居酒屋で「とりあえずセンスで適当に頼んで」の最適解
めっちゃこんにちは。
「とりあえずセンスで適当に頼んで」
お世話になっている先輩に連れられた飲み会。
よくある光景・要求である。
これは一見シンプルな依頼かのような顔をしているが、かなり気難しい相手ではなかろうか。
上記2つ揃って日常に頻出の単語であるが、要求としてはかなり暴力的であることがお分かりいただけるだろう。
「あなたはこの飲み会の感じや味わいを微妙な点まで悟り、初手の料理オーダーとしての条件・目的・要求に、ふさわしい注文をせよ。」
と言われているのである。
これは半ば闘いである。そう、戦闘センスを磨く絶好の機会でござる。
いつ合戦(飲み会)の連絡が来ても良いよう、刀を研いでいなくてはならない。
殿からの要求に応えるべく、思案を巡らそうではないか。
本稿が、一人でも多くの若手居酒屋侍の判断の助けとなれば幸いである。
この要求に対する解を考える
戦場・戦況の把握は肝要である。
米国の数学者G・ポリアは「いかにして問題を解くか」について、問題の理解の重要性を説く。その3要素は「未知なモノ」「与えられているモノ」「条件」だという。
この要素に当てはめると、
未知なモノ:最適なオーダー
与えられているモノ:参加人数・メンバー・それぞれの趣味嗜好、店舗の業態・メニュー
条件:センスに富み、内容・量が最適であること
であることがわかる。
今回は会社の同じ部署の先輩4名で、自身が最若手である戦況で考えていく。
巻末には主要なメニューリストへのセンス一覧表も掲載している。参考にされたい。
さあ、難題に立ち向かう土壌は整った。いざ出陣である。
団体戦のセンス
まず押さえたい観点は、居酒屋における宴は団体戦であるという点である。
そのため、1人でしっぽりやる外飲みとは異なる考え方が必要となる。
最も留意したいのは、とりわけの観点だ。
恐れるべきは、小鉢で提供される一品料理である。
いくら酒とマッチするからといって、たこわさ・冷奴に手を出してはならない。
待っている結末は恐ろしいものだ。
最初に手を付けた人が食べきらねばならない、もしくは終宴まで肩身狭く卓上に佇むことになってしまう。小鉢のあんなにも悲しい背中を、これ以上生んではならない。
時間軸のセンス
続いては、飲み会全体の時間軸のデザインについてである。
提供順・提供スピード、それぞれ頭の中で起用順を組み立てる必要がある。
あなたは監督だ。先発ー中継ぎ‐抑え、正しく起用せねばならない。
試合序盤から勝ち切るところまで、明確なイメージを持って挑もうではないか。
試合開始のサイレンとともに、ブルペンに行ってもいない鶏釜飯をオーダーしてはならないのは自明であろう。マウンドに上がった鶏釜飯はピッチクロックオーバーを繰り返すのだから。
注文内容のセンス
ここが肝である。注文内容について遺憾なくセンスを発揮していこう。
まず重要になってくるのは、お店の意志の汲み取りである。
"屋号業態"の理解は必須だ。
「宮崎地鶏炭火」なのか「中華酒場飯店」と掲げられているのか。
看板にはお店の強い意思が掲げられている。
入国した居酒屋に忠義を尽くすのだ。
義に反さぬ行動をとるのである。
ここで参考になるのは、"メニュー"なる巻物である。
この巻物はお店から我々へのラブレターだ。
この巻物の暗号を解く鍵がある。
ビジネスシーンよろしく、「結論から話せ」が徹底されているのだ。
ここで例題である。
この巻物から何を読み取ろうか。
巻物には店からのラブコールが多数ちりばめられている。
下記のように目線が動いたのではないだろうか。
つまり、つい注目してしまったものには、強いパワーがある。
まずはお店がアピールするもの、ウリを頼むのが礼儀というものである。
続いて気を付けるべきは、各種盛り合わせである。
焼鳥盛り合わせなど、気軽に発注したくなるが、これはセンスの表現を放棄したものと取られかねないので注意が必要だ。
加えて、【刺身盛り合わせ 1,580円】が1人前価格で安易に発注すると、4人前”6,320円”という恐ろしい金額になることを鑑みると、最年長者の顔色をうかがう必要も忘れてはならない。
そこからは参加メンバーが選ぶドリンクとのマリアージュを大切に、選び進めていただきたい。
立ち振る舞いのセンス
最後に、若者としての振る舞いのセンスについてだ。
大切にしたいのは、「らしさ」と「ギャップ」である。
まず若者らしさ、を発揮し揚げ物のオーダーは王道だといえる。
オーダー時「若いねぇー」という言葉が添えられる。
ここだけの話であるが、ポテトフライを好んで一番たくさん食すのが60代の先輩だったりするから、人生は面白い。
続いてはギャップである。
逆に若者らしからぬ「通」ぶったオーダーも、「知ってるねぇー」の合いの手が気持ちよくなる。
様々な策略を巧妙にミックスし、オーダーに挑もうではないか。
結び
巻末付録として、今回検討した事項をまとめた表を置いておく。
絶対的な唯一の解など存在しないことを念頭に確認いただきたい。
剣豪、宮本武蔵も「千日の稽古を鍛といい、万日の稽古を錬というものである」といった。理論や方法論は単なる手段であること、改めて認識し本来の目的を希求したい。
千日は約3年間、万日は約30年間だ。居酒屋道の道のりは長い。ひた走る侍たちに敬意を表する。
さて、声高に叫ぼう。
「すみませーん!!!!注文よろしいでしょうか!!!」
夢見がちな居酒屋侍、今晩も孤軍奮闘中です