乗り体験ができる。
ぼくたちが訪れたときは、残念ながらラクダの休憩時間だった。

砂漠を堪能した後、16時頃に再びデスキットに戻る。
陽気なインド人たちを乗せたジープは、今日中にレーまで行く。
ぼくはヌブラ渓谷で滞在予定だったので、彼らとはここでお別れ。

ところで、インド人はセルフィー(自撮り)が大好きである。
観光地に着いても、観光よりセルフィーに精を出す。
5分歩いて10分のセルフィータイム、また5分歩いて……という具合で、一向に先に進まない。
ぼくとしてはのんびり景色を楽しみたいところなのだが、彼らはそれを許してくれない。
「君はセルフィーを撮らないのか。何で自分の写真を撮らないのだ」と心底不思議そうに聞いてくるのだ。
ぼくが単独行動を取ろうとすると、「何で逃げるのか」とこれまた怪訝な顔をする。
そのように質問する彼らに、悪気は一切ない。
それどころか、観光のスタイルが違うぼくのことを「退屈なのではないか」と心配してくれている。

ぼくが彼らの行動を理解できないのと同様に、彼らもセルフィーに興味がないぼくのことを理解できない。
価値観が違うのだから、こればかりはしょうがないことだし、この集団の中ではぼくはマイノリティーなので「郷に入れば郷に従え」の精神でやり過ごした。
そんな彼らには辟易することもあったが、概して濃密で愉快な2日間だった。

デスキットでインド人一行と涙の別れをした後、バスターミナル近くのゲストハウスにチェックイン。

夕方、デスキット一帯は砂嵐に襲われた

朝早かったし、移動の疲れもあって、ベッドで寛いでいたらいつの間にか眠っていた。
夜中に少しだけ起きたが、結局12時間くらい寝た。

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