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【美しい日本語】②「星夜一縷」

本日のお品書き📝


前菜🥗: 体調はどうですか?

こんにちは~!🌷
お越しいただきありがとうございます。
投稿を再開してから、2回目の発信になります。
皆さん体調はどうですか??  
特に今はGW明けで、何となくだるい、気分が落ちてる、、のような体調不良を感じている人も多いのではないでしょうか?
私も、これはいつものことですが、「あ~、生きるの辛いな」「体が重いなぁ」等日々思いながら生活しています🥹
でも、noteの投稿を初めてから、
どんな日本語をとりあげようかな?
どんな内容がいいかな~~
と、憂鬱な日々の中に少しのわくわくを取り入れることができていて、noteを再開して良かったなと思っています。
また、前回の投稿を読んでいただいた方、ありがとうございます!✨
いいねやコメント、とても嬉しかったです。
励みになります!!
今後もぜひよろしくお願いします。
私の記事を通して、今回私の投稿を初めて読んでくださるという方、前回の投稿も読んでいただいた方の、日々溜まっていく体や心の疲れを少しでも取り除くお手伝いができたらいいなと思いながら執筆していきます😌
ではでは・・・
前菜を召し上がっていただきましたので、スープから順にお持ちいたします。


スープ🍲:「星夜一縷」の意味

「星夜一縷」の意味:
願いをわずかに思い続けること。
消えそうな想いを星に託すこと。

メイン🍗:「星夜一縷」オリジナルの短い小説

タイトル:「チョココロネ」

夜の公園は静かだ。
昼間は子供たちの遊ぶ声で賑わっているが、
太陽の出番が終わり、元の場所へ帰っていく
のと同時に子供たちもそれぞれ、家に吸い込まれるように公園を離れていく。
仕事帰り、一息つくためにこの公園に寄ってみた。
しーんと静まり返る大きな公園に、私はぽつんと
1人でベンチに腰を下ろす。
ふわりと冷たい風が私に向かって吹きつけ、ひゅうひゅうという音が静かな空間に響く。
最近気に入っていて、親友の梨子にも好評である白のコート、手袋を身につけてきたが、それでも夜の公園は冷えきっていて、体がぶるぶる震える。
そういえば、寒い夜には星が綺麗に広がると誰かから聞いた気がする。
さっき自販機で買ったホットコーヒーのプルタブをカチッとあけ、冷えきった体内を温めるように液体を流し込みながら見上げた瞬間、星3つがつくる三角形が目の前に広がる。

きれいだなぁ
3つの星のうち、この赤く輝く星の名前は
ベテルギウスだった気がするなぁ。

コーヒーの缶を口から離しながら、私の頭上に
広がる三角形は、冬の大三角形と呼ばれている
ものだ。
もう一度夜空を仰ぎ、三角形を形成している
残り2つの星の名前を思い出すとと共に、蓮太
と過ごしたあの日々に思いを馳せていた。



高校3年の秋、いつものように学校に行き、家に帰ると、仕事着をバッグにせわしなく詰め込んでいる母の姿があった。
ブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけながら母の
準備の邪魔にならないように静かに言葉を発することにした。

「ただいま、お母さん」
「あ、風花。お金は机に置いておくから適当に晩御飯食べておいてね、じゃあね。」

財布にガザガサと手を突っ込み、数千円お金を置いてバタバタと出ていく母の背中を見送った。
私は、夜勤のお仕事をしている母と2人暮らしだ。
私が2歳になる前に父親とは離婚したらしい。
「私を何度も殴ってきたりね、他の女の人といるところを見ちゃったりしたのよ」と、母から何度も父親がいかに悪人だったのかを耳にタコができるくらい
聞かせられてきた。
それもあってか、私は大人の男性にあまり良い印象が持てなくなっている。
離婚後、母は1人で私を育ててきてくれた。
テレビの音だけが響くリビングで、母が置いてくれたお金で買ってきたコンビニのパスタをずるずると1人ですする。

今日も1人か。。

もう既に日常化しているのに、この狭いリビングで1人でご飯を食べることに毎回寂しさを感じてしまう。
母が休みの日は向かい合って一緒に食事をしながら会話をするが、仕事で疲れきっているのか、最低限自分の部屋から出てくることはなく、せっかくの休みだというのに一緒に出掛けるなんてことはあまりない。

