【中国企業の真実】TikTok中国本土版利用規約を読み解いてみた
利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
TikTokは、中国のインターネット大手企業である字节跳动（バイトダンス、ByteDance）が2017年にリリースした動画SNSです。リリース直後から日本を含めた全世界で若年層を中心に大きな流行を見せており、2022年には利用者が15億人を突破したとも言われています。
今回、「抖音(Douyin)」（以下「TikTok中国本土版」と言います）の利用規約「Douyinユーザーサービス規約（“抖音”用户服务协议）」をウォッチしていきます。重要な3つのポイントに注目して利用規約をウォッチしていければと思っています。
最後までよろしくお付き合いください。
TikTok中国本土版利用規約である「“抖音”用户服务协议」の原文は中国語であるため、今回は、Google Translateによって日本語へ翻訳されたものを利用します。この翻訳版はByteDanceが用意している公式版ではなく、翻訳により原文とは異なる解釈となる場合があります。あらかじめご了承ください。
運営会社
TikTok中国本土版の運営会社は、北京抖音科技有限公司であることがTikTok中国本土版利用規約に明記されています。
「Douyin」とは、Beijing Douyin Technology Co., Ltd. (旧名「Beijing Weibo Vision Technology Co., Ltd.」) およびその関連会社 (以下「当社」という) が合法的に所有および運営する Douyin および Douyin 関連のバージョンを指します。
“抖音”指北京抖音科技有限公司（曾用名“北京微播视界科技有限公司”）及其关联方（以下简称“我们”）合法拥有并运营的抖音及抖音关联版本
中国に限らず多くのIT企業は、持株会社の下にセグメント別の事業会社（子会社）を持つことが一般的ですが、中国IT企業におけるセグメント別の事業会社とは、展開地域×事業規模、となることが多いように見受けられます。
展開地域とは、中国本土とそれ以外であり、独自の法体系を持つ中国本土に適した中国法人、アメリカ法/税制に対応したアメリカ法人、イギリス法/税制に対応したシンガポール法人または香港法人といった感じです。
事業規模とは、中国の場合、ユーザー数の多いITサービスを運営することには個人情報セキュリティ規制の面で高いハードルがあることから、事業規模を小分けにするために分社を進める傾向があります。
ByteDanceの場合は、セグメントごとに中間持株会社を持ち、その下に事業会社が連なっています。税制面と秘匿性で有利なケイマン法人も駆使したストラクチャーです。
なお、TikTok国際版の運営会社は、シンガポール法人であるTikTok Pte. Ltd.となっています。
中国法および当局規制
同業他社である「腾讯(Tencent)中国版利用規約」のウォッチの際にも触れましたが、中国本土で大規模に展開されるサービスを利用するにあたっては、中国法および当局規制を無視することが出来ません。
1.4 当社は、Douyin の製品、サービス、または運営のニーズに基づいて、本契約に基づく特定のサービスを当社の関連会社または第三者に提供または運営することを一方的に決定する権利を有していることをご理解ください。かかる関連サービスをご利用の際は、該当する商品ページに表示されている情報や関連規定、規約、その他の文書の内容をよくお読みいただき、当該サービスをご利用いただくことに同意したものとさせていただきます。お客様間の権利と義務も、本契約とプラットフォームの規則に拘束されます。また、当社は、かかる関連会社または第三者に対し、法律および規制の要件に従ってお客様の正当な権利および利益を保護するよう要求します。
4.2 以下の違法なコンテンツを作成、コピー、出版、または配布することは許可されていません。
(1) 憲法で定められた基本原則に反対する。
(2) 国家安全保障を危険にさらし、国家機密を漏洩し、国家権力を転覆し、国家統一を損なう。
(3) 国家の名誉と利益を損なうこと
(4) 英雄や殉教者の行為や精神を歪曲、中傷、冒涜、侮辱、中傷、またはその他の方法で英雄や殉教者の名前、名誉、名誉を侵害すること。
(5) テロ、イスラム過激主義の促進、またはテロ活動や過激活動の実行の扇動、
(6) 民族憎悪、民族差別の促進、および民族統一の弱体化
(7) 国の宗教政策を弱体化させ、カルトや封建的迷信を促進する。
(8) 経済社会秩序を混乱させ、社会の安定を損なうような噂や虚偽の情報をでっちあげ、広める行為。
(9) わいせつ、ポルノ、ギャンブル、暴力、殺人、テロ、または犯罪を扇動する行為を広める。
(10) 他人を侮辱し、又は誹謗中傷し、他人の名誉権、プライバシー権、肖像権、知的財産権その他の正当な権利利益を侵害する行為。
