赤い風船
[2010年9月26日の日記]
ジャン・コクトー曰く、「妖精の出てこない妖精の話」。1956年パルムドール受賞作品。
冒頭のシーンから「この映画はタダモノではない」という雰囲気がみなぎっている。映像の美しさがただごとではないのだ。そして主人公の少年も、後ろで流れる音楽も、まるで生きているような風船も、どれもすべてがとても愛らしい。
台詞は非常に少なく、ところどころサイレント映画を彷彿とさせる演出が見える。ストーリーも一応あるといえばあるのだけれど、基本的には少年の日常を追い続けるだけ。だからきっと脚本らしい脚本というのも無いのだろう。
それなのに、この映画はおそろしく魅力的だ。「映画は脚本が命」と考えている僕のような人間のハートも、容赦なく鷲掴みにする魔法のような映画。
まさにこれこそ「映画でしか表現し得ない世界」だ。
「ハートウォーミングとかチャーミングとかファンタジーとかメルヘンとか、そういう類の売り文句が付いてる映画は苦手なのよね」
と長らく敬遠していた己の愚かさを呪った。でも観てよかった。
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