仕方ないよね、お母さん私のために頑張ってくれてるんだもん

そう自分に言い聞かせていても、ついつい喉の奥から込み上げてしまうものを奥底に押し付けるように、あと少し残っているパスタを口に詰め込む。
心の奥がぎゅーっとなってしまうのは、梨子の話に羨ましさを感じているからだと思う。
「今日はね、家族みんなで焼肉を食べたの。家でお肉を焼いて食べたから、ゆっくり食べられたの~」
「そうなんだね、いいね」とキラキラオーラをまとう梨子に笑顔を向けようとしても、私は顔がどうしても引きつってしまう。
「あ、今度風花もうちにおいでよ」と梨子は優しく誘ってくれるが、梨子の家だけにはどうしても行く気にはなれない。
パスタの入った容器が空になり、お風呂につかる。
入浴後、宿題を終えてベッドで横になった。
ベッドで先に寝る準備を終えている、大好きなくまとうさぎのぬいぐるみを、おもいっきり抱きしめながら眠りについた。



気がつけば、高校生活もあと1ヶ月で終わるところまできた。
腰の重い私をいろんな場所に連れて行ってくれたり、笑わせてくれたりした梨子と卒業後は別々の進路となる。
梨子はパティシエになるために留学し、
私は大学に進学予定だ。
友だちを作ることが苦手な私の手を引いて、
持ち前の笑顔で引き連れてくれた梨子と
離れることは悲しいが、「いつか帰国するからその時は会おうよ」という梨子の提案を心のお守りにして、私も大学生活を頑張ろうと思えた。



高校の卒業式当日。
普段母は夜に仕事をするのだが、よりによって
今日は昼間も仕事をしなくちゃいけなくなった。

ねえ、どうしても行かなきゃいけないの?
私の卒業式よりも仕事が大事なんだね、はいはい
もういいよ。

自分でも子供じみた言動だと思ったが止めること
は出来ず、ごめんねと言いかける母を見向きもせず
家のドアを開けてきた。
どうにもならないことは分かってるけど、今日だけは私のために時間を使ってほしかった。
謝罪なんて今は聞きたくなかった。
卒業式を終え、「ちょっと待ってて」と両親に投げかけたのち、梨子が私に駆け寄ってくるのが見える。
卒業式の最中も、私の心の中でもくもくと渦巻くものが大きくなり続けていて、梨子と話したら、優しい梨子にさえも当たってしまいそうだ。
これ以上、卒業式のこの日を最悪な日にしたくない。
罪悪感を抱えつつ、どうにもならないこの感情をどうにかしたくて、「ごめん、ちょっと行くとこあるから」と梨子に言ってから屋上に逃げ込んだ。
今まで母が学校の行事に来なくても、夜一緒にご飯を食べられない日が続いても、ずっとずっと「寂しくないよ」と私が私を必死に抱きしめてきた。
でも、今日だけは抱きしめきれない。
だって1週間前までは母が卒業式に来る予定だったし、母も楽しみにしてくれていた。
それなのに・・・。
今まで心の奥に押し込んできたものと今日1日で
新たに発生したもやもやが合わさり、もう私の
体の中にはおさまりきらず、どかんと爆発した。
上を向いてもとどまることを知らないかのように、しずくがどばどばと流れ落ちる。
きれいな青空が広がっていて、気持ちのいい気候であるが、それにさえもイライラしてしまう。

なにしてんのー?

背後から急に聞き慣れない声が投げかけられたことに私はギクッとなる。
振り返ると遠くから走ってくる蓮太の姿があった。
元々大人の男性が苦手な私は、ほとんど男子と話したことはなく、蓮太はクラスメイトではあるが、挨拶を1度したか、してないかくらいの関係性だった。
私の近くまで距離を縮めた蓮太は、私の顔がぐちゃぐちゃになっているからか、一瞬目を見開いたけれど、何も言わず、屋上の手すりにもたれかかる私の隣に並んだ。
蓮太がきてから、沈黙が数分続いた。

あ!そういえば、購買で買ったチョココロネあるから一緒に食べようよ

柔らかい風に優しい声を溶け込ませながら
チョココロネを半分に割る蓮太に
「うん、ありがと」と蓮太に届いたか微妙な、かすれる声をなんとか発して口に入れた。
この瞬間、こんがりと焼きあがった
生地のしっとりさと、溢れ出てくるチョコクリームが口いっぱいに感じられ、糖分が一気に体中にいき渡っているような感じがした。
隣に立つ蓮太を見上げると、子供のように、がむしゃらにチョココロネにかじりついている。

