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大手町 - La Pesquera Marisqueria

色々な意味で忘れがたいこの場所に再度訪れた。僕はかつてこの場所で、あわや結婚パーティを台無しにしかねない大失態を犯すピンチに見舞われたのだった。

結婚パーティに余興はつきものだ。僕はその余興の流れでなぜかコーラのペットボトル500mlを一気飲みすることになった。他数人と飲み干す速さを競い合う形で。よせばいいのにムキになり、無理やり流し込んだコーラはすぐさま逆流の兆しを見せ、僕はその場から動けなくなった。笑顔で取り繕う余裕など欠片もなかった。僕は今、恐ろしいピンチに見舞われている。今この場でコーラを逆流させたが最後、見知らぬ人も含めた大勢の人間に「史上最悪の大戦犯」として記憶に刻まれ未来永劫語り継がれる定めは免れない。華やかで晴れやかな結婚パーティの輝かしい舞台の上で、一人焦燥感と絶望感に打ちひしがれた中年男が苦痛に顔を歪める。恐ろしい絵面である。

この耐えがたい炭酸の強烈な息吹を、内臓を駆け巡る噴煙を、僕は果たして意志の力だけで封じ込めることができるだろうか。そんな刹那の葛藤さえ許さぬほどに、コカコーラは無慈悲であった。僕の意識は押し寄せるコカコーラの津波だけに集中していた。これはまさに

I feel Coke

などと悠長なことは言ってられない。ほんのわずかな時間との戦い。早足で同フロア内のトイレへと駆け込むまでの数秒。かつてこれまでの人生でここまで切迫して追いつめられたことはなかった。僕はなんとか最悪のバッドエンドを回避することができた。スカっとさわやかコカコーラ、とはこういうことであったか。しかしトイレは大惨事であった。無論、自分で始末したけれども。

要するに僕は、とても美味しいこの店のパエリアを一度は食べてはいるものの、実質的には食べていないということなのである。

パエリアもアヒージョも最高に美味しかった。特にシェリーを使ったスペイン風ハイボールは、他の店では体験したことのない新しい感動だった。モヒートもお勧めだ。

2016年3月26日の記録

この日はカメラ仲間とはとバスツアーに参加して花見をした後にこの店に訪れた。件の結婚パーティも含めて計3回利用しているお店だけど、とても美味しくて居心地も良くオススメだ。


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