(11) インターネット広告に関連する法律および規制に違反する商業広告。
4.7 情報コンテンツの公開に関する当社の詳細な規定については、「Douyin Community Self-Discipline Convention」およびDouyin Rules Centerからの関連発表を参照してください。お客様の行動が上記の契約に違反している、または違反する可能性があると当社が信じる合理的な理由がある場合、当社は事前の通知なしにお客様に対するDouyinのサービスの全部または一部を終了するなどの対応を行い、関連当事者の責任に対して法的措置を講じる権利を有します。
TikTok中国本土版では、利用規約のほかに「抖音社区自律公约（Douyinコミュニティ自主規制規定）」というユーザーへの投稿ルールを定めており、その中では、「国旗、国歌、国章、人民元、軍旗、軍歌、軍章、その他特別な意味を持つ記号、標識、効果音を軽蔑、冒涜、燃やし、落書き、踏みつけ、改ざんするなどして侮辱、なりすまし、歪曲、中傷する行為」を明確に禁じています。
「腾讯(Tencent)中国版利用規約」のウォッチの際にも触れましたが、「中華人民共和国国家情報法（中华人民共和国国家情报法）」や「中華人民共和国サイバーセキュリティ法（中华人民共和国网络安全法）」、「中華人民共和国データセキュリティ法（中华人民共和国数据安全法）」といった「国家安全保障」に関する規則が上位にくる構造になっています。
国家情報法では、関係する機関・組織・国民に対し、国家安全機関、公安機関の情報部門及び軍の情報部門が行う国家情報活動に対して必要な支持・援助・協力を行うことが義務付けられており、サイバーセキュリティ法やデータセキュリティ法においては、ネットワーク運営者等は、国の安全の維持・保護及び犯罪捜査に係る活動に対して、技術的支援及び協力を拒むことは出来ません。
こうしたことから、TikTok運営会社は「事前の通知なしにお客様に対するDouyinのサービスの全部または一部を終了するなどの対応を行い、関連当事者の責任に対して法的措置を講じる権利を有します」ということになります。
全国青少年インターネット文明規定
中国では、10代のユーザーがインターネットを利用する場合、「全国青少年インターネット文明規定（全国青少年网络文明公约）」を遵守する必要があります。
オンライン学習を得意とし、悪い情報の閲覧を避けてください。
正直かつ友好的にコミュニケーションを図り、他人を侮辱したり欺いたりしないでください。
自己防衛の意識を高め、ネチズンとの安易なデートを避ける。
ネットワークのセキュリティを維持し、ネットワークの秩序を乱さないこと。
身体的および精神的健康に有益である必要があり、仮想の時間と空間に耽溺するものではありません。
原文
要善于网上学习，不浏览不良信息
要诚实友好交流，不侮辱欺诈他人
要增强自护意识，不随意约会网友
要维护网络安全，不破坏网络秩序
要有益身心健康，不沉溺虚拟时空
上記の規定は、江沢民指導部時代の2001年に制定されたものとのことですが、習近平指導部時代となった2023年に「新時代青少年インターネット文明規定（新时代青少年网络文明公约）」としてバージョンアップが図られたようです。
国を強くするという使命を胸に刻み、時代の新たな世代がこれを真摯に実践すべきである。
私たちは協力して良いものを作り、インターネットを礼儀正しく使用する必要があります。
善と悪、美と醜の違いを知り、誠実さと友情を永遠に受け継いでください。
良い中国の物語を広め、若者の愛国心を表現しましょう。
個人情報の漏洩を防ぎ、噂には耳を貸さない。
依存症を予防し、ご飯サークルの混乱を避けるためにも、ネットは適度に利用しましょう。
不純物から離れ、自分の富を誇示せず、詐欺に注意してください。
他人に親切にし、オンラインでの暴力を拒否し、利益を維持していじめを避けてください。
オンラインで新しいことを学び、より頻繁に学習すれば、デジタル リテラシーは常に向上します。
ネットワークのセキュリティはあなたと私にかかっているので、一緒にクリアで良好な環境を構築しましょう。
原文
强国使命心头记，时代新人笃于行。
向上向善共营造，上网用网要文明。
善恶美丑知明辨，诚信友好永传承。
传播中国好故事，抒写青春爱国情。
个人信息防泄露，谣言蜚语莫轻听。
适度上网防沉迷，饭圈乱象请绕行。
远离污秽不炫富，谨防诈骗常提醒。
与人为善拒网暴，守好底线不欺凌。
线上新知勤学习，数字素养常提升。
网络安全靠你我，共筑清朗好环境。
今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。
なお本投稿における、発表内容は発表者個人の見解に基づくものであり、本投稿にて取り上げられている組織及びサービスの公式見解ではありません。
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