「俺、チョココロネがこの世の中で1番好きなんだ。お腹が膨れて食べ終わったらものすごい満足感を味わえる。そこがいいなぁって。」

「チョココロネが1番って珍しいね?」

「そうかな?チョココロネが好きな理由は味だけじゃないんだ。まず、あの形が可愛い。ヤドカリの貝殻みたいに俺には見える。そしてね、、、、、」

これまで男子と話してこなかった私がこんなに
会話を続けられていることへの驚きを感じながらも、蓮太がいかにチョココロネが好きなのかを
15分くらい聞いた。
その後も趣味の話を聞かせてくれたり、
お互いの好きな映画が同じだったことを知って
盛り上がったりしているうちに、私は少しずつ
落ち着きを取り戻していた。

「ヤドカリみたいにさ、俺たちもチョココロネのパンにある穴にするするって入ってさ、寂しい時とか心を落ち着けたい時に、体を埋められたらいいのにね。そして外で何が起こってるか確認するために、何かあったら対応できるように、頭だけはパンから出しとくの。」

「またチョココロネの話?」

またチョココロネの話に戻ったことに、思わず吹き出してしまった私を見た蓮太は口を膨らませて見せる。

「でも、パンに入ったらチョコクリームで体がベトベトになるよ?」

蓮太は口の形を元に戻し、手に持っている、あと少し残ったチョココロネの穴をじーっと見つめながらゆっくり頷く。

「うん、それでもいいよ。パンとチョコクリームが結成してる仲良しの輪に受け入れてもらえている気がして。」

私も蓮太と同じように、あと2口くらいとなったチョココロネをゆっくりと見つめる。

今朝家を出る前、教室で梨子が駆け寄ってくる時、私もパンに包まれているチョコクリームの仲間になれてたらよかったのになあ。
私がチョコクリームの友達だとパンが知れば、私のことも包んでくれたかもしれなかったのに。
そしたら母に当たることなく、梨子の駆け寄ってくる姿を遮らずに済んだかもしれないのに・・・

さっきまで頬を伝っていた水分がまだ微かに残っていることに気づき、右手で急いで拭き取る私を見て、ふふと笑う蓮太はティッシュを私の左手に丸め込む。

「泣いてたから・・・?」
「んー、まあね」

蓮太は、もらったティッシュを頬に当てながら問う私を目の端に捉えながら、チョココロネの入っていた袋をきれいに折りたたみ、持参していたビニール袋の中に入れた。

「明日さ、時間ある?遊び行こうよ!」

チョココロネの話や映画の話はしたけど、
私たちは今日初めてこんなに話したし、
友だちと言えるかどうかわからない関係性だ。
それに、男子と2人で出かけるのはどうしても
躊躇してしまう。

「どうかな?もっと風花さんと話したくなってさ」

まっすぐ私の目を見つめながら言う蓮太の瞳は
さっきまでのおちゃらけた顔とは違って、真剣に私のことを見つめている。
思わず私は、「うん、遊ぼっか」と首を縦にふると、
蓮太はまたあのおちゃらけの顔に戻っていた。




卒業式の翌日から、大学4年の現在まで、蓮太と3ヶ月に1回くらい遊ぶようになり、知り合いから友達と呼べるであろう関係性にまで進展して、今では月1で会うようになっていた。
最初は特に考えず、床に落ちてる服をぱっと着たり、メイクもリップと眉毛だけしていたりした。
でも最近は何を着ていこうかと1時間は悩むし、
メイクはスキンケアをバッチリしてファンデやアイシャドウ、チークも追加するようになっている。
喧嘩をしたとしても、次の日蓮太からのLINEがきているだけで、飛び起きて全てを許してしまう。
会う前日は、今まで感じたことのないドキドキを感じるし、手が何かの拍子に触れた際にはとんでもなく心臓の鼓動がドクドクだ。
梨子にこの一連を話すと、

「あの風花がそんなことになってるの!?」

梨子は立ち上がり、右手に持っていたビールが入っているグラスが今にも落ちそうなくらい、ぶるぶる体を震わせている。

梨子は、私が大人の男性に苦手意識を持っていることを知っているのだ。

「もう、驚きすぎだよ」

梨子の持つグラスのピンチを救うべく、私の手にグラスを移しながら、座っていた椅子に戻るよう、梨子を促す。
実は2日前、「帰国することになったからご飯行こうよ」と留学している梨子からLINEが入った。
卒業式の日以降何も話していないので、行くか迷ったけれど、梨子に卒業式の日のことを謝らなきゃと思い、行くことに。

