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白の国

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【小説】 見果てぬ夢より 

【小説】 見果てぬ夢より 

 焦りが小さな虫の大群ように常に駆け巡っている。それは座ったままの自分を立ち上がらせようとしたり、仕事をしている自分には囁きかける。

そんな事をしている場合か、と。

 日当たりの良いマンションの一室に、夕方にも関わらず一際暖かい陽光が満ちている。熱を持つ光は、リビングに並んだ作業台に向かう佐々埼圭一を容赦なく堕落へと誘っていた。机に広がる紙や鉛筆から避けるように置かれたペットボトルの水を掴み煽

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