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感情を風景に描き込む。ムンク展

ムンク展 ー 共鳴する魂の叫び
(東京都美術館)

<展示作品>
・自画像
・地獄の自画像
・病める子
・夏の夜、人魚
・神秘の浜辺
・叫び
・吸血鬼
・マドンナ
・マラーの死
・すすり泣く裸婦
・フリードリヒ・ニーチェ
・疾駆する馬
・星月夜
・自画像、時計とベッドの間
など

作品によって描き方を変えて描く

まず始めにムンク展で驚いたことは、同時期に描かれた作品にも関わらず、描き方が違うものがいくつかあるということです。普通、画家の絵画は時代が変わるにつれて独自の描き方を編み出すものです。そのため、作品は画家の初期から晩期につれて徐々にタッチが変わるのですが、ムンクの場合は同時期の作品にもかかわらず描き方が全く違っていたりします。

ムンクは、一般的な上手な描き方と、独自の描き方の両極を描くことで自分の思考が誤った方向に行き過ぎないように、客観的に絵を描くことで分析できるようにしていたのかもしれません。

また、平均的なデッサン力を向上させることで、独自の描き方のレベルを上げることを狙ったのかもしれません。

その場の心象を風景に描き出す

ムンクの有名な作品である「叫び」は、うねうねした独特の線から不気味な雰囲気がします。印象画のようにも思えますが、どこか違った雰囲気をかもし出しています。

ムンクの絵画に見られる独特の線は、その場にいた人が感じた感情を絵の中に描き出しているようです。モネなどの印象画は、風景の中で一瞬に感じた印象(美しさ)を表現しているものですが、ムンクの場合はその場にいる人が感じた心象を描いていると言えます。

(ムンクの絵画はあくまで印象画では無いです)

アートは研究して描く

ムンクの作品には、連作がいくつかあります。(連作とは、1つのモチーフに対していくつも作品を描くことを言います。)ムンクの連作は、一般の画家と比べると独特なもので、連作ではなく、研究や実験と言った方がいいかもしれません。

作品「吸血鬼」のように、1つの絵に対して画材を変えて描いたり、版画にしたり、背景を追加したりすることで、どうしたら一番自分の意図した通りに見せられるかを研究していたようです。

必要な線しかキャンバスに描かない

ムンクの絵の描き方には、必要以上に色を塗らないという特徴もあります。通常の油絵は、いくらか塗り重ねることで絵を描いていくはずなのですが(少なくとも学校では塗り重ねるように言われる。)、ムンクの作品は塗り重ねたような線があまり見られません。なんならキャンバスの地が見えちゃってたりします。(学校でやったら怒られそう笑)

必要最低限の色と線を、狙った場所に一発で描いていく。「これだけあれば、俺の言いたいことは伝わる!てか、これだけだから伝わるんだ!」という感じが伝わってきます。

逆に「太陽」という作品は、日の光をこれでもかというくらいに絵の具を盛って描いていて、ムンクがこの風景の中で日光に何を感じたのかがわかるようで面白いです。

生だからこそ引き立つムンク作品

僕は展示を見にいくと、大体気に入った作品のポストカードを買って、何かあったときに思い出せるようにしておきます。とはいえ、生の作品とポストカードでは立体感、絵の具の色、大きさの違いなどの影響で、作品を見たときの感じ方が変わってしまうものなのですが、今回のムンクの作品は、今まで自分が見た絵画作品の中でも群を抜いて本物の素晴らしさを教えられました。

本物の大きさだからでこその線のインパクトや、色による心象が伝わるものでした。写真や印刷が進歩しても、アーティストの描く一点ものの絵画は完全にはコピーすることができなく、作者の気持ちを感じるには本物を見る必要があることに気づかされました。

ムンクの作品の中で「叫び」「マラーの死」「太陽」は特に実物を見て欲しいと思います。

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