「卒業式の日はごめんね。ほんとはあの日もたくさん話したかったけど、心が苦しくてどうにもならなかったの。でもそれはただの言い訳。本当にごめんなさい」
「ううん、それは全然いいよ。そんなことより風花どうしてるかな?って心配だった」

床に平行になった私の頭を2回ほど撫でながら、梨子は優しく私を受け入れてくれたのだ。


「正直、こうなってしまってる私が1番びっくりしてる。恋なんて私には無縁だってずっと思ってたんだもん。こんな気持ちは初めてでよく分からないよ」

そう言う私に、口元を抑えても隠しきれていないニヤニヤを浮かべている梨子は「それはもう恋だよ」「付き合っちゃいなよ!」と背中をぽんと叩かれた。

ああ、これは梨子の言う通り、恋なのか
蓮太と会う前のドキドキやワクワク、会ってからも
自分でもわかるくらい、顔を赤らめてしまうのは
やっぱり恋なのか
もしかしたらと思ったけれど、今までにない感情だったからよく分かんなかった・・・

「ねえ、どんな所が好きなの?」

恋だと分かり、今度は私の体が震えだしそうになる。そんな私の二の腕を人差し指でつつきながら聞く梨子のキラキラした目を見つつ、蓮太とのこれまでの思い出を振り返りながらゆっくり口を開いた。

「優しくて、あたたいところかな。あとは欲しいタイミングに私の欲しい言葉をくれるところも。一緒にいる時は、チョココロネのパンみたいに私を包んでくれるし、ここが私の居場所だと言ってくれるの」
「ふふ、チョココロネ?何それ」

ケラケラと笑う梨子を横目で見ながら言葉を続ける。

「でもね、」
「でも?」
「一緒にいる時は安心させてくれるから一瞬の安心感は得られるんだけど、長期的な安心感は得られないの」
「というと?」

梨子は私の言葉を待ってくれている。

「んー、例えば1ヶ月後会う約束はできても、2ヶ月先の会う約束はできないの。2ヶ月先俺はここで生きているか分からないから、って。あとね、よく遠くを見つめてるの。いつもはおちゃらけた顔なんだけど、ふと蓮太の横顔を見ると真顔で寂しそう。蓮太の目はすっごく遠くを捉えてるの。だからね、私に何も言わないまま、いつかどっかに行っちゃうんじゃないかなって。」

蓮太と関わり始めて、いわゆる「恋愛」のような感情に心が踊る一方で、いつか私の目の前から消えちゃうんじゃないかという不安も抱えていた。
初めて今吐き出せて、少し安堵したのか私の目の中に小さな湖ができた。
梨子は何も言わず、ただ私の背中をさすってくれる。
しばらくの沈黙の後、梨子が口を開いた。

「風花はこれからどうしたいの?」

私は・・・どうしたいんだろうか
いや、本当はわかってる。
でも、もしも私の勘が当たってしまったら・・・

「とりあえずさ、今の梨子の気持ちを伝えた方がいいと思うよ。万が一さ、風花の考えている通りになったとしてもさ、想いを伝えないままだと後悔すると思う。だから、伝えてみなよ。もし上手くいかなかったらまた話聞くからさ」
「うん、ありがとう、私頑張ってみる」

世界でたぶん1番優しいんじゃないかと思われる
梨子にまたねを言い、私はお店を出て冷たい風が吹く暗闇に溶け込んでいった。


梨子と会った数日後、蓮太から「話したいことあるから夜に近くの公園に来て欲しい」というLINEがきた。
もう今月は既に1度会っていて、こうやって急なお呼ばれはなかったので、驚いた。
ちょうど梨子に背中を押されたばかりだし、「あなたのことが好きです」もう少し言えそうなら、「ずっと一緒にいたい」と言おうと心に決め、「うん、分かった。楽しみにしてるね」と蓮太に返信した。



夜7時。
公園まで行くと、もう既に蓮太は来ていた。

「やっほー、会えて嬉しいよ」

私は、ベンチでホットコーヒーを2つ持ちながら手を振る蓮太の隣にちょこんと座った。
いつもなら、会ってすぐに会話が弾むのだが、今日の蓮太はなかなか口を開かない。

話って何だろう
わざわざ呼び出したいくらいの話って何だろう

9割の不安と1割の希望を持ちながら蓮太から
もらったホットコーヒーを口に近づける。
私たちが飲む時の「ゴクッ」という音と枯葉が風に舞うガザガサ音が私たちの沈黙を埋めた。

「俺、ちょっと遠くに行ってくることにした」

急だった。
体中に電流が走ったかのような感覚に襲われる。
普段蓮太に会う時のドクドクとは全然違う心臓の
鼓動が体内に響く。
蓮太の薄めの唇から絞り出された言葉は私が
1番恐れていたもの。
その時が来てしまったのだ。

「遠くってどこなの・・・?」

動揺を隠せず、声を震わせてしまう私の手を
蓮太は大きな手で包んだ。

「どこなのかはまだ決まってないんだ」
「決まってないなら、行かなくてもいいじゃん。
遠くに行ったら隣にいられなくなっちゃうよ」

私の声が蓮太の心にはもう届いていない。
私の声は時々吹いている風に飛ばされてしまっているようだ。
いつもは私の話を「うんうん」と聞いてくれるのに
今の蓮太の目や心は、私を全く捉えていない。
どこか分からない、遠くのどこかをただ見つめている。
蓮太はふぅと一息つき、ぽつりぽつりと語り出した。

「俺、ずっと遠くに行きたかったんだ。今は離れて暮らしてるけど、小さい頃から両親の仲が悪くて、喧嘩ばかり。しまいには、それぞれの悪口を聞かされ続けてきた。俺は親の話はたくさん聞いてきたのに、俺の話は興味ないんだ。学校のこととか友だちのこととか食べたいものとか今まで聞かれたことない。俺の居場所はここにはないんだって思ったよ」

いつもは明るい蓮太だったけれど、たまに
寂しそうに遠くを見つめていたのはこういう
事情があったのか。

「親の喧嘩を今日はどうやって止めようか、どうやったら仲良くしてくれるか。そればかり考えなきゃいけなかった。だから俺自身がどうしたいかとかどうやって生きたいかとか今まで考えたことない。そうしてるうちに、俺生き続ける必要あるかなって。生き方なんて分からないし、もういいかなって思うようになった。」

私の手を包む大きな手は震えていた。
今度は蓮太の片手を私の両手で覆う。

「もう生きるのやめようかなって思ったけど、風花と会った瞬間から、今まで感じたことないあたたかいものが心の奥に宿り始めたんだよね。高校の時、ずっと風花と話したいと思ってて、卒業式たまたま屋上行ったら風花いたから、これはチャンスだと思って思って風花のとこに行ったんだよ。チョココロネの話も聞いてくれてありがとう。それから風花と過ごす時間が楽しくて、今日だけは生きててよかったって日が時間が過ぎるにつれて増えていった。でも・・・」

「でも?」

私は蓮太の続きをゆっくり待つ。

「肝心な俺の生き方が分からないんだ。実家にいた時みたいな、カゴの中の鳥状態にはなりたくないのに生き方の正解を教えて欲しくなる。そんなものないのにね。」

隣からも私と同じような心臓の音が聞こえる。
一生懸命話してくれている蓮太の言葉にさらに
耳を傾ける。

「生き方は自分で模索するしかないんだよね。だからどこか遠くに行って生き方を見つけたいって思った。生きる方法を確立して、ちゃんと呼吸ができるようになったらまたここに帰ってくる。その時は風花とまた・・・」
「私、蓮太のことが好きだよ!ずっと好きだった。
自分でもびっくりするけど、蓮太のことがずっと頭から離れない。だからさ、私も蓮太の生き方を見つける旅に連れてってよ」

蓮太の言葉を遮るように、私の感情を蓮太にぶつけてしまった。
蓮太の手の上にある私の手をベンチに戻し、蓮太は首を横に振った。

「俺も風花のこと好きだよ。なんなら今すぐ付き合ってくださいって言いたいくらい、大切にしたい存在。でもまだ俺の準備が終わってないんだ。今のままだともしかしたら風花を傷つけてしまうこともあるかもしれなくて、それは嫌なんだ。もし風花と旅に出たら、今度は風花のことばかり考えてしまうと思う。せっかくの自分探しの旅なのに、それだと意味ないからさ。だから俺のわがままだということはほんとに分かってるけど、旅が終わって自分の生き方を見つけられたら風花のとこに戻ってくる。自分の生き方を発見出来た分、今度は2人での生き方を考えられる余裕がうまれると思う。だから・・・俺の事待っててほしい」

蓮太の言葉はしっかり耳に入ったし、意味も分かる。
でも・・・

好き同士なのに今すぐ一緒になれないなんて
悲しすぎるよ
それに、待つってどれくらいなの?
待ってる間に心が折れたらどうなるの?

そんな私の心の声が聞こえたかのように、
蓮太は私の頭を撫でた。

「ごめんな。しばらく風花には寂しい思いをさせると思う。でも俺は本気で風花と生きていきたい。だから俺のことをゆっくり待っててほしい。絶対風花の元に帰ってくるから。俺は風花に出会うためだけ生まれてきたんだと思う。その使命を果たすためにも時間をください」

蓮太の瞳に映る私の姿は、情けないものだった。
それに対して、蓮太の眼差しは真剣そのものだ。
正直まだ蓮太の言うことを受け止め切れるか分からない。
でも蓮太の言葉や表情から、私のことを本気で
想ってくれていることが伝わってくる。
蓮太も私と同じ、この寂しさを我慢しているのだろうか、唇を噛み締めている。
今まで蓮太は、私の喜怒哀楽をたくさん受け止めてくれた。
今度は私の番だ。
覚悟を決めなきゃ。

「ずっと待ってるね。待ってるか・・・。」

私の言葉を待たずに蓮太は私を抱き寄せた。
冷えきった体にあたたかさが巡っていく。
この温もりをしばらく感じられないのかと
思うと、やっぱり待てないと言いそうに
なってしまうけれど、もう決めたのだ。
蓮太の帰りを待つよ。

「もう遅いし、そろそろ帰ろっか」

蓮太は空になった2つの缶をひょいと持ち、ゴミ箱のある方に向かった。
私も着いていく。

「じゃあ、またね。」
「うん、またね。」

分かれ道で私たちはバイバイではなくまたねと言い合った。
1人での帰り道、寂しさが込み上げてきそうになったけど、星が作り出す大きな三角形や その他の星たちが満遍なく広がる夜空を見ると、私たちをあたたかく見守ってくれている気がして少しだけ勇気がもらえた。




蓮太との日々が走馬灯のように思い出された後、冬の大三角を作る残りの星はプロキオン、シリウスだということを思い出した。
蓮太が旅に出てから数年経っているが、まだ戻ってきていない。
私から蓮太に連絡するのもいいけど、蓮太からの
連絡を、そして帰りを待ち続けている。

はやく蓮太と再会できますように

そんな僅かな、でも絶対に叶えたい願いを星に託してみる。
ピロロンと通知が鳴り、1ミリの期待を胸に宿しながらスマホを手に取ると、「ご飯ちゃんと食べてる?」という母からのメッセージが目に入る。
母のLINEに返信し終えた後、お昼に食べるのを忘れていたチョココロネの袋を開け始めた。

🤍Fin🤍



ドルチェ🍨:「星夜一縷」にまつわる雑談


皆さんは夜空を見上げて、星に願いを託したことはありますか??
私はあります!笑
1つ例を挙げます。

学生時代、テスト勉強に励むものの、出題範囲が広すぎて、時間が足りなくなることが少なくありませんでした、、。
そのため、全ての範囲をじっくり勉強することはできず、後半部分は教科書をめくるだけ、基本問題を解くだけになってしまうことが多々ありました。
いざテストを受けると、「ここは出ないだろう😉」
と勝手に自分の中で決めつけて、勉強の時にさらっと流してしまった問題が出る、、なんてことが多かったのが苦い思い出です😖
テストを受けた夜、
あの問題の配点が高くありませんように!!
あの先生なら部分点くれるよね…?くださいお願いします!!
きらきら輝くお星様たちに、思わず願ってしまっていました🥹☆
頭の中では、勉強方法を見直した方がいいことは分かっていたのですが、今にも消えそうな願いを星に託していたこともあったなと、懐かしく思いながら執筆しています。

さて、ドルチェまで召し上がっていただき、本当にありがとうございます!
お口に合いましたでしょうか?
また次回のご来店もお待ちしております‎👨‍🍳
皆さまの今日1日が、少しでも過ごしやすい日々になりますように(ㅅ´ ˘ `)





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